『苺ましまろ』

かわいいは、正義!

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苺ましまろ - Wikipedia
苺ましまろとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2005年。ばらスィー著の漫画『苺ましまろ』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は佐藤卓哉。アニメーション制作は童夢。個性的な女子小学生四人を中心にした日常系ギャグアニメ。その愛くるしさと親しみやすさを兼ね備えた作風により、ネット上で様々なムーブメントを生み出し、中でも本作のキャプ画像や映像を用いたコラージュ作品は現在でも人気がある。テレビアニメ放送後にOVAが二回作られているが、それぞれ画風が異なるため、見比べてみると面白い。

・ロリアニメ


 主役五人の内、四人が可愛らしい女子小学生。そのため、一般的には、幼児性愛の傾向を持つ成人男性が好んで視聴するいわゆる「ロリアニメ」として認識されている作品である。どんなにコアなファンでも、このレッテルに反論する人はいないだろう。ただ、それだけで終わらせるのには少々疑問を覚える作品であるのも事実だ。例えば、『こどものじかん』や『ロウきゅーぶ!』のようなあからさまなロリアニメとは明らかに一線を画している。なぜだろうか? 両者の違いを挙げることは一見簡単そうに見えて、非常に難しい。そもそも、成人男性向けのアニメなのに小学生が主人公な時点でおかしいのだ。もっとはっきり言うと「異常」である。それゆえ、両者の違いを挙げようと思えば、異常性の中に正常性を見つけて優劣を付けるというとんでもなく不毛な行為にならざるを得ない。
 まず、一番初めに留意しなければならないことは、本作が「ギャグアニメ」だということである。もちろん、他のアニメでもギャグは重視されているのだが、それはあくまでプロセスの一つに過ぎない。しかし、本作の場合は、シュールなボケと的確なツッコミと絶妙な間の演出で視聴者を笑わせること自体が目的なのである。特に、美羽というキャラクターは人を笑わせるのが趣味で、事あるごとに友人達に自作のネタを披露する。要は「ネタ見せ」である。そのため、作者が思い付いたギャグを的確に表現できるキャラクターでさえあれば、登場人物が小学生である必要性はあまりない。たまたま作者の好みが小学生だったというだけだ。ただ、逆説的かもしれないが、中心的なテーマと離れているからこそ、キャラクターを可愛く描くことに注力することができるという利点があるかもしれない。
 一方、ギャグに特化したことで幾つかの弊害も生まれている。作品の性質上、ボケまくって話を進めないといけない狂言回し役の美羽にばかり負担がかかり、そのせいで「うざキャラ」と捉えられることが往々にしてあるのだ。一応、第五話などでストーリー的なフォローを入れているのだが、どうしても賛否が分かれる結果になってしまっている。また、漫画では気にならないアンモラルな不条理ネタ(特に笹塚関連)が、映像だとどうしても引っかかる。しかも、アニメ版は穏やかな日常描写の方に重きを置いているため、そういったブラックな側面が明らかにが浮いてしまっている。ここも賛否がくっきりと分かれるポイントだろう。

・キャラクター


 本作のキャラクターは小学六年生の常識人の千佳、彼女の隣人でトラブルメイカーの美羽、一つ学年が下がり、内気で大人しい小学五年生の茉莉、彼女のクラスメイトで英語が話せない英国人のアナの個性的な四人が主要メンバーである。ただし、こうやって人物設定だけを並べてみてもあまり意味がない。上記の通り、本作はネタ見せ系のギャグアニメであり、この四人を使って如何に面白いネタを生み出せるかが趣旨なのだから。テンプレキャラを並べて、その特殊な設定だけで笑いを生もうとする他アニメとは訳が違う。どちらかと言うとシチュエーションコメディーに近いのかもしれない。
 ただ、その中でも、もう一人の主役である伸恵だけは異彩を放っている。彼女は、ダウナーな性格の女子高生(アニメ版では道徳的な観点から短大生に変更)で千佳の姉でもある。同性愛と幼児性愛的な傾向があり、妹の友達を成人男性的な視線で愛でている。一方、彼女達からも「お姉ちゃん」「お姉様」と呼ばれ慕われている。この設定だけ見ても分かる通り、彼女は作者及び視聴者の分身的なキャラクターである。可愛らしい幼女を目と鼻の先の距離で静かに見守るという幼児性愛者にとっての理想的な環境だ。だが、女子小学生グループの中に男性がいると不自然な光景になってしまうため、性別を女性に変換している。ある意味、打算的で嫌らしい手法なのだが、これが意外と良い効果を生んでいる。つまり、比較対象としての成人女性がすぐ側にいることで、子供達がより子供らしく生き生きとして見えるのだ。そういう意味で言うと、短大生に変更されたアニメ版の方が作品としての質は高い。
 本作の特徴の一つとして、彼女達の来ている普段着が非常にオシャレなことが挙げられる。コーディネートと色彩感覚が良く、細かい装飾もしっかりと書き込まれている。しかも、各回ごとに服装が変わるという念の入れ様だ。「子供服のカタログからコピーしただけ」と言われれば確かにそうなのだが、それすらできていないアニメが多い中、本作のセンスの良さは際立っている。何しろ、基本的にサブカルチャーにおけるヒロインの私服はダサい。最近は女性が業界に進出して幾らか改善されたようだが、かつて男性スタッフだけで作っていたギャルゲーのヒロインなど酷い物だ(ちなみに、女性スタッフが中心なのに『けいおん!』の私服は極めてダサい)。予算の少ない男性向け深夜アニメだからと言って、こういう細かい点でも手を抜かないのは素晴らしい。

・リアリティ


 ここまで書いておいて何だが、実際のところ、彼女達はあまり「可愛くない」。いきなり存在自体を否定するような発言をして申し訳ないが、ご容赦されたし。もちろん、服装も含めて容姿は非常に可愛らしいのだが、問題は中身である。それと言うのも、彼女達は非常に「自由」なのだ。ギャグアニメというジャンルが示す通り、常にアグレッシブで口もマナーも悪く、取っ組み合いのケンカは日常茶飯事。小学六年生なのにダイエットのことを気にしたり、当たり前のように携帯電話を使いこなしたり、人目をはばからずトイレに行ったりと、男性アニメファンが想像するような「子供らしくて可愛い」態度はあまり取らない。言い換えると、彼女達は誰にも「媚びていない」のである。それは視聴者の分身である伸恵に対しても同様で、慕ってはいるが、だからと言って彼女がいなければ何もできないというわけではない。彼女達は伸恵がいてもいなくても好き勝手に動き回り、一方の伸恵はそれを微笑ましく見守りつつ、こっそりと裏で支えるという構図に徹している。(ただし、茉莉だけは意図的に媚びたキャラクターに設定している。にも係らず、四人の中で彼女が一番不人気なのが面白い)
 話は少し逸れるが、本作のもう一つのジャンルは「日常系アニメ」である。それも安全な場所でダラダラと過ごすだけの似非日常系ではなく、小学生が日々過ごしている生活をそのまま一部分だけ切り取ったような情景を描いている。物語の舞台は極めて狭く、たまに外出するだけで後はほとんどが自宅と学校。そこにおいても、何らかの特別なイベントは起こらず、多少の誇張はあるにしても普通の小学生が普通に経験するようなことばかりだ。演出的にも背景や小物を丁寧に描き、BGMは場面転換時ぐらいにしか流れない。つまり、本作が重視している物は、ヒロイン達がまるでそこに存在しているかのような「リアリティ」である。生活感や空気感などと置き換えてもいい。大人が望む理想の子供像を創造するのではなく、まず、現実の子供をあるがままに描き、その上で良い部分を強調するという創り方。これは本当に子供が好きで、子供をよく観察していないとできないことだ。ロリだの百合だのエロだのは視聴者が後から勝手に想像すればいいのである。もう、この時点で、本作はそこらの商業主義的なロリアニメとは格が違うのである。

・子供


 結局、「子供の可愛さとは何か」という話である。あくまで個人的な意見だが、大きく分けて二種類挙げることができるだろう。一つは「守ってあげたい可愛さ」だ。幼気で弱々しく、見ていて危なっかしい。到底一人では生きて行けず、子供の方からも大人の保護を求めている。それゆえ、視聴者に「俺が付いていてあげないといけない」と思わせる。つまり、父性本能に訴えかけるのである。大半のロリアニメが描いている可愛さはこちらである。それ自体は別におかしくないのだが、一歩間違えるとただ反抗できない相手を弄んでいるだけのパワハラになる危険性を孕んでいる。しかも、昨今はそこに性的な要素まで加えるため、児童ポルノギリギリのどうしようもない状態になっているのはご承知の通りだ。
 そして、もう一つは「わがままな可愛さ」だ。子供は基本的に既成の枠に捉われない存在である。常識やモラルに捕らわれた大人が決してできない行動をいとも容易く行う。それは、一見するとわがままで不快な行為かもしれないが、いつしかそれを微笑ましく思っている自分に気付くだろう。これもまた父性本能の一種である。本作が主に描いているのはこちらの可愛さだ。本作のキャッチコピーは「かわいいは、正義!」である。これは要するに萌え重視という意味だが、そのままの意味で取ることもできる。つまり、可愛いから何をやっても許されるということであり、逆に好き勝手にやっているからこそ可愛いということでもある。
 そして、本作の巧みなところは、後者をベースにしつつ前者も程良く混合していることだ。茉莉というキャラクターもそうだし、前者とは程遠いはずの美羽もそういう面を持っている。一人っ子という家庭環境も影響しているのだろうが、彼女は実は寂しがり屋の甘えん坊で、普段のお調子者な言動はその裏返しでもある。特に伸恵に対しての承認欲求と独占欲は人一倍強く、彼女が他の子を可愛がっていると嫉妬したり、さらに悪ふざけをしたりする。第五話では嫉妬がピークに達して大泣きし、仕方なく伸恵は一緒に添い寝して彼女の本音を聞く。この時の美羽は、どんなロリアニメのどんなキャラクターよりも「可愛い」。

・総論


 これだけの有名作品なのに、意外と『苺ましまろ』フォロワーは少ないように思える。本作好きを公言している作家の作品も、似てる部分はあるがどこか根本的に異なっている。それは子供の可愛さをどこに見るか、言い換えると「どれだけ子供が好きか」の違いだろう。ちなみに、ここで書いたことは、全てOP曲『いちごコンプリート』の歌詞の中で書かれていることである。なるほど、よくできた作品である。

星:☆☆☆☆☆☆☆☆(8個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
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