『R-15』

U-15。

公式サイト(消滅)
R-15 (小説) - Wikipedia
R-15(ライトノベル)とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2011年。伏見ひろゆき著のライトノベル『R-15』のテレビアニメ化作品。全十二話+OVA一話。監督は名和宗則。アニメーション制作はAIC。天才ポルノ小説家の高校生が妄想に塗れた日々を過ごすエロチックハーレムコメディー。過激なシーンが多いため、地上波放送版では全面的に白塗り処理が施され、訳が分からなくなっている。最近の「クソアニメ」を語る際、『バスカッシュ!』や『あっちこっち』などと並んで必ず名前が挙げられる作品の一つである。

・公式が病気


 まず、何も聞かずに本作の公式サイトを見て頂きたい。そして、すかさず「キャラクター」の項目を見て頂きたい。そこで貴方は衝撃の光景を目にするだろう。何と、キャラクターの画像の横に、担当声優の顔写真が同じぐらいの大きさでデカデカと掲載されているのである。これは斬新過ぎる演出だ。昨今、いくら声優の人気度が視聴動機の大きなウェイトを占めるようになったとは言え、あくまで声優業は裏方である。キャラクターのイメージを守るため、できるだけ声優の顔は見ないようにするという人も少なからずいる中、これはそういった人々に真っ向から冷や水を浴びせる行為であろう。何を思ってこんな暴挙に出たのか。この業界に長く浸っている人には釈迦に説法だろうが、当然、彼女達は声優事務所がこれから売り出そうとしている新人声優である。つまり、事務所がキャスティング権自体を買い取り、所属声優の宣伝と修行の場として本作を用いようとしたのだ。言い換えると、本作は完全に出汁にされたわけである。酷い話であるが、逆に言うとその程度の商品価値しかないと製作側にも認知されているということであり、同情するだけ無駄である。
 これで、彼女達が演技力に秀でているのなら擁護のしようもあるのだが、まぁ、新人声優らしい拙さである。滑舌が悪く、声のトーンが不安定で、キャラクターが固定できない。それも一人二人ならまだいいが、ほぼ全員である。コメディーは演者の実力差が最も如実に表れるジャンルだと何度も書いてきたことだ。さらに言うと、本作は内容が内容だけに、卑猥な台詞や嬌声を発する機会が多い。どう考えても新人声優に顔出しでやらせる仕事ではなく、これが芸能界でなければ即訴訟レベルの重大なセクハラであろう。本編とは何も関係ないが、ある意味、近年のアニメ業界の悪いところを集約したような状態になっているのが、本作の立ち位置をよく示している。
 なお、本作に出演した新人声優達が現在どうなっているかは、寡聞にして存じ上げない。気になる人は各自検索して頂きたい。きっと、本作の何十倍もドラマチックである。(※2017年8月追記。公式サイトの消滅を確認しました)

・主人公


 「みんなは分かっていない。表層的な嫌悪感や道徳観に目を奪われ、真実を見失っているんだ。なぜなら、性こそが人間の源。性を書くことは人の本質を書くことなのだ。そう、それこそが僕の文学!」
 主人公は、日本中の天才達が集う特殊な高校の男子学生であると同時に、プロの官能小説家(劇中ではポルノ小説家)である。この設定を目にした瞬間、胸に去来するどす黒い感情は一体何だろうか。百歩譲って、中学生(当時)が官能小説家としてデビューするという荒唐無稽な設定は許そう。一万歩譲って、女性経験のない童貞男子が官能小説を書くという非現実的な設定も許そう。しかし、絶対に許せないのは、彼が全国に多数のファンを抱えた人気天才作家であることだ。官能小説の読者は、中高生が中心のライトノベルとは違い、皆、十八歳以上の「大人」である。中には四・五十代の男性もいるだろう。それらの読者に人気があるということは、作家自身も読者層と同じ年代の感性を持っているということである。しかし、劇中の言動を見る限り、彼の人格はどこまでも子供っぽい。事あるごとにヒロインを使った淫らな妄想をするのだが、それがまさに中学生レベルの青臭い(直接的で捻りのない)妄想なのである。主人公のCVが女性声優であることも、その未熟なイメージに拍車をかけている。さらに、詳しくは後述するが、彼は不遜な態度とは裏腹に、官能小説家であることを恥じている様子が見て取れ、「妄想とリアルは別」という余計な台詞まである。そういう人間が現実世界で人気官能小説家になれるはずがないと思うのだが、どうだろうか?
 これらの設定的な矛盾がなぜ起こっているかを考えると、官能小説という物を都合良く定義しているからに他ならない。アニメ版では全く説明がないが、どうやら原作では「ポルノ小説」とは年齢制限のない準官能小説のような物という設定になっているらしい。要するに、「ポルノ小説=性的な要素が濃いライトノベル=本作その物」なのである。この公式を冒頭の主人公の台詞に当てはめてみると非常に面白いことになるだろう。「人の本質」、これを本作は如何様に描いてくれるのか、その出来栄えに注目したい。

・下ネタ


 主人公は「散歩する肉欲」とヒロインの一人に称されるほど、性的な事象に興味津々で、常に卑猥な妄想に捕らわれている人間である。官能小説家だからと言って別に全員が性欲過多な人間ではないし、下手すると名誉棄損で訴えられてもおかしくないのだが、それはこの際置いておこう。とにかく、彼の卑猥な妄想は具体的な映像としてアニメ劇中に度々登場する。女性の下着や裸は当たり前、官能小説風のアダルトなシチュエーション下でヒロイン達があられもない姿を晒しまくる。当然、リアリティなどという物は思案の外だから、彼女達は恥ずかしげもなく男性中心のご都合主義な妄想にお付き合いする。よくもまぁ、地上波で放送しようと思ったなと逆に感心するぐらいの低俗さだ。
 ただ、下ネタが多いだけなら、普通は「クソアニメ」とは称されないだろう。精々、「馬鹿アニメ」や「変態アニメ」などと良識的な人々に誹られるぐらいだ。それが現在、一般的にクソアニメと評価されているのはなぜかと言うと、一言「幼稚」だからである。妄想自体が中学生レベルだとは前述したが、出てくる下ネタも「風が吹いてスカートがめくれて主人公が鼻血を出す」といった小学生レベルの代物である。笑えない、興奮しない下ネタほど寒い物はない。それは下ネタ以外の普通のギャグも同様で、いろいろと滑稽な動きをしたり、大げさな小道具を出したりして視聴者を笑わせようとしているのだが、どれこれも『月刊コロコロコミック』のような低学年向けギャグ漫画レベル……いや、比べるのも失礼なぐらいの幼さだ。ここは一つ、『R-15』というタイトルを返上して『U-15』に改名しては如何だろうか。
 さらに、その幼稚さを決定付けているのが作品の舞台である。日本中から各分野の天才を集めた学校ということになっているが、その天才達の特殊能力が如何にも取って付けたような安直さなのである。例えば、主人公の親友は数学の天才という設定だが、劇中で披露した数式は高校レベルにも達していない。また、ヒロインの一人はコンピュータの天才という設定だが、やっていることはキーボードを乱打してペンタゴンにハッキングといった一目でいい加減だと分かるような代物である。天才を描くためには、作り手が彼ら以上の天才でなければならない。コメディーだから細部のリアリティは適当でいいと思っているのなら、クソアニメと呼ばれるのも致し方なしだ。
 ちなみに、第十話でクラス対抗オリエンテーション大会を行っている際、主人公が面白いことを口走る。「エロは人間の本能だよ。そこに訴えれば、自然と人間は集まるのさ。誰しもエロスの誘惑には勝てない。これで一気に逆転してやるさ」と。第十話と言うと、すでに本作=クソアニメという評価が完全に定着した頃である。さて、彼の言う通り、エロスの力で逆転できたのであろうか。

・ストーリー


 高校生ポルノ小説家の主人公は、ある日、ひょんなことからクラリネット演奏の天才であるヒロインに一目惚れする。しかし、純粋無垢なヒロインに対してだけは、嫌われたくないという想いから自分がポルノ作家であることを打ち明けられない。一方、ヒロインはクラリネット演奏について悩んでいた。自分は本当に音楽の才能があるのか、ただ、父親に強制されたから続けているだけではないか。そんな彼女を勇気付けるため、主人公は自分がポルノ作家であると告白することを決意する。その方法は、クラスで歌う合唱曲の歌詞を自分らしい卑猥な言葉で埋め尽くすこと。彼が作り上げた変態歌詞の合唱曲を聴いて心を揺さぶられたヒロインは、クラリネットに対する情熱を取り戻す。
 このように、ヒロインの苦しみを主人公が癒すという典型的なギャルゲーシナリオであるが、意外とメインストーリー自体はよくできている。官能小説家設定もちゃんと生かしているし、「人の本質」というメインテーマからも一応外れていない。物語の中心軸が崩壊している他のライトノベル原作アニメとは雲泥の差だ。とは言え、すなわちよくできた作品かと問われれば、残念ながら首を横に振らざるを得ない。何より問題はクライマックスの合唱シーンだ。一言で言うなら、ハードルを上げ過ぎなのである。「官能小説家のスキルを生かした卑猥な歌詞の歌で、ヒロインのクラリネットに対する情熱を取り戻す」という無茶苦茶な物語を具体的な映像で見せなければならないのだが、当然、「天才」ではない普通のアニメ制作者にそんなことができるわけがない。すると、そこに映し出されるのは見るも無残な光景であった。卑猥な歌を淡々と歌う高校生達。感動する観客。称賛するライバル。そして、自分らしさを思い出すヒロイン。何じゃそりゃ!? 失笑とはまさにこのような時に使う言葉である。結局、エロスは主人公が考えているほど万能ではなく、ダメな物はダメなのであった。

・総論


 実は意外と評価が難しい作品。下ネタに関しては明らかに論外。幼稚な作風はまさにクソアニメの鑑。ただ、メインストーリーは言われているほど悪くない。アニメ以前の問題と見るか、究極のクソアニメと見るか、他の不愉快な作品よりはましと見るか。当然、本ブログが選ぶのは……。

星:★★★★★★★(-7個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:29 |  ★★★★★★★ |   |   |  page top ↑
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