『WORKING'!!』

惜しい'!!

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・はじめに


 2011年。テレビアニメ『WORKING!!』の続編作品。全十三話。監督は大槻敦史。アニメーション制作はA-1 Pictures。第二期は、タイトルにダッシュが入っていることに注目。ただし、読み方は第一期と同じく「ワーキング」らしい。でも、製作者名は「WORKING!!2」製作委員会。分かり難い続編タイトルナンバー1。

・第二期


 前作からそのまま継続である。変わったのは、監督が交代したことによる演出の違いと背景美術の質ぐらい。ストーリーに限れば、むしろリセットされている。「伊波まひるの成長物語を中心にしたラブコメ」というメインストーリーは一旦保留され、第一話から第一期序盤を髣髴させるようなドタバタ喜劇が続く。当然、その恩恵を一番受けているのは元メインヒロインの種島ぽぷらだ。第一期では、伊波まひるの台頭に弾き出される形で脇役の地位に甘んじていたが、第二期では再びメインに返り咲いている。もっとも、主人公達に子供っぽさをいじられて、喜んだり怒ったりするというだけのマスコットキャラ的な扱いだが。まぁ、本人が楽しそうだからいいか。
 その後、第六話のBパートという非常に中途半端な位置から再びストーリーが再開される。店長の舎弟を巡る騒動が一段落した後、山田葵の兄が妹を探すためにファミリーレストランに現われる。その際、伊波まひるに一目惚れしたことで、主人公を含めた三角関係が発生する。ただし、主人公はあくまで凶暴な飼い犬をしつける心持ちで伊波まひるに接しているため、彼女の気持ちにも自分の気持ちにも全く気付けない。それゆえ、無意識下での葛藤が発生し、彼はひどく情緒不安定になる。
 もっとも、そんな大変な状況もたったの一・二話で解消され、すぐに元の雰囲気に戻る。全般的に第二期は、第一期以上に四コマ漫画を順番に並べただけのまとまりのないストーリーが多い。しかも、そのほとんどがファミレス店内で完結するため、各回の固有差が極端に少ない。サブタイトルを聞かされて、内容を正確に思い出せる人がどれぐらいいるだろうか。続編作品を見るのはシリーズファンだけだと思うが、それでもマンネリ感を覚えるぐらいだから、新規視聴者にはあまりオススメできない作品である。

・コンプレックス


 男性恐怖症にばかり目を奪われがちだが、考えてみると本作の女性陣は全員、何らかの大きなコンプレックスを抱えている。種島ぽぷらは低身長。伊波まひるは男性恐怖症。轟八千代は社会不安。山田葵は家庭問題。白藤杏子(店長)は……何だ、過食症か? 事情をよく知らない人からは「変わり者の集まり」などと称されているが、事態はもっと深刻である。もし、ファミリーレストラン「ワグナリア」でなければ、「バイトにすら雇ってもらえないレベル」だ。これは興味深い設定ではないだろうか。ヒロインに重荷を背負わせて、それを主人公が解消するというギャルゲーにありがちな上から目線の物語構造を、心無い人は「レイプファンタジー」と呼称したが、本作はそういった単純な分類パターンでは止まらない作品になっている。
 例えば、フロアチーフの轟八千代を見てみよう。彼女は幼い頃から気が弱く、いじめられっ子だったため、常に日本刀を携帯して登校していた(設定的には「帯刀していたため、いじめられていた」となっているが)。ある日、スケバンだった白藤京子と知り合ったことで、人生が一変する。その後、白藤杏子がファミレスの雇われ店長になったことで、彼女を敬愛する轟八千代もそこでアルバイトを始める。劇中の台詞によると高校も満足に通えていなかったらしく、普通に考えて接客業ができるような性格ではない。日本刀に関することは、もちろんギャグアニメ的な誇張だが、彼女のネガティブな性格の象徴にもなっている。そんな彼女が社会生活に復帰できたのは、ワグナリアだからである。もっと言うと、この店が抱える「優しさ」のおかげである。外敵のいない居心地の良い場所という構造は世の○○部と同じだが、ここは社会と密接に係わり合う職場。そのため、厳しい現実の中の「あったらいいな」的なアジール(聖域)を本作は描いている。

・山田


 もう一人、例を出そう。第一期の後半から登場したキャラクターの山田葵だ。彼女は家出娘である。名字は偽名。年齢は自称十六歳だが、おそらく中学生。家出して行き場のなかった彼女は、店長の好意によりワグナリアの天井裏に居候し、住み込みアルバイトをすることになる。性格は自己中心的で空気が読めず、後先考えなく行動するトラブルメイカー。基本的に感情と行動が一致しないタイプなので、仕事は全くできない。にも係わらず、甘やかされること、褒められることを周囲に要求する。また、家出した原因は(アニメでは)不明だが、どうやら家庭の問題らしい。そういった背景があるせいか、彼女は家族という物に対する人並み外れた執着心があり、スタッフを捕まえて無理やり自分の家族にしようとする。
 さて、ここまで書いてきた設定に何か不自然な部分があるだろうか。いや、何もない。確かに変わり者だし、少々発達障害的な部分も目立つが、実に普通の中学生らしい複雑そうに見えて単純極まりない心理である。世の中に強い不満を抱きつつも、それが具体的に何を差すのかは分からず、自分は万能だと過信しているが、実際の能力は人並み以下。そんな本来の意味で言う「中二病」だ。かつて誰もが通ってきた道であり、できることなら二度と直面したくない物だが、それをワグナリアは真正面から受け入れるのである。それもただ慰めるのではなく、仕事を与えて一人の人間として扱う。こんなファミレスは世界広しと言えど、ここだけであろう。
 このように、いろいろと問題の多いオタク文化において、ほぼ唯一にして最大の長所が「弱者に対する優しさ」である。それも、世に跋扈する自称ヒューマンドラマのように上から目線で説教するのではなく、弱者の側に寄り添い、共に歩くという姿勢。それは、作り手も受け手も自分達が弱い者だと十分に自覚しているからこそできることである。オタクがメジャー化したことで最近は少なくなってきたが、本作にはそういった古き良き部分が色濃く残っている。なるほど、それこそが『WORKING!!』というタイトルに込められた意味なのであろう。

・最終回


 第二期の最終話のサブタイトルは『さよならぽぷら』である。そのタイトル通り、種島ぽぷらが受験のためにバイトをやめるかやめないか(結局は山田の早とちり)という話である。え、マジで? 本作のメインストーリーは「伊波まひるの成長物語を中心にしたラブコメ」だったはずだが、ここに来ての急な路線変更には度肝を抜かされる。元々、小さくて可愛い種島ぽぷら目当てでバイトを始めた主人公が、彼女がいなくなってもバイトはやめないと宣言することで、伊波まひるとの仲が少し接近するというラブコメ展開がないわけでもないのだが、全体的なストーリーの統括という意味では全く無価値である。もちろん、種島ぽぷらファンには最高の展開なのだろうが……。
 『WORKING!!』という作品には三つのストーリーがある。それは主人公と伊波まひるの恋物語、佐藤潤と轟八千代の恋物語、そして、山田葵の家出にまつわる物語だ。いずれも第二期では全くと言っていいほど進展しない。続編があること前提の構成だが、なかったら悲惨である。もっとも、仮に第三期や完結編が作られたとしても、その頃には「第二期はただの繋ぎ」と呼ばれることになるだろう。そう考えると、種島ぽぷらの屈託のない笑顔がすでに哀しい。

・総論


 面白いことは面白いのだが、ストーリー的には長編物語の途中経過でしかないため、評価のしようがない。もう少し、より良い構成方法があったと思うのだが。

星:☆☆☆☆☆(5個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 21:59 |  ☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑

『WORKING!!』

惜しい!!

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・はじめに


 2010年。高津カリノ著の四コマ漫画『WORKING!!』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は平池芳正。アニメーション制作はA-1 Pictures。北海道某所のファミリーレストランを舞台に、アルバイト店員達の大騒ぎな日常を描いた恋愛コメディー。OPムービーは『あずまんが大王 THE ANIMATION』と同じ演出家が手がけているため、作風がよく似ている。

・概要


 天下のアニプレックス製作。キャラクターも可愛いし、雰囲気も明るく楽しい。人気声優をずらりと揃え、男女区別なく楽しめる。何より、メディアのセールスも好調で第二期も制作された。と、冷静に考えると申し分ない結果を残しているにも係わらず、なぜか微妙な立ち位置にいる不思議なアニメである。覇権アニメというわけでもなく(同期に『Angel Beats!』と『けいおん!!』がいる)、良くも悪くもネット上で話題を振り撒いたということもなく、良いアニメだとは誰もが認めつつ、これをマイベストに挙げる者は少ない。そんな記録には残るが、記憶には残り難い「永遠の三番手」な作品である。
 理由は簡単だ。なぜなら、本作は萌えアニメのように見えて、萌えアニメじゃないからである。女性漫画家による四コマ漫画原作の日常系アニメと聞けば、『けいおん!』や『ひだまりスケッチ』のような百合系作品を想像するが、本作は普通に男性が主人公で男女の比率もあまり変わりない。登場人物は高校生が中心だが、舞台はファミリーレストランというバイト先の「職場」。安全な場所でグデグデとゆるい日常を過ごすのではなく、ちゃんとした内容と中身のあるラブコメ。そして、何より性的な要素が皆無で、水着回すらない。つまり、緩やかな見た目と違って、限りなく一般アニメに近い構造の作品だということだ(余談だが、自分はずっと女性向けアニメだと勘違いしていた)。残念ながら、今のアニメ業界で話題作に「選ばれる」のは、萌えオタクに媚を売った商業主義アニメだけなので、本作のように中途半端に万人向けを狙った作品は、内容の如何に係わりなく不当に地味な扱いを受ける物だ。良い物が流行るのではなく、流行った物が良い物なのがアニメ業界。もちろん、結果を残したのだから、何も気にすることなく突き進めばいいのだが、なかなかそうもいかないのが哀しいところである。

・キャラクター


 本作は、基本的にギャグアニメであるため、個性豊かなキャラクターが数多く揃っている。しかも、そこら辺の三流アニメと本作との最大の違いは、テンプレ的な個性を適当に詰め込んだのではなく、ちゃんと各々の役割が繋がっていることである。
 主人公の小鳥遊宗太は家庭的な働き者で、ギャグアニメの主役にしては珍しいぐらいの常識人。だが、小さくて可愛い物が好きという特殊な性癖を持っており、そのため、メインヒロインの種島ぽぷらは、小学生にしか見えないロリ巨乳な一つ上の先輩である。そこに、食べてばかりで働かない元ヤンの店長、彼女のことが大好きな天然ボケの轟八千代、見た目は悪人だが実は善人&見た目は善人だが実は悪人の男性調理スタッフコンビ、中二病全開の爆弾家出娘の山田、そして、極度の男性恐怖症で男性が近付くと思わず殴ってしまう伊波まひる等が加わる。このように、それぞれの性格が密接にリンクしていることで、集団としての一体感が増し、キャラクターの何気ない会話を聞いているだけでリアルな臨場感を味わえる。
 さらに特筆すべきは、彼らがそれらの性格を持つに至った理由を回想シーンで明記していることである。具体的に言うと、主人公が小さい物好きになったのは、姉妹が皆、長身で扱い難い面々だから。伊波まひるが男性恐怖症になったのは、父親の教育が歪んでいたから。轟八千代が帯刀しているのは、小さい頃いじめられっ子だったから。キャラクターの性格が「設定」でしかない昨今のアニメで、こういった人格形成の背景をしっかりと描いているのは珍しい。
 ただ、これらの個性的なメンバーも、中の一人である伊波まひるのキャラが濃過ぎるせいで、完全に彼女に食われてしまっているのが難点か。男性を見ると見境なく殴ってしまうという特徴は、ビジュアル的にも社会的にも問題があり過ぎる。つまり、彼女の深刻過ぎる悩みに比べたら、背が低いなどといった悩みは取るに足らないということだ。そのため、彼女は本作の象徴のような位置付けになっており、彼女のキャラクターを受け入れられるかどうかで評価が大きく分かれてしまうという欠点を抱えている。

・恋愛


 繰り返しになるが、本作は女性キャラクター中心の日常系萌えアニメではなく、複数の男女が登場する一般ギャグアニメである。それゆえ、年頃の男女が同一空間上にいることで当然発生するであろう「恋愛要素」が、ストーリーに付け加えられている。
 その中心になるのが、上記の伊波まひるである。男性恐怖症の彼女は、特に主人公に対して拒絶的な反応を示していた。しかし、生来の世話焼きである主人公は、そんな彼女の病気を治そうと奮闘する。彼の優しさに次第に惹かれて行くまひる。その感情は、第九話の父親を巡る騒動をきっかけに恋心へと変わる。はたして、彼女は無事に男性恐怖症を克服して、彼に告白できるだろうか……というのが、本作のメインストーリーである。ラブコメのお約束に従って、主人公は彼女の気持ちに全く気付かないため、非常にヤキモキする展開になっている。もっとも、すぐに暴力を振るってくる女性の気持ちに気付けという方が無茶なので、この状況には説得力がある。最終的に、彼女の男性恐怖症は少し改善される兆しを見せ始めたものの、主人公に想いを打ち明けられないまま「続編へ続く」という形で終わりを迎える。
 ちなみに、このストーリーで最も割りを食っているのが、メインヒロインであるはずの種島ぽぷらである。主人公と良い仲にならない(ペット的に可愛がられているが)というだけで、出番が大幅に削られたばかりか、メインの座も完全に伊波まひるに奪われつつある。その可愛らしい容姿ゆえに、販促ビジュアル等では彼女が中央に来ることが多いため、本編中での不遇を思うと涙なしでは見られない。嗚呼、その屈託のない笑顔がすでに哀しい。

・改善案


 このように、本作は非常によくできた作品である。何の中身もない日常系アニメとは比べ物にならない高い完成度を誇っているのだが、その一方で、ここを改善すればもっと良くなったのにという不満点が大量にあるのも事実だ。特に、同監督は『スケッチブック ~full color's~』という四コマ漫画原作でありながらコンセプトの統一感に秀でた良作を生み出しているのである。そのため、それと比べると実に「惜しい」作品に仕上がっている。
 まず、一番の問題点は、作品の方向性が分かり難いということである。第一話の時点では、ここからどう話が展開するかが全く読めず、「ファミレスを舞台にしたドタバタ喜劇?」程度しか分からない。本作のメインストーリーが「伊波まひるの成長物語を中心にしたラブコメ」であると分かるのは、物語も佳境に入った第九話以降である。遅い、遅過ぎる。それなら、彼女をメインヒロインにして第一話から本筋に絡めて行くべきだろうし、彼女の心理をもっと詳細に描く必要もあるだろう。四コマ漫画原作ゆえにストーリーを構築し難いのは分かるが、だからと言って、それは何の言い訳にもならない。
 続いての問題点はテーマの不明確さだ。タイトルは『WORKING!!』である。すると、作品テーマは「働くこと」になるかと思いきや、それはあまり劇中では重視されない。バイト店員は皆、淡々と仕事をこなしており、職業上のつらさや喜びなどをほとんど垣間見せない。そもそも、ファミリーレストランでなければならない必要性もあまり感じられない。もう少し、ファミレスバイトの専門的な知識やエピソードなどを脚本の節々に加えて行ければ良かったのだが。
 最後にビジュアル面である。本作のロゴマークは「warning」の警告表示を真似た物が使われており、そのビビットな印象から人気を博している。それなら、そのイメージを本編中でも用いれば良かったのだ。つまり、白・黒・黄色の三色をベースに赤を差し色として使って色彩イメージを統一させれば、もっと芸術性が高まっただろう。他にも棒立ち作画や低レベルなBGM、合っていないキャスティングなども含めて、全体的なアニメーションの質という点においては大いに不満が残る。

・総論


 一言で言うと、もう少しな作品。非常に丁寧に作られており、男女分け隔てなく楽しめる良作だが、結局のところは「ファミレスを舞台にしたラブコメ」でしかないため、独創性という点では大きく劣る。真の名作アニメになるためには、何か一つ、突き抜けた物が欲しかった。

星:☆☆☆☆☆☆(6個)
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by animentary  at 22:14 |  ☆☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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