概説

本項はアニメを批評する個人趣味ブログです。

深夜アニメ・萌えアニメを中心に、独自の視点で簡潔かつ濃厚なレビューをお届けします。
サイトタイトルは「Anime + Commentary」になります。

映画や文学に比べ、公的な批評活動があまり機能していないアニメ業界に対する警鐘という大義があったりなかったりします。
ごめんなさい。たぶん、ないです。

星1個~10個の十段階評価です。
平均点は星7個になります。
完全なる独断と偏見です。脚本重視(ストーリー・シナリオ・設定等)です。
ただし、明らかに業界に悪影響を与えていると思われる作品(いわゆるクソアニメ)に関しては、マイナスポイントを付けることもございます。

その他、
・ネタバレ上等です。
・敬称略です。
・作品タイトル等の固有名詞はwikipedia準拠です。
・2001年以降に公開された男性向けアニメが対象です。
・現在、放送中の作品は取り扱いません。(再放送は除く)
・評価はあくまで暫定であり、後に変動することがございます。
『アウトブレイク・カンパニー』は敵です。
・アフィです。
・ステマじゃないです。
・飽きたら止めます。
・本ブログへのご意見ご感想等がございましたら、こちらのコメント欄を掲示板代わりにお使いになるか、各ページのの方からお書き込み下さいませ。
全記事一覧はこちら。
評価別一覧はこちら。
年代別一覧はこちら。    
スポンサーサイト
関連記事
テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 10:00 |  お知らせ |   |   |  page top ↑

『ISUCA』

低予算。

公式サイト(消滅)
ISUCA - Wikipedia
ISUCAとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2015年。高橋脩著の漫画『ISUCA』のテレビアニメ化作品。全十話。監督は岩永彰。アニメーション制作はアームス。妖魔退治の家系に生まれたヒロインと特殊な能力を持つ主人公が力を合わせて悪に立ち向かう学園ファンタジーラブコメ。アニメ版は、原作のエピソードの順番を大幅に入れ替えて、一つのストーリーになるように改変している。EDムービーの作画を人気アニメーターの梅津泰臣が手がけており、本編とのクオリティの差が著しい。

・低予算


 最近では珍しくなった誰の目にも明らかな「低予算アニメ」である。低予算アニメとは、文字通り予算の少ないアニメのことであり、もっと端的に言うと制作に必要な人材を揃えられないダメなアニメのことである。その影響がダイレクトに表れるのが作画と演出で、あちらこちらで売り物にするには失礼なレベルの崩壊を引き起こしている。また、作品全体の品質よりも製作費を回収することに重きが置かれるので、無理やりセクシャルなシーンが挿入されたり、雰囲気に全く合っていない陽気なOP曲が採用されたり、若いだけで演技力に難のある声優が起用されたりする。結果、唯一のお得意様であるはずの原作ファンにすらそっぽを向かれ、大赤字を計上するのがいつもの流れだ。こういった作品は昔は多く見られたが、2015年にもなってこのクオリティは驚かされる。
 ただ、何度も書いているが、作画や演出の良し悪しは作品の面白さに直結しない。それよりも、低予算アニメの一番の問題は、有能な制作責任者を起用できないことによる映像作品としての致命的なセンスの欠如だ。本作の場合、上述した通り、シナリオの時系列を改変して隙間をオリジナル展開で埋めているのだが、その繋ぎの技術が極めて低く、ストーリーの理解を妨げてしまっている。第一話を例に挙げると、主人公がヒロインに捕えられたネコマタを無断で助けるシーンがある。これ自体は原作にもあるエピソードなのだが、アニメ版ではそのシーンを学校を襲った別の妖魔のミスリードとして流用している。つまり、主人公もヒロインもネコマタが犯人だと勘違いしていたということになり、なぜその勘違いをしたのか、なぜネコマタがそこにいたのか、なぜ主人公達がその場所に移動したのか、その間、真犯人は何をやっていたのか、といったことが画面からは全く読み取れない。すると、視聴者は抜け落ちたシーンを無意識の内に絶えず脳内補完しなければならず、細かい視聴ストレスを生む。それこそが本作全体を包み込む何とも言えない「ダメな感じ」の正体であり、制作者の映像センスの無さの証明になる。
 そもそも、原作を改変する必要がどこにあったのか。「なぜ、主人公がヒロインの家政夫になったのか?」という作品テーマの著述から始まる原作の第一話に何の問題があったのか。ちょっと理解し難い。平凡な人間ほど己を過信して独自の道を歩みたがるが、それで成功できるのは一握りの天才だけだということを認識する必要があるだろう。

・設定


 設定自体は、非常にシンプルかつオーソドックスである。主人公は奔放な両親のせいで困窮し、生活費を稼ぐために日々のアルバイトに明け暮れている男子高校生。ある日の夜、突然、異形の化け物に襲われそうになったところを、一人の女子高生に助けられる。彼女は古より妖魔退治を担う一族「島津家」の暫定的な当主であり、今までずっと一人で戦い続けてきた。翌日、学校を襲う妖魔との戦いに巻き込まれた主人公は、他人とキスすることでその人の真名(本当の名前)を見抜く「真眼」の力の持ち主であることを知る。真名を知ることで妖魔を封印することができるのだ。そして、敵の真名を見抜き、無事に妖魔を封印するヒロインの協力を果たした主人公は、実は島津家の一員だった担任教師の勧めで、実家を離れて一人暮らし中のヒロインの家で家政夫のアルバイトを始める。こうして、二人の奇妙な同棲生活が始まるのだったと、実にシンプルな学園ファンタジーである。ちゃんと必要な物は全て揃っているし、主人公とヒロインの付かず離れずの微妙な関係性も良い。ただ、例によって、アニメ化に際しての余計な改変を多数行った結果、様々な設定の不備が発生している。
 まず、主人公の特殊能力である真眼に、「真名を見抜く」に加えて「霊力を分け与える」という能力まで付け加えられていることだ。前者は攻撃、後者は回復、正反対のスキルなのに、その発動方法まで同じである。これでは敵を攻撃しようとして同時に回復してしまうではないか。次に、学校で何人もの被害者が出ているのに、全く変わりない日常生活が続いている件。これも原作を改変したことによる描写不足が原因である。元々、原作では学校での事件はほとんど起きていない。続いて、「真名を知られるとその相手に服従しなければならない」という設定。原作通り、物語の途中で主人公はヒロインの真名を知ってしまうのだが、それを正当化するために偽りの婚姻をするという展開が、アニメ版ではごっそりと抜け落ちてしまっている。これがないと、なぜか絶対服従であるはずのヒロインが平気で主人公に逆らっているという矛盾が生じてしまう。最後に、「主人公がいないと妖魔の真名が分からないのに、どうやってヒロインは今まで妖魔を封印していたのか?」という疑問。こちらも、原作では島津家の専門家が何日もかけて捕えた妖魔の真名を探ると説明されているのに、アニメ版ではその大事な台詞が削られている。いずれもストーリーの根底を歪めてしまうような設定ミスだ。別に改変自体は悪いことではないが、ちゃんと作品を理解した者がやらないとこうなってしまうという非常に分かり易い例である。

・良点


 良い点もある。特に注目すべきは、「家」に関する事柄だ。ヒロインの島津家は古来から続く妖魔退治の名門一家で、彼女は三十七代目の仮の当主である。ただし、彼女の父親は入り婿であり、しかも、島津家と対立している西洋魔術師の家系だったため、一族の者からは忌み嫌われている。ヒロインには歳の近い従妹もいて、彼女を次期当主に推す者も多い。そんな逆風が吹き荒れる中、ヒロインは当主になることに並々ならぬ情熱を燃やし、そのため、自分自身の手で妖魔を退治することに固執している。その理由は、八年前に行方不明になった両親の真実を知るためと、父の意志を継いで西洋魔術師との確執を断ち切るためだった。しかし、そんな彼女の姿は第三者である主人公からすると、家という不確かな物のために無理やり自分を押し殺しているようにしか見えない。それゆえ、彼は彼女を支え、一緒に両親を探すことを決意する。と、このように、オーソドックスでありながら、理不尽さと希望を併せ持った奥の深い設定である。ヒロインや主人公の意志もしっかりと描かれ、彼らに十分共感できる。簡単そうに見えて、ただの三流アニメにはこれがなかなかできない。この辺りは原作の力だけではなく、アニメスタッフの努力も垣間見られるポイントである。
 また、序盤は壊滅的な出来栄えだった本作も、ようやく予算が確保できたのか、第六話以降はそれなりに持ち直す。特に第六話は、原作のエピソードをアレンジしたオリジナルストーリーで、作画レベルは相変わらずだが、ヒロインの深層心理に深く切り込んだシナリオ面と演出面は非常に完成度が高い。ヒロインのいわゆるツンデレ的な言動も可愛い。他のアニメに混じっても十分に戦って行けるぐらいだ。通常、第一話と最終話が一番良質な物だが、中盤にピークが訪れるのは珍しい。最初からこのレベルを保っていたなら、もっと評価は高かっただろうに。よく、創作の上達法として、良い例に触れるのと同じぐらい悪い例にも触れて、両者をじっくりと見比べてみることが大事だと言われるが、本作は一つの作品内で両方が味わえるお得なアニメである。

・ラスボス


 終盤は一人のラスボスを中心に展開する。彼女も原作に登場するキャラクターなのだが、元々、それほど出番は多くない中ボスクラスの敵だった。一方、アニメ版では最重要人物に昇格し、第一話からすでに全ての事件の黒幕として暗躍している。なぜ、そのようなことになっているのか。敵を一人に絞るとそれを倒した時点で物語が完結するので、話が非常に分かり易くなるというメリットがある。それゆえ、全十話という短い尺でストーリーをまとめるための止むを得ない処置といったところなのだろうが、それに比例してどうしても話のスケール感が狭くなるのは否めない。結局、ただの私怨の物語になるからだ。それだと、ラスボスの魅力=作品自体の魅力になってしまうのだが、本作のラスボスで視聴者の印象に残るのは、意味もなく連発する高笑いぐらいな物だろう。
 さて、そのラスボスの正体はと言うと、実は島津家に恨みを抱く西洋魔術師が魔術の粋を集めて作ったホムンクルスである。その魔力は人間を遥かに凌駕している。では、それほどまで強力な敵をどうやって倒すのか、こんな物は設定を見れば考えるまでもなく、主人公がヒロインにキスをして霊力を分け与え、パワーアップして倒すのである。だが、ラスボスとの最終決戦が繰り広げられている間、視聴者は全員が同じことを思うだろう。「キスなんていつでもできるだろう」と。実際、いつでもできるチャンスがありながら、最後の最後になってようやく二人はキスを交わす。極めて不自然である。ここにもアニメ用に勝手に設定をいじくった弊害が発生している。まともなシナリオライターなら、二人がキスできないように様々な障害を用意するはずだ。ヒロインは貞操観念が強く、本当に好きになった人としかキスをしないといった精神的な障壁、キスをすることでヒロインの真名が分かってしまうため、ずっと自重していたといった物理的な障壁、少し考えるだけで幾らでもアイデアは浮かんでくる。低予算だから、全十話だからなどと言い訳せず、ちゃんとやることをやるべきだ。
 ちなみに、ラスボスを倒してもそこでストーリーは終わらず、真の黒幕はヒロインの父親で、ホムンクルスは大量生産されていたというブラックなオチを描いて終了する。これだけ設定を改変しておいて、第二期などあるはずがないのだが、希望を捨てられなかったのだろうか。それとも、頑張ってもこのようにしか作れなかったというなら、あまりにも情けない。

・総論


 作品自体の評価はこれぐらいだろう。ただ、原作ファンには許し難い部分も多く、何よりこのアニメが2015年に放送されたという事実が最大の驚きである。

星:★★★(-3個)
関連記事
テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 09:37 |  ★★★ |   |   |  page top ↑
twitter
検索フォーム
最新記事

全記事一覧
評価別一覧
年代別一覧
掲示板
カテゴリ
リンク
カウンター
RSSリンクの表示



にほんブログ村
PR1
PR2