概説

本項はアニメを批評する個人趣味ブログです。

深夜アニメ・萌えアニメを中心に、独自の視点で簡潔かつ濃厚なレビューをお届けします。
サイトタイトルは「Anime + Commentary」になります。

映画や文学に比べ、公的な批評活動があまり機能していないアニメ業界に対する警鐘という大義があったりなかったりします。
ごめんなさい。たぶん、ないです。

星1個~10個の十段階評価です。
平均点は星7個になります。
完全なる独断と偏見です。脚本重視(ストーリー・シナリオ・設定等)です。
ただし、明らかに業界に悪影響を与えていると思われる作品(いわゆるクソアニメ)に関しては、マイナスポイントを付けることもございます。

その他、
・ネタバレ上等です。
・敬称略です。
・作品タイトル等の固有名詞はwikipedia準拠です。
・2001年以降に公開された男性向けアニメが対象です。
・現在、放送中の作品は取り扱いません。(再放送は除く)
・評価はあくまで暫定であり、後に変動することがございます。
『アウトブレイク・カンパニー』は敵です。
・アフィです。
・ステマじゃないです。
・飽きたら止めます。
・本ブログへのご意見ご感想等がございましたら、こちらのコメント欄を掲示板代わりにお使いになるか、各ページのの方からお書き込み下さいませ。
全記事一覧はこちら。
評価別一覧はこちら。
年代別一覧はこちら。    
スポンサーサイト
関連記事
テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 10:27 |  お知らせ |   |   |  page top ↑

『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』

ベストバランス。

公式サイト
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? - Wikipedia
ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2016年春聴猫芝居著のライトノベル『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は柳伸亮。アニメーション制作はproject No.9。ネトゲにハマっている高校生達の日常と青春を描いた学園ドラマ。2000年代前半のディープなネットネタ(ブロントさんやS県月宮など)が満載なので、それらを知らないとちょっとつらい。

・第一話


 本作の内容は、『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』のタイトルに極めて忠実である。主人公はネトゲ(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)が好きな男子高校生。自分の趣味を大っぴらにする「オープンオタ」でありながら、ネトゲのことは周囲に内緒にしていた。彼は以前、ネトゲ内の女性キャラクターに恋をして結婚を申し込んだところ、相手がネカマ(女性の振りをした男性)だと知り、激しいショックを受けた。その結果、彼は「ゲームとリアルは別物」だと悟り、「可愛ければいいじゃないか」という真理に辿り着く。そして、同じギルドに所属する女性キャラクターの求愛を受けて、ゲーム内で結婚をする。その後、ギルドでオフ会をすることになり、てっきり男性だと思っていた「嫁」を含む三人のギルドメンバーは全員、同じ学校の女子高生だったことを知る、というのが第一話である。悪く言えば捻りのない平凡なアイデアだが、ネトゲのあるあるネタに都合の良い妄想を上手く組み合わせることでエンターテインメント性を高めた作品である。

 本作の最も優れている点、そして、他のライトノベル原作アニメと最も異なる点は、キャラクターがちゃんと現実世界に生きていることである。彼らは、オープンオタを自認する主人公ですら、ネトゲをプレイしていることをクラスメイトに隠している。なぜなら、ネトゲと学校はそれぞれ別個のコミュニティだからだ。人は平穏無事に毎日を生き延びるために、所属するコミュニティに合わせてペルソナ(仮面)を使い分けるということを無意識の内に行っている。大半の人は家と学校で性格が異なり、高校時代の友人と中学時代の友人とでは接し方が微妙に違う。それは自分を守るために身に着けた生活の知恵。ところが、質の悪い萌えアニメでは、こういったことが往々にして考慮されない。どこに行っても主人公は同じ性格で、コミュ障だったはずなのに平気でハーレムを形成する。最後には、描き分けることすら面倒になって安全な部活に閉じこもる。一方、本作のキャラクター達は、現実とゲームの狭間でペルソナを演じ分け、その微妙なギャップの調整に苦労している。ネトゲをテーマにしている以上、その対となる現実生活をしっかりと描くという課題から逃げない本作の姿勢には好感が持てる。

 もっとも、現実世界に悪人が一人も出てこないなど、萌えアニメなので全体的に表現が温い。そもそも、本作のストーリーはヒロインが美少女でなければ成立しない。萌えアニメの鎖に縛られなければ、ヒロインは美少女じゃない方が面白いだろうし、ネカマを数人出した方が話が膨らんだだろう。そういう意味では、このジャンルの限界を感じる一作である。

・ヒロイン


 第一話でタイトルに関連するネタを全て使い切っているので、第二話からは何をやるのかと思っていると、すぐに次のトラブルの種が舞い込んでくる。それは、ネトゲ嫁ことヒロインに関することである。彼女は、ゲーム内の夫である主人公に対して、リアルでも同様に接しようとする。つまり、リアルでは初対面の赤の他人なのに、まるで結婚した本当の夫婦のように振る舞おうとするのである。学校内でも主人公をキャラクター名で呼び、ベタベタとくっ付いてくるヒロイン。その奇行に触れた主人公達は、「ゲームと現実の区別が付いてない」と彼女を評する。もちろん、これは物語的に分かり易く表現した物であって、実際はもっと複雑だ。ヒロインは内気で友達が一人もおらず、学校もサボりがち。何をやってもドジばかりで、人並みにできることが何もない。そんな惨めな現実の反動からか、彼女はリア充の人間を人一倍憎み、ネトゲに逃避している。その結果、彼女の中でネトゲという虚構空間の価値が飛躍的に上昇し、現実と同価値、もしくはそれ以上になっている。すると、本来なら複数あるはずのペルソナを、彼女は一つしか持っていないことになり、ゲームとリアルの区別が付かなくなっているのである。ペルソナは外界から心を守る一種の防護壁であるため、今の彼女は無防備で非常に危険な状態だ。早急に何らかの対処をしなければならない。

 その後、「ゲームとリアルは別物」が信条の主人公は、現実世界のヒロインの可愛らしさに惚れて、「恋人になって欲しい」と告白する。だが、ヒロインはそれを拒絶する。なぜなら、ゲーム内ですでに結婚しているのに、リアルで改めて恋人になるのはおかしなことだからだ。その論理が理解できないギルドメンバー達に、彼女はこう言って説明する。例えば、現実世界の夫婦がネトゲ内で別の恋人を作ったら、それは不倫になるだろう。逆に、ネトゲ世界の夫婦が現実で恋人を作ったら、それは不倫になるのではないかと。一見、筋が通っているように見えるこの考えに価値観の混乱を覚えたメンバー達は、恐怖に駆られてヒロインから逃げ出す。

 ……とまぁ、何となく大袈裟に書いたが、正直なところ、この辺りの描写はかなり曖昧で理解が難しく、本作の一番の欠点になっている。何より「ゲームと現実の区別が付いてない」ヒロインと「ゲームとリアルは別物」の主人公の対比があまり上手く行っていない。どうも、本作はヒロインの元ネタである「S県月宮」を論理的に解釈しようとして失敗した感がある。もう少し設定を練り込むか、もしくは妄想は妄想で処理するかした方が良かっただろう。

・現実と仮想


 それでは、主人公達はそんなヒロインに対して何をしたのか。彼らは「現代通信電子遊戯部(ネトゲ部)」なるクラブを作り、学内でネトゲをプレイして、現実とゲームが別物であることを彼女に教えようとした。「それ、何の意味もねーだろ」と大半の視聴者が思うかもしれないが、本作はそこら辺の量産型萌えアニメではない。通常、この手の作品がやりがちなのは、現実と仮想、どちらか一方を悪に仕立て上げて、もう一方の正義を高らかに謳い上げるというパターンだ。それに対し、本作が最初から最後まで一貫して主張している思想は、「現実にもネトゲにも良い面と悪い面がある。人と人が関わるコミュニティという点において、両者は全く同じ。だから、両方を同時に、同等に扱う」である。この辺りのバランス感覚が、本作は絶妙である。実際、現実とゲームを分け隔てなく同じ分量で描いている。むしろ、このバランスが少しでも崩れたら、本作はどうしようもないクソアニメと化していただろう。

 その最も分かり易い例が、第十話~第十二話のラストエピソードである。秋、主人公達の通う高校は文化祭シーズンを迎える。顧問教師から文化祭の出し物を求められたネトゲ部は、ゲーム内のイベントである「攻城戦」に勝利し、そのスクリーンショットを展示することを部の活動として決定する。一方、ヒロインはある手違いから、クラスの模擬店で重大な役割を担わされてしまう。今まで努力することを嫌い、気に食わないことから逃げ続けてきたヒロイン。今回もいつも通り逃げ出そうとしたが、ネトゲの戦いを通して皆で協力して勝利を掴むことの喜びを知り、意識を改める。そして、クラスの模擬店経営にも参加し、確かな成長の跡を見せて、物語は終幕する。

 さて、このエピソードだが、ネトゲ部側だけを取り出して見ると、非常に滑稽と言うか、何とも馬鹿馬鹿しい。文化祭の展示物にネトゲの実績を提出する部活なんて聞いたことがないし、実際にやれば学校中の笑い者になるだろう。そのため、必死になって攻城戦に取り組む部員達にも、どことなく哀愁が漂っている。だが、本作の上手いところは、仮想世界と同時に現実世界の課題も描くことで、両方の価値を高めている点である。つまり、文化祭の模擬店経営というヒロインにとって極めて高い現実のハードルが背景にあることで、くだらないネトゲ部の活動が大きな意味を持つのである。世に多数溢れている部活動アニメで、現実と仮想をこういう形で使っているアニメを自分は見たことがない(しいて挙げるなら、『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ライブアライブ」ぐらいか)。それゆえ、本作がただの三流萌えアニメの枠に留まらない魅力を持っていることを理解して頂けるだろう。

・ネトゲ


 最後に、ネトゲその物について軽く触れて終わりにしよう。本作の劇中ゲームである「レジェンダリー・エイジ」の元になったのは、2002年にサービス開始した『ラグナロクオンライン』ではないかと言われている。そのゲーム、加え同時期のネトゲ『エバークエスト』『ウルティマオンライン』『ファイナルファンタジーXI』『リネージュ』などに共通する特徴が、いわゆる「Time to Win」と「Pay to Win」である。つまり、時間と金をかければかけるほどキャラクターが強くなるのが、当時のネトゲの不文律だった。その結果、生活のバランスを崩し、仕事や学校を辞めてまでゲームにのめり込む「ネトゲ廃人」が大量に発生し、大きな社会問題になった。また、対人戦に端を発したユーザー間のトラブルも日常茶飯事だった。そういったある種の中毒性と反社会性を併せ持った遊びを、萌えアニメの主人公である健全な高校生達にやらせるのは、はたして正しいことなのかという疑問は必ず生じるだろう。劇中でも、大金持ちのギルドメンバーがリアルマネーの力を使って戦いに勝利するというシーンが何度も登場する(一応、金よりも友情が大事というオチは付くが)。戦車部や麻雀部が平気で闊歩している萌えアニメ業界で何を言っているのだとなりそうだが、人によっては不快感を覚えるのは事実だ。ストーリー本編とは無関係なので、本項では評価の対象外とするが、あまり褒められた物ではないというのは理解して欲しい。

 もっとも、本作の原作が発表された2013年頃には、すでに『World of Warcraft』方式と呼ばれるクエストクリア型・エンドコンテンツ重視のネトゲがメインストリームになり、「Time to Win」「Pay to Win」は形骸化しつつあった。さらに、このアニメ版が放送された2016年には、最早ネトゲ自体が下火になり、スマホゲームに取って代わられている。では、この御時世にわざわざ十年以上前の古臭いネトゲを舞台にしたアニメを放送する意義はどこにあるのだろうか? 正直、あまりない。ところが、本作はゲーム本体に留まらず、パロディネタを含めた当時のネトゲ文化までも忠実に再現しており、ノスタルジックと言うにはかなり悪趣味である。上記の反社会性を鑑みるなら、作品の内容をもっと2016年風にアレンジすべきだったのではないか。テレビアニメは、何も原作をそのまま映像化することだけが使命ではない。悪い部分は手直しし、時代に合った形に作り直すことも、大事な役割だと考える。

・総論


 見た目に反して、意外な底の深さを持っている良作。ただし、万人受けは絶対にしないので、注意が必要。

星:☆☆☆☆☆(5個)
関連記事
テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 10:13 |  ☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
twitter
検索フォーム
最新記事

全記事一覧
評価別一覧
年代別一覧
掲示板
掲示板2
カテゴリ
リンク
カウンター
RSSリンクの表示



にほんブログ村
PR1
PR2