『夜明け前より瑠璃色な ~Crescent Love~』

圧巻。

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夜明け前より瑠璃色な - Wikipedia
夜明け前より瑠璃色なとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2006年。オーガスト制作の十八禁美少女ゲーム『夜明け前より瑠璃色な』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は太田雅彦。アニメーション制作は童夢。地球に留学することになった月の国の姫が、ホームステイ先の男子と恋に落ちるSFラブコメディー。略称は「けよりな」だったり「よあけな」だったり。ただし、アニメ版に限っては「キャベツ」で通じる。

・作画


 本作は『MUSASHI -GUN道-』『ガンドレス』『学園都市ヴァラノワール』などと並んで「伝説のクソアニメ」と称されている作品の一つである。その理由は主に作画面での不手際だ。特に、第三話は全面に渡って見るも無残に崩壊しており、いわゆる「キャベツ」を引き起こしている。有名なので詳しく解説する必要はないだろうが、一応、知らない人のために説明すると、「キャベツ」とはヒロインの料理しようとしたキャベツがどう見ても緑色のボールにしか見えないという作画崩壊の一例である。この回は、他にもデッサンの歪みやキャラクターの別人化、背景の簡略化などが頻発し、まともな画が一つもないというとんでもないレベルである。そんな物を売り物にしてはいけないと思ったら、案の定、DVDでは修正されていた。(そのため、キャベツ版の方が実はレアだったりする)
 と言っても、その第三話だけが特別酷いわけではなく、第一話から全体的に作画は低品質である。見ている内に慣れるとは言え、女の子の可愛さが最優先の美少女アニメで、これはさすがにキツイ。第三話は明らかに外注に丸投げしたことが作画崩壊の原因だが、他は一体どういう理由だろう。「なぜ、アニメが作画崩壊するのか?」をまとめたWEBサイトは幾らでもあるので、詳しくはそちらを参考にして頂くとして、本作に限ってはキャラクターデザインを務めた総作画監督の単純な実力不足にありそうだ。デザインの時点で不安定だし、引き画だけでなくUP画も崩れている=修正する余裕がないということである。予算がなくて優秀なスタッフを揃えられず、その上、リーダーまでもが経験不足だったら、どんなプロジェクトでもこうなるのはある意味自明のことだ。
 もっとも、作画が悪いからと言って、すなわちアニメが悪くなる物ではない。本ブログで評価の高い『N・H・Kにようこそ』や『極上生徒会』でも、本作に匹敵するような作画崩壊回が存在する。要は、欠点を吹き飛ばすほど設定やストーリーが面白ければいいのだ。では、本作は本当に作画が悪いだけのアニメなのだろうか。

・ギャグ


 実は、作画など些細な問題に思えるほど重大な欠点が本作には存在する。それが劇中に飽きるほど挿入される「ギャグシーン」の数々である。どのシーンも信じられないほどつまらないのは、まぁ、「昔のアニメってこんなのだったよね」とノスタルジーを喚起して良い……いや、全然良くないが、それはこの際不問にして、問題はそれらのシーンが「原作には存在しない」ことである。原作ゲームは、まるでゆるい日常系アニメのような起伏の少ない温和な物語であり(それもどうかと思うが)、ラブコメとも言い難い普通の普通の恋愛ドラマである。ところが、本作はそれを勝手に「ギャグアニメ」に変換しているのである。つまり、「ジャンル変更」だ。ギャグシーンを入れるためだけに専用のギャグキャラをわざわざ用意し、既存のキャラクターの性格も変えているほど。例えば、第四話は部屋のゴキブリを退治するために、お姫様のヒロインが武装して戦いを挑むというストーリーだ。ヒロインはそういうキャラではないし、武器を平気で所持できる世界観でもない。何より、爆発で壊れた物が簡単に直るようなギャグワールドではない。この時点で原作レイプだが、ここまでやって付け加えたギャグがつまらないのだから、最早どうしようもない。
 なぜ、このようなことになっているのだろうか。ジャンル自体が変わっているのだから、脚本家の暴走という理由だけでは説明が付かない。おそらく、監督やら製作陣やらも一緒になって「この方がいい」と会議決定したのだろう。彼らが考えるのはDVDの売り上げのことだから、商売的に原作のような薄味の恋愛ドラマではダメだと判断したということだ。はっきり言って、意味が分からない。あまりにも想像力がなさ過ぎる。事実、本作の売り上げは散々たる物なのだから、笑えない。

・ストーリー


 「月の国のお姫様が主人公の家でホームステイする」という荒唐無稽な初期設定で本作は幕を開ける。ホームステイって……王族や皇族が海外留学するのは現代でもよくある話だが、当然、逗留先は厳選される。いくらフィクションとは言え、両親が不在で従姉が保護者というギャルゲー特有の複雑な家庭環境の家が選ばれるとは到底考え難い。しかも、なぜか護衛が不在で、代わりにメイドを連れて行くという意味不明さ。逆だ。王族の人間にSPが付かないはずがないし、身の回りの世話をする者を連れて行ったら留学する意味がない。まともな創作物なら、お付きの者を腕に覚えのある武装メイド忍者にでもするだろう。また、ホームステイ先に同い年の男性がいるのも解せない。大方の予想通り、主人公とヒロインが恋仲になり、慌てて後から恋愛禁止を通達するという理不尽っぷり。これは今回の計画の長である主人公の従姉の重大な責任問題であろう。実際、物語の終盤ではそういう話になるが、従姉の処遇については爽やかにスルーされる。クソアニメに多くを求めてはいけない。
 そして、第五話で二人の過去が明かされると、第六話で互いを意識し合うようになり、第七話で早くも告白して恋人同士になる。以後、スイッチの入った主人公が暴走する。「俺は本気だ!」「覚悟がある!」などと威勢の良い啖呵を切って、周囲に二人の交際を認めさせようとするのである。いや、待て。相手は一国の王女だ。青春の爆発だか若気の至りだか愛は盲目だか知らないが、もう少し考えてから発言しろ。王女も王女で行動が軽率過ぎる。これでは後先考えずに彼女を妊娠させて、親に認められずに駆け落ちするヤンキーカップルと同じである。中高生向け青春ドラマならともかく、基本的に成人であるエロゲー原作アニメの視聴者が、この手のアホガキに共感するはずがなかろう。もっとも、馬鹿なのは主人公達だけではなく、周囲の人々も当たり前のように二人の恋路を応援するので頭が痛くなる。クソアニメに多くを求めてはいけない。
 案の定、主人公の軽はずみな行動は大問題を引き起こし、反地球主義の先鋒であるヒロインの婚約者の暗躍もあって、月と地球との「戦争」直前にまで発展する。傾国の馬鹿か。これで本当に開戦したら、主人公の罪は計り知れない。そのため、責任を感じた主人公とヒロインは、月の国王(ヒロインの父親。元平民)に釈明するため月へ向かう。ちなみに、「戦争で傷付いた人々が生み出した思念体」という謎の存在が二人の仲を引き裂こうとするエピソードがあるのだが、あってもなくても大して本筋に関係ないので省略する。クソアニメに多くを求めてはいけない。

・最終回


 主人公とヒロインは国王に接見して、二人の交際と戦争の回避と月と地球の国交正常化を訴える。どれか一つにしろよ。そして、事前に打ち合わせしたとしか思えない演劇風の熱い説得により、国王はついに心を改める。だが、この一連の流れは妙に不自然である。なぜかと考えると、それはラスボスであるはずの国王の思考があまりにも杜撰で無茶苦茶だからだ。つい二話前に亡き妻との思い出を追想して若者の恋に理解を示したはずなのに、いつの間にか主人公達の恋愛反対派に戻っている。ヒロインの婚約者のことを嫌っているはずなのに、彼の口車に乗って軍隊を動かし、いつの間にか反地球を自分の思想にしている。世の中にはいろいろなファンタジー作品があるが、ここまで頭の悪いラスボスにはなかなかお目にかかれない。しかも、生まれながらの王族ならまだしも、彼は先代女王の婿で元平民なのだ。この程度の能力でよくも玉座に座り続けられた物である。まさに、神輿は軽くて何とやらという奴か。
 その後、ヒロインの婚約者がクーデターを起こし、新型兵器で地球を焼き払おうとするも、主人公の仲間の活躍で捕えられ、連行される時に撃った銃弾が主人公の胸に突き刺さり、誰もが死んだと思ったところへ突然謎の光が降り注ぎ、生き返り、主人公の父親が宇宙人の船で駆け付ける。この用意していた伏線を五分ぐらいで一気に消化する様は圧巻である。普通のアニメでは絶対にできない。その前にまずやらない。当たり前だが。結局、作画、脚本、演出と最初から最後まで徹頭徹尾、ダメなアニメだった。むしろ、作画が悪いことで笑い話になったが、作画が良ければ内容面でもっと叩かれていただろう。監督は総作画監督に感謝しなければならない。

・総論


 伝説はやはり伝説だった。「俺をただ作画が悪いだけのアニメと思うなよ!」という叫び声がどこからか聞こえてきそうだ。点数を付けることさえ恐れ多い、まさに神の如き存在。本項のようないい加減なブログでは扱ってはいけない題材である。

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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 23:17 |  未分類 |   |   |  page top ↑
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