『11eyes』

急転直下。

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11eyes -罪と罰と贖いの少女- - Wikipedia
11eyesとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2009年。Lass制作の十八禁美少女ゲーム『11eyes -罪と罰と贖いの少女-』のテレビアニメ化作品。全十二話+OVA一話。監督は下田正美。アニメーション制作は動画工房。世界を崩壊させる力を持った捕らわれの魔女に主人公達の運命が翻弄される学園バトルファンタジー。アニメ版にはサブタイトルが付かない。一般的には原作レイプアニメの代表格として知られており、そこから派生して本作をクソアニメだと称する者も多い。

・バトル


 主人公は片目に障害を抱える養護施設育ちの少年。たった一人の姉を子供の頃に自殺で失っている。ある日、同じ施設育ちの幼馴染みヒロインとのデート中に、突然、謎の異世界へと飛ばされる。ヒロインによって「赤い夜」と名付けられたその世界で、主人公達は「黒騎士」と呼ばれる異形の戦士に襲われる。その日は辛くも脱出した二人だが、翌日以降も同じことが繰り返される。そこで、彼らは同じように異世界に召喚された陰陽師の先輩、不老不死の後輩、炎を操る男子生徒、そして、子供の頃に死んだはずの姉に瓜二つな女性の六人=「11eyes」で協力して、赤い夜と黒騎士に立ち向かうのだった。
 いわゆる中二バトル系のアニメだが、第一印象はなかなか面白い。確かに、予算と技術と尺の都合上、作画や脚本の面ではいろいろと不具合がある。他の人気大作アニメと比べると、どうしても戦闘シーンのチープさは否めない。だが、そこに至るまでの過程をしっかりと描いているため、視聴者をぐいぐいと物語に惹き付ける魅力がある。主人公は二度目の生還の後、赤い夜で生き残るため&ヒロインを守るために剣の修行を始める。それは人間として当たり前の本能的行為。しかし、当たり前のことを当たり前にやらない作品が多い中で、こういった地道な成長物語を面倒臭がらずに描いたのは非常に好感が持てる。また、後に主人公は「未来予知」の特殊能力に目覚めるのだが、それもちゃんと生命に害を及ぼすリスクのある技になっており、決して努力なしで勝敗を決するチート能力ではない。そして、何よりも注目すべき点は、主人公がヒロインを守る必然性があることだ。彼は天涯孤独の悲観論者であり、ヒロインが唯一の彼の理解者である。そのため、ヒロインを失うということは、彼の存在証明をも失うということになるのだ。もちろん、それは人として不自然な状態であるから、後日、大きな問題を引き起こす。こういった設定の深みは、さすがエロゲー原作といったところである。
 ただし、原作では豊富なオカルト知識や楽しい日常描写、それに伴う深い心理描写もしっかりと書き込まれているため、複雑な文芸作品を単純なバトル物に落としたと批判的に捉えることもできるだろう。だが、これはやはりメディアの違いによる表現方法の差と考えるべきだ。何より作品のターゲット層が全く違うのだから。

・設定


 リーゼロッテという不老不死の魔女がいた。彼女はかつて愛した男の願いを叶えるため、自らの手で世界を滅ぼそうとした。しかし、その前に「禁書目録聖省」という魔術団体が立ちはだかる。両者の激しい戦いの末、今から六十四年前、ついに魔女を異世界に封印することに成功する。その際、彼女の力が七分割され、その欠片が六人の人間に託される。また、禁書目録聖省の六人の騎士は魔女の呪いにより醜い黒騎士の姿に変えられてしまう。六十四年後、永い眠りから目覚めた魔女は欠片を持つ者を赤い夜に呼び寄せ、その力を使って封印から復活しようとする。それを力尽くで阻止せんとする黒騎士達……。
 これを見れば分かる通り、主人公達は悪の魔女を手助けする存在であり、それを食い止めようとする黒騎士の方が正義であるという構図になっている。つまり、善と悪の価値観の逆転が本作の大きなギミックになっている。もちろん、主人公達はその事実を知らず、物語の終盤で真実を聞かされ、大きな衝撃を受ける中、厳しい選択を迫られる。このまま魔女の軍門に下るか、世界を守るために自ら命を絶つか。当然、普通の人間である彼らにはどちらも選べない(ただし、かつて主人公の姉だけは自らの死を選んだ)。そこへ本作のキーパーソンである六人目の欠片が第三の選択肢を告げる。それは六つの欠片に匹敵する力を持つ主人公の「アイオンの眼」を用いて、魔女を倒すこと。ただし、そのためには眼の持つ強大な魔力に打ち克たなければならない。
 このように、様々な問題点があるとは言え、非常によくできた作品である。劇中に登場する四つの陣営がいずれも明確な意志の下に動いているため、各人の言動に整合性と説得力がある。怠惰な生活を送っていた主人公が、仲間達との戦いを通じて未来への希望を手に入れるという本筋もブレていない。原作未プレイ者などは、「なぜ、これがクソアニメと呼ばれているのか?」と疑問に思うだろう。だが、そんな幸せも第九話までのこと。それ以降、本作の作品としての質は急激に低下する。

・崩壊


 正確に言うと第六話の時点で予兆はあったのだが、第九話以降、ヒロインが主人公と陰陽師の先輩との仲を疑って、嫉妬から情緒不安定になる。いわゆるヤンデレ化した彼女の奇行があまりにも不自然で、作品の雰囲気を明らかに壊している。具体的に彼女が何をやらかしたかと言うと、不老不死の後輩からこぼれ落ちた欠片を、「助けてあげる」と言って魔女に投げ付け、封印から復活させてしまうのである。何をしてくれますか、この娘は。そもそも、ヒロインは欠片の話を聞いておらず、それが何なのか分からないはずだ。なのに、なぜ、そんな行動を取ったのか、もちろん納得の行く説明はなく、いわゆる「超展開」である。これを合図にするかのように、本作は崩壊の一途を辿る。視聴者が止める間もなく、キャラクターが次々に勝手な行動を取り始め、それに呼応して次々と今まで聞いたこともない設定が追加されていくのである。平行世界設定(後述)に始まり、姉のそっくりさんのふざけた正体、最終的には陰陽師の先輩と体を重ねることでなぜかパワーを得られるという謎設定まで飛び出す。そして、第十一話の終盤で主人公は魔女に操られたヒロインに殺され、世界は崩壊してしまう。
 ところが! 続く第十二話の冒頭に衝撃の展開が待っている。そのバッドエンドは主人公の予知能力が見せた物であり、現実の出来事ではなかったのだ! 良かったね良かったね……じゃねーよ。長えーよ。エロシーンまで予知するなよ。その後、魔女との直接対決が始まるのだが、そこで世界を滅ぼそうとする魔女に向かって、主人公はヒロインと共に生きる喜びをぶつける。いや、違うから。今までヒロインしか見ていなかった主人公が、新しい仲間を見つけたことに意義があるんだから。そして、最後は「時空を超える六人目の欠片の力とアイオンの眼の力を組み合わせて魔女を時空の狭間に送る」という誰がどう考えてもさっき思い付いただろう的な新設定を用いて魔女を封印する。

・平行世界


 今までちゃんと動いていた機械をもっと良くしようと余計な装置を取り付けた結果、故障して動かなくなってしまった。よくあるミスであるが、それを映像作品でやってしまうと取り返しの付かない致命的な欠陥になる。そして、本作におけるその余計な装置とは、間違いなく「平行世界設定」である。
 魔女の力が籠った六つの欠片は、それぞれ別の平行世界に飛ばされたということになっている。そして、アニメ版では六人の欠片保有者が赤い夜に集められた後、そこから脱出した者は全員、「ヒロインの世界」に集結したという設定になっている。平行世界から来たのなら、そこには同じ人物が二人いることになるんじゃないのか? まぁ、そこは何らかの謎パワーで融合でもしたのだろう。全く説明はないが。ただ、他にも平行世界に関する都合のいい解釈が次々と溢れ出てくる。ヒロインの世界だからヒロインの空想が実体化するとか、ヒロインが生きている間はヒロインの世界はなくならないとか、友人達がヒロインを知っているからヒロインの世界だとか、子供の頃にヒロインが自分の世界に主人公を引き寄せたとか。制作者は本当に分かってやっているのか? この程度のSF知識で視聴者を騙せると思っているのなら、心底おめでたい。(なお、原作では集められたのは魔女の作った世界=赤い夜なので矛盾はない)
 そして、その平行世界設定がもたらした最大のミステイクがエピローグである。魔女を時空の狭間に飛ばした後、主人公達は赤い夜から脱出して現実世界に戻る。そこは誰かの(過去の?)世界らしく、死んだはずの後輩や男子生徒が生きており、事件さえ起こっていない平和その物の世界だった。って、おい、待て。何だそれは。無理矢理ハッピーエンドにも程がある。崩壊寸前まで行ったヒロインの世界は完全放置か? なら、頑張って世界を守る必要はなかったんじゃないのか? ちなみに、このオチが原作ファンの激怒した一番の原作レイプ要素である。原作ファンじゃなくても馬鹿馬鹿しいので、彼らの怒りは推して図るべしであろう。ネタバレになるので原作の方のオチは書かないが、興味がある人はぜひプレイしてみて欲しい。

・総論


 前半は良かったのだが、終盤の墜落っぷりは原作を度外視しても擁護不可能。いや、途中までは良かっただけに、かえって怒りが湧いてくる。オリジナル展開をするのなら、それなりの知識と覚悟を持って挑んで欲しい。

星:★★★(-3個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 21:59 |  ★★★ |   |   |  page top ↑

『あっちこっち』

迷走。

公式サイト
あっちこっち - Wikipedia
あっちこっち(漫画)とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2012年。異識著の四コマ漫画『あっちこっち』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は追崎史敏。アニメーション制作はAIC。男女五人の高校生の穏やかな青春を描く日常系ラブコメ。ロゴマークが『侵略!イカ娘』のそれと何か似ている。

・何これ?


 まぁ、簡単に言うとクソアニメなわけだが、その理由も至極簡単だ。脚本・演出を緻密に精査するまでもなく、ただ、ひたすら単純に「劇中のネタがつまらない」のである。かの『キルミベイベー』よりもつまらない。いや、『キルミベイベー』は下ネタ・パロディーネタ・時事ネタ・オタクネタという暗黒四天王を使わなかったし、声優の好演もあって、へっぽこながらもギャグアニメという物に真摯に向き合おうとしていた。だが、本作は何だ? 反則技を多用しているわりに、あらゆるシーンのあらゆるネタが笑えない。それどころか、完全にスベっている。最初から最後まで一貫してそうなので、原作者・脚本家・監督と責任者全員に基本的なギャグセンスが欠けているのだろう。それら一つ一つをどんなに細かく分析しようとも、結局は「ボケが弱く、ツッコミがズレている」という単純極まりない結論に行き着いてしまうため、いわゆる「評論家泣かせ」という奴で、無理矢理にでも批判点を挙げて字数を稼がないといけない人には天敵のようなアニメになる。ただ、本ブログは字数など関係ないので、何とも気楽な物だ。つまらない。
 ちなみに、スペースが余ったので先に良点を書いておくと、作画は非常に綺麗だ。動画枚数が多いだけでなく、基本的なレイアウトやカット割りも巧みである。音楽も高品質……なはずなのだが、低音量でダラダラと背後に流れているだけなので、よく聞き取れない。まるでデパートのBGMであり、明らかにギャグアニメの雰囲気を壊している。ただ、矢印を使った画像効果(アイコン)は全体に統一されていて良い。

・男女五人日常物語


 本作と他のゆるい日常系アニメとの最大の相違点は、主役が男性二人女性三人の混合グループだということだ。今まで、女の子同士の会話は基本的につまらない物なのだから、その方がリアリティがあって良いなどと擁護してきたが、本作にはそれが通用しない。ただでさえ、萌えアニメにおける男性キャラは不要な存在なのに、それがつまらないとなれば邪魔者以外の何物でもない。
 不可解なのは、その五人組がグループを形成するに至った理由が劇中で全く描かれないことだ。そのため、思わず首を捻りたくなるような極めて不自然な光景になってしまっている。五人組は常に行動を共にし、昼食も一緒に食べる。休みの日は五人で遊びに出かけ、夏休みには別荘で一夜を過ごす。いくら仲が良くても、異性の友人の自室に気軽に出入りはできないだろう。ここまで来ると、理想的な青春を描くという萌えアニメの趣旨からも逸脱して、どこか白々しい気持ちの悪ささえ感じる。普通は、グループ内の誰それが幼馴染みだったみたいな理由付けをする物だが……。しかも、男性二人は容姿も良く、運動神経も発達していて、クラスの女の子からもキャーキャー言われるような存在である。バレンタインデーにチョコレートをもらうのは当たり前と思っており、言ってみれば、アニメの視聴者と対極にいるような人間だ。あまりにもリア充過ぎないか? これでは、ただ男性陣が女遊びに精を出しているだけにしか見えない。ホストが夜の街で女性を侍らかしているような物だ。申し訳ないが、ちょっと彼らに共感することは難しい。

・イケメン


 さらに不可解なのは、メインヒロインがグループ内のイケメンキャラに片思いをしていることである。そのイケメンは何をやっても万能な完璧超人であり、無意識にキザな台詞を吐いて女性をメロメロにするという嫌味な特技を持っている。にも係らず、異常な朴念仁なのでヒロインの分かり易過ぎる恋心に全く気付かない。これでイケメンが主人公ならハーレムアニメ、ヒロインが主人公なら少女漫画アニメだ。しかし、本作はあくまでゆるい日常系アニメであって特定の主人公はいない。すると、世にもおぞましい光景が浮かび上がる。つまり、数少ないヒロインの一人が主人公(=視聴者)ではない男性を絶賛し、何とか自分に振り向かせようと日々努力しているのである。いくら羞恥心から可愛い仕草をしても、それは視聴者ではなくイケメンに向けてした物。しかも、そのイケメンは他のヒロイン達からも明確にアプローチされており、自分がモテていることを明らかに理解している。その上、朴念仁という設定のはずなのに、意図的に女性に口説き文句を言ったり、ヒロインの恋心を弄ぶような態度を取る。こいつ、全部分かってやってんじゃないのか?
 はっきり言って、不快である。何で、男性向け萌えアニメの中で女の子にモテモテなイケメンを見なきゃならないんだ? そんな人は現実世界で十分に間に合っています。これなら、自分の欲望に素直なハーレムアニメや、とことん余計な物を省いた百合アニメの方が何百倍もましというまさかの状況に驚かされる。後、うざいからペンを回す癖をやめろ。

・ケモノ


 メインヒロインは、驚いたり焦ったり情緒不安定になったりすると頭の上に猫耳が出るという身体的特徴がある。また、語尾に「にゃ」を付ける癖があり、高い身体能力と謎のサイコパワーを有している。となると、彼女は人間ではなく、猫娘のような獣人の一種なのだろうか。そう言えば、高校の名前が猫毛高校であり、彼女以外の生徒も重力に逆らって天井を走れるほどの超人的な身体能力を誇っている。きっと、妖怪と人間が共存した『夜桜四重奏 ~ヨザクラカルテット~』や『かのこん』のような世界観なのだろう。だが、そういう面持ちで視聴を続けても、なかなか彼女は正体を現さない。それどころか、誰も彼女の猫化に気付かない。結局、何も起こらないまま最終回まで到達し、そこで視聴者はようやく真実に気付く。猫耳が出るのはただのビジュアル的な「演出」であると。身体能力が高いのはただのギャグアニメ的な「誇張」であると。マジかよ……。確かに、ヒロインの性格は猫っぽいのだが、常識的に考えてこういうことは許されるのか? それなら、主人公の性格がキリンっぽければ、突然、首が伸びるということになるのだが。本作を見ていると、獣娘を劇中に登場させるためにいろいろと設定を工夫している他のアニメが馬鹿らしく思えてくる。「※これは演出です」は魔法の合い言葉。これさえ書いておけば、あらゆる不条理も許され……ないから。つか、どこにも書いてないから。
 このように、本作はゆるふわ日常系アニメのテンプレートに様々な独自要素を足そうとして「あっちこっち」に迷走した作品である。視聴者を楽しませるはずが、完全に視聴者に背中を向けているのが面白い。新しいことをやる前に、基本的なギャグの質をどうにかして欲しい。

・総論


 『キルミーベイベー』にうざいイケメンと寒いオタクネタを足して、赤崎千夏を引いたような作品。自分で書いておいて何だが、ダメだろ、それ。やべぇよ。

星:★★★★★★★★(-8個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 21:51 |  ★★★★★★★★ |   |   |  page top ↑
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