概説

本項はアニメを批評する個人趣味ブログです。

深夜アニメ・萌えアニメを中心に、独自の視点で簡潔かつ濃厚なレビューをお届けします。
サイトタイトルは「Anime + Commentary」になります。

映画や文学に比べ、公的な批評活動があまり機能していないアニメ業界に対する警鐘という大義があったりなかったりします。
ごめんなさい。たぶん、ないです。

星1個~10個の十段階評価です。
平均点は星7個になります。
完全なる独断と偏見です。脚本重視(ストーリー・シナリオ・設定等)です。
ただし、明らかに業界に悪影響を与えていると思われる作品(いわゆるクソアニメ)に関しては、マイナスポイントを付けることもございます。

その他、
・ネタバレ上等です。
・敬称略です。
・作品タイトル等の固有名詞はwikipedia準拠です。
・2001年以降に公開された男性向けアニメが対象です。
・現在、放送中の作品は取り扱いません。(再放送は除く)
・評価はあくまで暫定であり、後に変動することがございます。
『アウトブレイク・カンパニー』は敵です。
・アフィです。
・ステマじゃないです。
・飽きたら止めます。
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by animentary  at 10:59 |  お知らせ |   |   |  page top ↑

『ハイスクール・フリート』

意味不明。

公式サイト
ハイスクール・フリート - Wikipedia
ハイスクール・フリートとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2016年。オリジナルテレビアニメ作品。全十二話。監督は信田ユウ。アニメーション制作はプロダクションアイムズ。架空の日本を舞台に女性だけの海上保安部隊隊員を目指して奮闘する女子高生達の活躍を描いたSFアクション。放送開始まで詳しい内容を伏せるというプロモーション手法を取ったため、日常系アニメ風の内容を想像していた視聴者から批判を浴びた。

・設定


 本作の特徴を簡単に解説すると、『ガールズ&パンツァー』に影響を受けた制作者が、軍艦+女子高生+日常系アニメという座組を作ってみたものの、作り手にそのノウハウもそれを補うセンスもなかったため、ただ単に複数の要素を一つに集めただけの訳の分からない物が出来上がってしまったという作品である。
 舞台は架空の日本。メタンハイドレードの過剰採掘により平野部が沈没したことで、人々は巨大なフロート艦を建造し、そこに居住していた。結果的に海洋大国となった日本は、かつての軍艦の多くを民間に払い下げし、それを戦争に使わないようにとの希望を込めて、女性が艦長を務めるという風習が生まれた。そのことが、後に女性だけの海上保安部隊「ブルーマーメイド」を設立する要因となったのである。時は流れ、ブルーマーメイドを養成する横須賀女子海洋学校に一人の女の子が入学する。彼女の名は岬明乃。幼い頃からブルーマーメイドになることを夢見ていた少女である。と、これだけ見ると、荒唐無稽ではあるが『ガールズ&パンツァー』の「戦車道」に比べたらましといったところで、まだ楽しめそうな気配がする。だが、自分で作った設定を制作者自ら全力で破壊するのが本作のスタイル。最終的に我々の想像を遥かに超えた場所に着地する。
 横須賀女子海洋学校に入学した主人公達は、なぜかいきなり艦長や機関長といった役職に振り分けられる。普通は共通コースから専門コースに分かれた後、厳しい訓練と実習を経て選抜されないだろうか。一体、何を基準に彼らは決めているのだ。そして、入学式当日、これという授業風景もないまま、なぜかいきなり海洋実習が始まる。その船はなぜか昔の軍艦で、なぜか指導教官が誰も乗っておらず、なぜか完全武装されている。なのに、なぜか操艦は完璧で、なぜか戦闘すら卒なくこなす。どうやら、中学時代にある程度の教育は受けていたようだが、具体的な描写はどこにもないし、そもそもそういう問題ではない。何なのだ、これは。初期設定と実際の光景が何一つ噛み合っていないではないか。女性艦長は平和の象徴と言いながら、思いっ切り武力解決する気満々なのはどういった摂理なのか。やっつけ仕事にも程がある。こんな物を商業作品として堂々と世に出すという神経が全く理解できない。狂っているのかこの世界は。

・日常系アニメ


 放送前、そして、第一話の段階での本作のタイトルは『はいふり』であった。如何にも『けいおん!』のような日常系アニメを彷彿とさせる柔らかい題名に、皆が本作こそ第二の『ガールズ&パンツァー』になる作品だと確信した。だが、その期待はすぐさま裏切られることになる。いざ蓋を開けてみると、その内容は実習中の主人公達の乗る船に突然、教員船が発砲し、防衛のためにそれに反撃したところ、なぜか反乱とみなされて追っ手から逃げ回るというハードなSFアクションであった。そして、気が付いたら、タイトルも『ハイスクール・フリート』に変わっていた。これはもう完全に意図的な「ジャンル詐欺」である。わざと内容と異なる情報を事前に流し、炎上商法的に注目を集めようとしたわけである。その道義的な是非に関しては問わないが、感心できることではない。
 だが、安心して欲しい。本作にはちゃんと皆が待望した日常系アニメ的なテイストが残されている。複数の可愛らしい女の子が狭い空間に閉じ籠もって、悩みなど何もないようにキャッキャウフフと楽しい時間を過ごす。視聴者はその幸せな光景を遠くから微笑ましく見守る。ただ、本作の問題は、それを「非常事態」の中でやることである。敵艦艇に捕捉され、殺傷力のある実弾がバンバンと飛んできて、明らかに生命の危機に瀕しているのに、呑気に悪ふざけをする。しかも、コミカルなBGMをバックにして(本作は全体的にBGMのチョイスがおかしい)。意味が分からない。これが他のアニメのように、精神性が未熟なせいで状況判断ができていないというなら話は分かる。だが、本作は脚本的にも演出的にも危機的な状況であることは、全員が十分に把握しているのである。なのに、ふざける。意味が分からない。彼女達は何かやばいクスリでもキメているのではないだろうか。そうでなければ、どのような状況にも決して心が揺るがない歴戦の兵士ということになってしまう。
 本ブログでは度々「ミリタリーと日常系アニメの噛み合わせは悪い」と主張してきた。本作は図らずもそれを証明する格好の教材になっている。正反対の物を何の調整もせず一つにまとめると、世にもおぞましい異常な物が出来上がるのは自明のこと。ギリシア神話では、それを「キマイラ」の怪物と呼んだが、なるほど本作はキマイラアニメと呼ぶに相応しい。

・ミリタリー


 さて、そんな命懸けのオチャラケ逃避行も、第四話というかなり早い段階で人の脳を狂わせる未知のウィルスが原因と分かり、無事に疑いが晴れて原隊復帰する。その後、主人公達の乗る船は、同じようにウィルス感染して反乱した実習船「武蔵」の捜索を命じられる。その船には主人公の親友が艦長として乗っていたのだ……という展開にするなら、主人公達が反乱と間違われて逃げ回るという一連のシークエンスは全く不要ではないだろうか。最初から反乱した武蔵を追えば済む話だ。敵=物語の目標をコロコロ変更して話の道筋が分からなくなるのは、駄作の特徴の一つである。
 さらに、ここで浮上した新たな問題は、本作戦の指揮系統が無茶苦茶なことだ。なぜか全体の指揮を横須賀女子海洋学校の校長が執っているのである。百歩譲って校長はただの名誉職であり、本職はブルーマーメイドの総司令官だったとしても、未知なるウィルスの感染拡大という国全体を巻き込む大事件なのだから、もっと上の方が指揮を執るはずだ。ブルーマーメイドは国家機関の一組織に過ぎず、しかも、主要任務は海難救助であることも劇中でも明言されている。明らかに分不相応である。また、なぜ主人公達の船が武蔵の捜索に当たるのかもよく分からない。あらゆる理由が「たまたま彼女達が一番近くにいるから」で済まされているが、彼女達はただの学生であり、今回が初の海洋実習なのだ。幾ら人手不足だとしても、役に立つ立たない以前に間違いなく作戦の足を引っ張るだろう。ブルーマーメイドにプロとしての誇りはないのか。もし、これで学生に死者が出たら、校長はどう責任を取るつもりなのか。そもそも、実習船が武装していなければ、これほどの大事になることもなかったのである。その決定をしたのが校長だとしたら、彼女は無能というレベルではない。
 結局、どういうことかというと、主人公を活躍させるためだけにわざと周囲の知能レベルを下げているのである。探偵小説で主人公を際立たせるために警察を無能にするのと同じやり方だ。作り手にとっては便利な手法だが、やればやるほど作品としての質が低下するのは免れない。特に、本作のように組織としての軍隊をモチーフにしていると、リアリティは地に落ちる。それではどんなに緻密な艦隊戦を描こうとも意味がない。

・商業主義


 そんなこんなで第十一話、ようやく武蔵との直接対決が開始される。それまでの長い間、主人公達は何をやっていたかと言うと、他の船を救助したり、呑気に水遊びやお祭りで楽しんだりしていた。武蔵には主人公の親友が乗り合わせており、今なお生死不明であるにも関わらずだ。平時で上からの命令を待っている状態ならまだしも、積極的に助けに行こうとしている状況でこの心理は理解できない。困っている人々を見過ごせないと言うのなら、最初から海難救助のアニメにしておけという話である。(ちなみに、親友は武蔵の艦橋に籠城していたという設定だが、その間の食事やトイレや操艦はどうしていたのかという疑問に誰も答えてくれない)
 ともかく、この第十一話を境に本作は急激に「普通のアニメ」になる。巨大な敵を前にして怖気づく主人公。しかし、仲間に励まされて勇気を取り戻し、皆で力を合わせて困難に立ち向かう。そして、荘厳なBGMを背景に熱いシリアスバトルが交わされる。人によっては感動的なクライマックスシーンに感じるだろう。だが、思い出して欲しい。彼女達は命の危険に脅かされているにも関わらず、陽気に悪ふざけができるメンタリティの持ち主だということを。そんな人間が何をやろうと空々しいだけだ。長期連載シリーズの途中で路線変更したなら分かるが、たった十二話のアニメでこれは通らない。ちゃんとラストから逆算した全体の統括ができないような人間に重要な役割を与えてはならない。
 最後に要点をまとめよう。本作の問題点は大きく分けて二つある。一つ目は「物語が入学式から始まる」こと、二つ目は「第一話に大きな事件が起こる」ことだ。セオリー通り、ある程度訓練を受けたところから開始し、最初の方はのんびりと楽しい日常を過ごさせていれば、何も問題はなかった。では、なぜこのようなことになっているのか。物語が入学式から始まるのは、それが日常系アニメのテンプレートだからだ。第一話に大きな事件が起こるのは、それがジャンル詐欺のテンプレートだからだ。要するに、本作は極めて商業主義的な判断で作られた作品で、その判断が作品を無茶苦茶にしているのである。古今東西、数え切れないほどの娯楽作品が世の中に存在するが、ここまで酷い例はあまり類を見ない。しいて言うなら、一時期流行したテレビドラマを安易に映画化する低質な作品群に匹敵する。映画業界はそれで大変なことになったが、アニメ業界もそうならないよう祈るしかない。

・総論


 映像ソフトの第一巻の売り上げは約九千……。

星:★★★★★★★★★★(-10個)
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by animentary  at 10:40 |  ★★★★★★★★★★ |   |   |  page top ↑
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