『アキカン!』

良い意味で馬鹿。

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アキカン! - Wikipedia
アキカン!とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2009年。藍上陸著のライトノベル『アキカン!』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は日巻裕二。アニメーション制作はブレインズ・ベース。自動販売機で買った缶ジュースに口を付けると、何と缶が女の子に変身した! そこから始まる落ち物系ファンタジーラブコメ。当時、開局したばかりのBS11が初めて独占放送した記念すべきタイトルである。何で、この作品が?

・B級


 紛うことなき「馬鹿アニメ」である。ジュースの空き缶が女の子になるという設定の馬鹿馬鹿しさ。アルミ缶とスチール缶がジュース業界の覇権を懸けて戦うというストーリーの馬鹿馬鹿しさ。何より、主人公が良い意味で突き抜けた馬鹿である。面白いかどうかは別にして、彼の言動は最初から最後まで一貫してハチャメチャなので、常に明るく楽しい雰囲気が保たれている。その一方でシリアスな部分はちゃんとシリアスだし、ほろりと泣かせる要素もある。作風の割りにはパロディーネタが少ないし、下ネタもちゃんと笑えるように作られている。本作はその辺りのバランス感覚が非常に良い。ただの軽薄な馬鹿騒ぎでは終わらせず、ちゃんとコメディーの原則に則っているのは好感が持てる。それゆえ、この手の作品を良識ぶって頭ごなしに批判しても、「空気読め」と言われて終了だろう。あまり深く考えず、お馬鹿なキャラクターのお馬鹿な行動を笑い飛ばして楽しむべき作品である。
 明確な欠点は、やはり作画だろうか。2009年の作品なのに、まるで2000年代初頭のアダルトアニメレベルの作画力である。人物デッサンや背景パースが狂っているだけならまだしも、全体的に塗りが平坦なので非常に安っぽい印象を受ける。それ以前にキャラクターデザイン自体にも問題があり、原作画を手がけた鈴平ひろ特有の可愛らしいキャラクター像を再現できていないのは苦しい。純粋なギャグアニメならこれでいいのだが、一応、本作のジャンルは美少女萌えアニメになるはずだ。ただ、その欠点を補うかのように音響面が頑張ってくれている。声優陣の熱演が、一歩間違えればどうしようもない駄作になりがちな作品を、笑って楽しめるB級作品に押し上げている(ただし、ラスボス役の中島愛は除く)。OP曲・ED曲もバラエティー豊かで良い。

・萌えキャラ


 「結局、あたしなんて用が済んだらそれで終わり。もう要らない。後はただゴミになるだけ。ただ、愛されたいだけなのに。誰か、あたしを……」
 ある日突然、自動販売機で買った缶ジュースが可愛い女の子に変身し、冴えない主人公と一緒に暮らすことになった。これは、いわゆる「落ち物ラブコメ」の雛形を意図的にそのまま踏襲した物である。しかし、本作と他作品との決定的な差異は、ヒロインは本来飲んだら捨てられる空き缶であり、彼女はそれを十分に自覚していることである。冒頭の台詞にある通り、彼女は自分自身の存在の儚さを嘆き、持ち主に捨てられることに強い恐怖を覚えている。つまり、彼女は「物」であり、明確に「人間ではない」。そのため、主人公のヒロインに対する愛情も、一人の女性に対する恋愛感情ではなく、身近な道具に対する愛着と言った方が正しい物になっている。これはなかなか斬新なアイデアであろう。
 もっとも、画面上では両者の違いは分かり難いのだが、その分、周到にヒントを用意している。それが幼馴染ヒロインと彼女の有するアキカンである。二人は共に女性であり、一般的な男女の恋愛感情は持ち合わせていないのだが、それ以上に強い絆で結ばれている。しかも、彼女は実家が大金持ちにも係らず倹約家で、人一倍、物を大切にする性格なので、より感覚が掴み易い。こういった道具に対する愛着で思い出すのはアニメ『ローゼンメイデン』であるが、本作はそれと構造がよく似ており、人に使われることによって存在意義が生まれる道具の幸せとは何かがテーマになっている。お馬鹿なノリにばかり目を奪われがちだが、このように本作の作品としての器は意外と深い。
 一方、本作の設定は、上記とは別にもう一つの穿った捉え方をすることができる。それは萌えアニメに対するアンチテーゼである。冒頭の台詞を聞いて、何かがチクリと胸に突き刺さった人も少なからずいるだろう。つまり、アニメのヒロインに対して激しい愛情を注ぎ、「俺の嫁」を自称しながらも新しいアニメが始まるや否や目移りし、三ヶ月ごとに嫁を次から次へと替えていく昨今のアニメオタクに対するアイロニーである。彼らにとって、ヒロインは飲み終わった空き缶と同レベルなのだ。本作の主人公のように「一生、側にいろ」と胸を張って言える人がどれだけいるだろうか。

・第一部


 本作は第一話~第六話と第七話~第十二話の二部構成になっている。第一部は、ある程度原作に沿った物語だ。ある日、ガーリッシュ(女の子化)したスチール缶の「アキカン」のオーナーになった男子高校生の主人公の元へ、経済産業省の役人が現れて、ジュース缶の規格を統一するためにスチール缶とアルミ缶が戦う「アキカンエレクト」の開催を告げる。一方、主人公のことが大好きな幼馴染みヒロインも、またアルミ缶のアキカンのオーナーになっていた。無益な戦いを望まない二人だったが、主人公とアキカンが仲良くしているのを見て、嫉妬に駆られた幼馴染みが思わず自分のアキカンをけしかけてしまう。激しい戦いを繰り広げる二人のアキカン。そこへ主人公と幼馴染が駆け付け、体を張って二人を仲裁し、再び平和な日常が戻る。
 理由は馬鹿らしいがバトルは熱い。制作スタッフもよく分かっているが、この手のドタバタ話は作り手がほんの少しでも照れを見せると途端に白けてしまう物だ。その辺りのさじ加減が本作は絶妙である。ただ、少し話が狭いか。結局は幼馴染みの嫉妬物語でしかなく、ジュース業界の覇権を懸けた争いという設定を生かし切ったとは言い難い。だが、狭くても深みがある。それは主人公の主張が全くブレないからだ。過去の事件のトラウマで争い事に嫌悪感を持っている主人公は、他人の意見に流されることなく、最初から最後まで一貫してアキカン同士の戦いを否定し続ける。主人公は馬鹿だが、良い奴である。こういった人間は信頼できる。つまり、視聴者が安心して心を寄せられるということだ。そこが普段は逃げ回っているのに、大事な場面にだけ現れて美味しいところを奪って行く「巻き込まれ型主人公」との大きな違いである。

・第二部


 第七話~第十話は、主人公の周辺で巻き起こるのんびりとした一話完結型エピソードである。野球回に水着回にメイド回に日常回とラインナップが非常に分かり易い。第六話で最終回のような盛り上がりを見せた後では、ほとんど後日談か外伝かというような扱いになっている。ファンサービスだと思えば何も問題はないのだが、せっかくの1クールアニメなのに少々もったいない気もする。設定を重視するなら、原作のように数々の個性的な缶ジュースのアキカンが登場して、ヒロイン達と一悶着を起こす話の方が面白いだろう。ただし、それをやると取り返しの付かない失敗をやらかすリスクが飛躍的に高くなる。正直な話、本作の制作スタッフが複数ヒロインを上手く操れるとは考え難い。それなら、何も事件が起こらない平凡な日常話の方がいいという意見も分からなくはない。
 第十一話・第十二話は、本作を締めくくるオリジナルストーリーである。アキカンエレクトのルールを無視して、アルミ缶とスチール缶の両方を狙う「最強のアキカン」が現れ、穏やかな日々を破壊する。そこで、アキカン達が協力して彼女に戦いを挑む……という非常にベタな物語だ。それならそれで、第三勢力である瓶やペットボトルのアキカンにすればいいのにと感じるのは贅沢だろうか? なお、彼女は関西圏でよく飲まれているミックスジュースのアキカンである。本作には、缶入りミックスジュースを発売している関西資本の飲料会社が協賛しており、劇中で主人公達があの有名なCMソングを歌う。関西人及び阪神タイガースファンなら、それだけでニヤリとするだろう。この馬鹿馬鹿しさが美しい。こういったタイアップは大歓迎なのでぜひ続けて欲しい。

・総論


 緩い作画とお馬鹿なノリのせいで勘違いされがちだが、中身はちゃんとツボを押さえたB級コメディー作品である。見る人を選ぶものの、少なくともクソアニメではない。本来なら喜ぶべきことのはずだが、ちょっとガッカリしているのはなぜだろう。

星:☆☆(2個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:10 |  ☆☆ |   |   |  page top ↑
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