『変ゼミ』

似非カルト。

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変ゼミ - Wikipedia
変ゼミとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2011年。TAGRO著の漫画『変ゼミ』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は加戸誉夫。アニメーション制作はXEBEC。某大学の「変態生理ゼミナール」内で繰り広げられる倒錯型ブラックコメディー。一話十五分のミドルサイズアニメ。これが三十分アニメじゃなくて良かった。本当に良かった……。

・カルトムービー


 女子大生の主人公が片思いの男子学生の背中を追いかけて入ったゼミは、その名も「変態生理ゼミナール」、略して「変ゼミ」。その実態は、普段、日の当たらぬ場所に生きている「変態(性的倒錯)」達を学術的に研究する世にも珍しいゼミナールだった。所属するゼミ生達も一癖も二癖もある変態ばかり。そんな中、ノーマル人間を自称する主人公は、周囲のアブノーマルな人々のプレッシャーに翻弄されつつ、意中の男性(変態)への想いを募らせる。さて、彼女の恋の行方は如何に?
 上記の概要を読めば分かる通り、はっきり言ってまともなアニメではない。変態を自認するゼミ生達が繰り広げる放送コードギリギリの奇行に対して、一般人の主人公(と視聴者)が慌てふためく様を見て嘲笑うのが本作の趣旨である。ブラックジョークやグロテスクなネタが満載で、身の毛がよだつような生理的嫌悪を喚起する。特に、マゾヒズム的な嗜好は耐性がなければ吐き気さえ覚えるだろう。そのため、人を選ぶを通り越して、最早、選ばれた人しか付いて行けない俗に言う「カルトムービー」である。いくら深夜とは言え、地上波で放送する意味が全く分からない。こういうマニアックな作品のために、OVAやOADというメディアが存在するのだと思うが。
 もっとも、怪しげなタイトルの時点で普通の人は見ないと思うが、残念なことに主人公のCVは人気声優の花澤香菜なのである。そのため、彼女目当てで視聴してしまった被害者が結構な数で存在すると思われる。それを営業的な判断でやっているとすれば悪質だ。かつて、ホラー映画が新人アイドルの登竜門だった時期があるが、その頃の過酷な状況を思い出す。アイドルファンを貫くのも大変だ。心から同情する。

・欠点


 本作の抱える欠点、いや、あえて「欠陥」と書かせて頂くが、それはあらゆる要素が「中途半端」なことである。本作は偏執狂的なカルトムービーなのだから、どこか一箇所でもマニアックに突き抜けていないといけないのだが、いずれも壁まで後数歩の部分で止まっている。すると、作品としてのアイデンティティまでもが中途半端になり、存在意義が疑われるという事態が発生する。
 まず、コメディーとしての問題点を挙げたい。一言で言うと、「笑えない」のである。それは、ネタがブラック過ぎてドン引きするなどといった問題以前の根本的な「ギャグのつまらなさ」だ。例えば、第二話で闇鍋ネタが出てくる。闇鍋と言えば、ギャグ漫画では定番中の定番ネタで、誰が使ってもそれなりに面白い話が出来上がる物だ。しかも、本作の登場人物はモラルが欠落した変態ばかりなのだから、どんなに壮絶な物が完成するかと思えば、これがまぁ、つまらない。常人が想像できる程度のボケしかなく、それに対するツッコミも弱々しい。本作は全体を通してそんなノリで、観客を笑わせようとする意識が極めて弱い。結局、ブラックな部分を強調することばかりに捉われて、肝心の話の面白さがそこらの少年漫画以下なのである。
 ネタがつまらない原因の一つには、主人公の処遇の問題も挙げられる。彼女はゼミ生の中で唯一のノーマルな人間であり、視聴者とのリンク役を担っている。ということは、コメディーのセオリーを考えると、もっと彼女に大暴れしてもらう必要がある。ツッコミを担当するのはもちろんのこと、ゼミ生の変態行為に対して大袈裟なほどギャーギャー騒ぎ立て、そのリアクションで笑いを誘わなければならない。ところが、本作の主人公はゼミ生の一人に片思いしているという設定のせいで、基本的に内気で大人しく、変態行為を黙って見過ごす(もしくは受け入れる)ことが多い。その結果、笑えない・面白くない・気持ちの悪い変態行為を、ツッコミなしで延々と視聴者に垂れ流すという地獄のような光景が生まれるのである。それはもう、コメディー以前に作品として成立しているのかというレベルである。

・変態


 上記の問題と関連するが、笑えないのは変態性が中途半端だからとも言える。ネット上では、変態が極まり、あるラインを超越した者を「神」と称したりする。例えば、盗撮や薬物で何度も逮捕された某お笑いタレントがその代表だ。アニメで言うなら、マザコンでシスコンでロリコンという夢の三重奏を達成した『機動戦士ガンダム』のシャアや、年端の行かない少女を追い回した挙句、無人の城で一緒に暮らすことを強要した『天空の城ラピュタ』のムスカなど。本作に登場する自称変態達は彼らの足元にも及ばない。その一番の差は意図的であるか否かであろう。先の作品の変態は、稀代の天才監督達が自らの心の内に存在する異常性を凶暴なまでに激しい情熱で作品の中に吐き出した物だ。一方、本作の変態は頭の中だけで考えたコメディーの1ピースに過ぎない。要するに、想像力の限界なのである。常人が決して辿り着けない神の領域にまで達して、初めてエンターテインメントになり得る。『ジョジョの奇妙な冒険』の台詞にもあるではないか。「おれたちにできない事を平然とやってのけるッ! そこにシビれる! あこがれるゥ!」と。
 変態性が中途半端だとどうなるか、それは単に社会のモラルに逆らっただけの小悪党になるということである。つまり、チンピラだということだ。劇中において、彼らが研究と称して行っているパワハラ・セクハラの数々は、変態行為でも何でもなくただの「犯罪」である。基本的に、本作の作者は「変態だから」反社会的な行動を取ってもいいと開き直っている節がある。そんなわけはない。世の中には法に触れない程度に性的倒錯を楽しんでいる人は幾らでもいる。むしろ、モラルという枷があるからこそ、かえって興奮するのである。しかし、本作はそういった人々をもひっくるめて、一つの「変態」というジャンルに押し込んでいる。よって、本作全体に漂う不快感の正体は、グロ描写やマゾヒズムなどではなく、「変態=犯罪者」だと決めつけている作者のレイシズムである。
 ちなみに、劇中に登場する変態教授は、ゲームクリエイターの堀井雄二と故・飯野賢治に酷似している。どういう神経をしていたら、そんな失礼極まりないことができるのか。それも「変態だから」名誉棄損もOKと開き直るつもりなのだろうか。

・学問


 結局、何が一番の問題かと言うと「真面目に研究していない」、これに尽きる。登場人物の言動からは人間の心理を学術的に研究しようという意思が全く見えず、ただ本能の赴くまま行動しているに過ぎない。上記の通り、彼らの行っていることはただの「犯罪」である。その犯罪を犯罪に見せないようにするために、「これはゼミの課題研究の一環です」というエクスキューズを用意しているわけだ。となると、その研究のプロセスは学術的に正確でなければならないのだが、本作における研究描写は極めて適当である。テーマ・疑問・仮説・実証・結論・引用といったレポート作成時の基本的なアウトラインも守られていない。専門用語は数えるほどしか出てこないし、例の如く間違っている。そもそも、変ゼミが何学部に所属するのかすら分からない。この程度の知識で「犯罪を学問にすり替えられる」と思っているのなら、本気で常識を疑う。
 おそらく、作者は「特殊な性癖をお堅い大学で研究する馬鹿馬鹿しさ」を狙ったのだろうが、そういった人間の異常性を研究する学問は「すでに存在する」のである。そして、それらの学術書で取り上げられているケーススタディは、本作の何百倍も面白い。異常心理学の元々の名前が「変態心理学」だったことなど、作者は露とも知らないだろう。もし、知っていたら、こんな作品は恥ずかしくて世に発表できないはずだ。劇中で謂れなき差別を受けがちな変態達を擁護しているが、ふざけるなと。一番コケにしているのはお前らだと。顔を洗って出直してこい。以上。

・総論


 カルトムービーの皮を被った中途半端なゴミ。花澤さん、仕事選ぼうよ。

星:★★★★★★★★★★(-10個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 23:06 |  ★★★★★★★★★★ |   |   |  page top ↑
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