『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』

高みの見物。

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俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる - Wikipedia
俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎるとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2013年。裕時悠示著のライトノベル『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は亀井幹太。アニメーション制作はA-1 Pictures。元中二病患者の主人公がフェイク彼女と幼なじみの間で板ばさみになるハーレムラブコメ。セクシーな彼女役はロリ・ショタ系が本職の田村ゆかり、元気な幼なじみ役は『キルミベイベー』の怪演が記憶に新しい赤崎千夏という意外なキャスティングが注目された。

・パロディー


 劇中、ヒロインの一人が新しい部活を立ち上げる。このマンネリズムは最早『水戸黄門』並みか。時代劇があのフォーマットを確立するまで、何十年もの歳月を費やしたというのに。それはともかく、その部活の名は「自らを演出する乙女の会」、略して「自演乙」である。……え、何が面白いの? ここ、笑うところ? 親父ギャグにも劣るつまらなさに全米震撼。そもそも、このギャグを成立させたければ、部活の内容が自作自演を想起させる物(自分でトラブルを起こして自分で解決する等)で、それに対して視聴者を含む第三者が「自演乙」とツッコむ形にしなければならないはずだ。ギャグはそこまで練り込んで初めてギャグ足り得るのである。結局、ネットスラングをただ当てはめただけで、深い考えなど何もありはしない。
 というように、本作でも昨今のライトノベル原作アニメ同様に他作品のパロディーが内容の大半を占めている。しかも、本作の場合は、上記のようにパロディーと呼ぶのもおこがましい低レベルな何かである。例えば、『ジョジョの奇妙な冒険』のネタが何度か出てくるのだが、全て台詞で「ジョジョでは……」と語るのである。それはパロディーでも何でもなく、ただの「引用」です。また、物語の一番のギミックである中二病(邪気眼)ネタも、要はネットで流行した物のコピーでしかない。そのため、本作にはクリエイティブな要素が何一つない。つまり、既存のハーレムアニメのテンプレートに流行ネタを上乗せしただけの「二次創作」ということだ。こういうアニメがオリジナル作品として発表されていること自体が嘆かわしい。

・主人公


 複数の女性から好意を持たれているのに、主人公がそれに気付かないという非現実的な状況がハーレムアニメにおいて度々発生し、批判される要因になっている。本作ではそういった要素を回避するため、主人公は恋愛に対して嫌悪感を持っている勉強一筋の人間という人格になっている。その姿勢は良い。ただし、残念ながら、それらはただの「設定」に過ぎない。実際の彼は、性格も言動も典型的な「ギャルゲー主人公」で、クローン人間かコピーロボットかというレベルである。一般常識がなく、洞察力が鈍く、他人の気持ちが分からない。その割りに口が上手く、相手が弱っていると見るや、上から目線で説教する。要するに「オタクが考えるかっこいい男性像」なのだが、正直、本当にいたらうざいだけなので、世間とのズレは如何ともし難い。外国人に「ハーレムアニメの主人公はなぜモテるのか?」と真剣に議論されるだけのことはある。
 そんなギャルゲー主人公の特徴の一つに「キレ芸」がある。あからさまな「ヒロインの敵」(自分の敵ではない)に対して、突然キレて、熱い啖呵を切りながら体ごとぶつかって行くという奴だ。これも「オタクが考えるかっこいい男性像」の一環なのだが、あまりにも不自然過ぎる。未だかつて、そういう人物をリアルで見たことがあるだろうか? 強大な敵に立ち向かうには、我を忘れる程の感情の昂ぶりが必要だ。だが、熱い啖呵を切るには、頭を高速回転させる冷静さが必要なのである。そんな高度なことができるのは、常に正義とは何かを考えているアクティブな人間だけであって、他人に興味のない「巻き込まれ型」の主人公には絶対に不可能なのである。結局、主人公が作者の分身ではなく、ただの借り物テンプレキャラでしかないため、平気でそういうことをしてしまうのだ。
 さらに言うと、そのキレ芸を物語冒頭で自称彼女のヒロインに対して使っていれば、この作品は終了していたのである。なぜ、場面場面で性格を使い分けるのか。なぜ、キャラクターの言動に一貫性を持たせようとしないのか。この「作者にとっての都合の良さ」が垣間見える時点で、主人公に人間味を感じず、共感を覚えることが難しくなる。数多いライトノベル原作アニメの欠点の中でも一・二を争う物である。

・俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる


 このタイトルを読んで、何か違和感を覚えないだろうか? もし、何もおかしいと感じなかったのなら、その人はオタクをこじらせ過ぎているので、もう少し視野を広げる訓練をした方がいいだろう。正解は「修羅場になっている主体は誰か?」ということである。このタイトルだと当然、修羅場なのは「俺」ではなく、「俺の彼女」と「俺の幼なじみ」になってしまう。恋愛ドラマの常識で考えると、このタイトルは致命的な錯誤のはずだが、本作に限っては間違いなく正しい。実際問題、主人公であるはずの「俺」は全くトラブルに関与していないのだから。
 世に二股物や不倫物と呼ばれるジャンルの作品は多数存在するが、それらが劇中で修羅場に至るプロセスは何だろうか。まず、大前提として現時点における主人公が好意を寄せる人物がいて、そこに新たな第三者が現われるというパターンが必要だ。そして、主人公がその両者を好きになる、もしくは第三者との間で逃れ得ぬ特別な関係性が生じた場合、修羅場が発生する。もちろん、その主体は主人公自身だ。両者の間で板ばさみになり、両方に対して良い顔をしようと無駄な努力をして、結果的に事態が悪化する。それらの背景にある物は「保身」である。自らの身を守りたいというエゴが他人を傷付け、最後には自分自身に返ってくる。つまり、「自業自得・因果応報」が作品テーマとなり、そこに物語的な面白さが生まれるからこそ、飽きもせず二股物や不倫物が作られ続けるのである。
 では、本作の場合はどうだろう。そもそも論として、主人公と幼なじみの間に恋愛関係はない。幼なじみとの「絆」は愛情とは別物であり、主人公は彼女と疎遠になるとはこれっぽっちも思っていない。一方、後からやってきたヒロイン達に対しても、迷惑を感じこそすれ好意を持っていない。恐れているのは過去を知られることであり、彼女との関係を知られることではない。そのため、全く身を守る必要がないのである。すると、主人公は安全な高みにいて、ヒロイン達の不毛な争いを生暖かく見物していればいいのだ。だが、本作では、そういった主人公不在のヒロイン同士のいざこざをなぜか「修羅場」と称している。つまり、作者は「修羅場という言葉の意味を完全に誤認している」のである。よって、本作はセオリーがどうのこうの以前に、完全に恋愛ドラマとして「問題外」である。

・ストーリー


 主人公は医者を目指して猛勉強中の恋愛嫌いな男子高校生。しかし、中学時代は重度の中二病患者で、妄想を記したノートを付けていた。彼がそういった物をやめたのは、両親の不仲による家庭崩壊という苦しい現実に直面したから。そんなある日、学年一の美人と名高いヒロインが主人公の前に現われる。彼女は主人公の黒歴史ノートを脅し材料にして、自分の彼氏を演じるように強要する。その理由は、恋愛嫌いな彼女が言い寄ってくる男性を自分から遠ざけるため。こうして、フェイク恋人となった二人に幼なじみを加えた三人の男女の奇妙な日常が始まるのだった。
 設定自体に興味深い点がないわけではないが、実際の内容は、ヒロインが黒歴史ノートを朗読して主人公に言うことを聞かせるというネタを延々と使い回すため、非常にくだくだしい作品になっている。そもそも、中二病中二病と小馬鹿にしているが、一般人から見るとこの作品その物が中二病である。さらに第五話以降は、現役中二病患者の女の子と幼稚園時代に結婚の約束を交わしていた女の子がヒロインとして加わって完全にハーレムになる。はっきり言って、「バーニングファイティングファイター」よりもこの下半身丸出しの妄想の方が何百倍も恥ずかしい。
 物語が動くのは第十一話、ギャルゲー制作会社に勤務する主人公の伯母が登場し、主人公とヒロインのフェイク恋人関係を看破してからである。彼女曰く「偽物を本物に見せる時は、本物以上に本物らしくないと」とのこと。それは何のギャグだ? リアリティの欠片もないハーレムアニメがどの口で言うんだ? まさかの自虐ネタに全米爆笑。本作で一番面白いのがこのシーンである。それは別にして、その第十一話以降、作品の雰囲気が一変する。一旦、冷静になると言った方が正しいか、外から自分達の不適切な関係を見つめ直し、ちゃんと清算しようとするのである。思い悩むヒロイン、彼女を癒そうと奮闘する主人公、思わぬ良展開にテンションが上がる視聴者。そして、主人公はヒロインに告白し、晴れて二人は恋人同士になる。しかし、幼なじみとその他二名が彼らの帰りを待っていた。こうして、最終回にしてようやく二股物の恋愛ドラマとしてのスタートラインに立ったわけだが……ところが! 突然、ED曲が流れて、ここで物語終了である。はぁ? いや、マジで何考えてんの? 続編があるのか知らないが、このブツ切りエンドはあまりにも酷い。結局、本作中において、主人公が修羅場を経験することは一度もなかった。

・総論


 第十話までは駄作中の駄作。第十一話以降はまだまともになるが、それでも三流ギャルゲーレベルであり、最後はブツ切りエンド。実に低品質な恋愛ドラマである。実際に恋愛をしろとは言わないから、本作の関係者は、せめて恋愛小説でも読んで「修羅場」という言葉の意味を勉強して欲しい。

星:★★★★(-4個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:17 |  ★★★★ |   |   |  page top ↑
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