『Persona4 the Golden ANIMATION』

蛇足。

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ペルソナ4 - Wikipedia
Persona4 the Golden ANIMATIONとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2014年。アトラス制作のPSVitaゲーム『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』のテレビアニメ化作品。全十二話。総監督は岸誠二。監督は田口智久。アニメーション制作はA-1 Pictures。非常に特殊な形態で作られた作品である。詳しくは本文にて。

・完全版


 2008年、PS2で発売された人気PRG『ペルソナ4』に、数々の新要素を追加して再構成した『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』が、四年後の2012年にPSVitaで発売された。メインストーリーは同じだが、新たなキャラクターやイベントなどが追加され、作品の謎により深く迫れるようになっている。いわゆる賛否両論渦巻く「完全版商法」である。そして、本作はその『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』をアニメ化した作品であるが、『ペルソナ4』のアニメ化自体は2011年に『Persona4 the ANIMATION』として行われているため、本作も完全版商法の一翼ということになる。ただし、アニメで完全版と言うと、諸事情でカットされたシーンが追加されているとか、お色気シーンでモザイクが外されているとか、DVDBOXに後日談が収録されているとかを想像すると思うが、本作のそれはちょっと違う。何と『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』という一本のゲームを1クール全十二話で再アニメ化しているのである。『Persona4 the ANIMATION』は2クール全二十六話で、それでも全体的にダイジェスト気味だったのに、そんなことができるのか? 現実的に考えるとできるわけがないのだが、それをかなり強引な手法で行っているのが本作という作品である。
 どうやってそんな無茶なことを行っているのかを簡単に述べるのはかなり大変なので、順を追って説明することにしよう。まず、完全版である『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』には、移植時に追加された新イベントが幾つか存在する。具体的にはバイクイベント、クイズイベント、バンドイベント、スキーイベントなどだ。本作はそれらのイベント一つ一つを三十分のストーリーに構成し直し、時系列に沿って順番に並べることで話を進めている。問題なのは本当に時系列で並べただけなので、ストーリー的な繋がりが一切ないことだ。本作が初見の人は、突然、季節や話が飛んだり、いつの間にか知らない人がメンバーに加わっていたりするように感じるだろう。ミステリー仕立てのメインストーリーを理解するためには、事前に原作ゲームをプレイするか『Persona4 the ANIMATION』を視聴しておかなければならない。その時点で単体の作品としての評価は問題外である。また、追加イベントは基本的に戦闘が絡まない日常話なので、まるでゆるい日常系アニメのような盛り上がりのない平坦な展開が、中盤過ぎまで延々と繰り返されることになる。まさに近年のアニメ史の縮図を見ているようで面白い。
 正直なところ、本作が一つのアニメ作品としての体を成しているとは言い難い。他の作品を参考にしないとメインストーリーが分からないなど言語道断、それならちゃんと独立した外伝だと銘打つべきだろう。では、一方で純粋な外伝・ファンアイテムとしてはどうなのかと問われると、監督が交代している影響もあるのか、前作とはやや雰囲気が異なるため微妙なところだ。シナリオはただの馬鹿騒ぎだし、作画があまり良くないこともあって、ファンの希望に沿えているようには思えない。つまり、蛇足であるということで、その時点で評価は厳しい物になる。

・マリー


 このように非常に特殊な形態で作られたアニメであるが、さらにややこしいことになっているのは、ただイベントを付け足しただけではなく、そこに新しいキャラクターまで増やしているからだ。それゆえ、完全にパラレルワールドの物語になっており、追加イベントが追加イベントでなくなってしまっている(主人公の性格も旧アニメとはやや異なる)。そして、そのキャラクターこそが、本作の最大の目玉要素であるマリーである。
 マリーは主人公達と同年代に見える記憶喪失の少女。強気で口が悪いが、根は純粋で照れ屋という非情に分かり易いテンプレ的な「ツンデレ」である。その性格ゆえに友達が一人もおらず、孤立した日々を送っていたが、主人公達と触れ合うことによって徐々に心を開いて行く。上述した日常イベントの数々は、彼女が友人関係を築き上げて行く過程である。本作のテーマは人間同士の「絆」であり、絆こそが戦いのパワーの源であるという設定なので、そのテーマを補完するための実に分かり易いキャラ造形である。逆に、分かり易過ぎて非常に軽い印象を受ける。他の登場人物が人間的な深みを出そうと頑張っているのに比べて、一人だけ取って付けられたような記号的アニメキャラである。アバンタイトルで中二病的なポエムを毎回流すのもくどい。これは意見が分かれるかもしれないが、CVの花澤香菜の演技も拙く、あまり可愛いとは言い難いキャラクターである。
 ストーリー上の役割を書くと、これまた何の捻りもなく、実は敵の一員である。正確に書くと、世界を混乱に陥れようとした神の分身のような存在、要は「黒幕」である。一体、彼女は本作の何人目の黒幕なのだろうか。少し数えてみる。最初に主人公達に掴まったのはアイドルオタクのストーカーで、その次が模倣犯の学生。やがて、運送業の男性が菜々子達をテレビの中に入れていたことが明らかになるが、実際に殺人を犯していたのは主人公達に近い某人物だった。だが、マヨナカテレビを作り世界に霧を発生させていたのはアメノサギリという古き神であり、それさえもある神の下僕に過ぎなかった。そして、今回のマリーはその神の化身ということで、実に「六人目」の黒幕である。何だそれは。ミステリーとして考えるともうどうしようもない馬鹿設定なのだが、ゲームとして考えるとそれぞれがマルチエンディングの分岐点になるので、これでも許されるのかもしれない。ただし、本作はアニメ作品であるため、ジャンル的には前者に該当する。つまり、どうしようもないのである。結局、彼女の存在は設定を補完するつもりが、かえって作品の質を下げただけであった。彼女がいなければ他のメンバーの活躍ももっと描けたわけで、旧アニメの『Persona4 the ANIMATION』が、どれだけ良いバランスで作られていたかということが再確認できただけである。

・真実


 本作のメインテーマは「絆」だが、それとは別にもう一つの裏テーマが存在する。それが「真実」である。人間、誰しも虚飾を厭い真実を知りたがる物である。例えば、政治の裏側だとか芸能人のプライベートだとか手品のタネ明かしだとか。しかし、その一方で真実とは常に残酷であることも、これまでの長い経験上、身を持って知っている。そのため、人々が望む物は、事実に正確な真実ではなく、あくまで自分にとって「都合の良い真実」である。嫌なことに目を瞑ってさえいれば、この冷酷な現実もそれほど悪い物ではない。そこで自ら手を挙げたのが日本を守護する土着の神様である。どの国の神話でもそうなのだが、基本的にアトラスゲームにおける神は異常なまでに「お節介」である。本当に人間のことを想っていて、可愛い彼らの願いを叶えてあげようとするのだが、それがあまりにも極端なのでかえって足を引っ張ってしまうという困った存在だ。本作で言うと、お節介な神が人間のためにしたことは、真実を覆い隠せるように白い霧で物理的に世界を満たし、マヨナカテレビで都合の良い真実だけを見せてあげるという物。もう無茶苦茶である。だが、無慈悲な現実の前に絶望した事件の真犯人達はそれを良しとし、霧の中に閉じ籠った。街の人々はただその現実を受け入れ、訳も分からず怖がった。一方、主人公達だけはそれを良しとせず、何人黒幕がいようとも、あくまでたった一つの真実だけを追い求めた。だからこそ、最終回で真の黒幕と対峙することができた。それが本作のもう一つのメインストーリーである。
 とまぁ、こうやってテーマ的に考えると申し分ないのだが、現実的に考えると「元凶は神様でした」という結論がはたして真実と言えるのかどうかという単純な疑問が残る。それは非常に宗教的な「救い」の構造ではないのだろうか。悪いのは自分でも他人でもない、この世界を作った神様である。だから、何も気に病む必要はないし、努力する必要もない。ゲームだから仕方ないとは言え、こういう現実逃避的な結論に辿り着いてしまったのは至極残念である。しかも、その真実は、本作のような外伝や最終回DVD付属の特別版に収録されているとなると、それはもう如何な物か。「真実を知らなければならない。だから、お布施しろ」となり、どこの新興宗教かという話になる。これが許されるなら、幾らでもミステリーをエスカレートすることができるだろう。攻略本の袋とじの中に真実が書かれているとか、聖地巡礼バスツアーの行程中に明かされるとか。まさに、完全版商法ならぬ「真実商法」の先駆けとならないことを祈るばかりである。

・総論


 作品単体で考えると、これはもう紛れもないクソアニメである。ただ、単体で評価していいのか非常に迷う。ここは大人しく未分類にしておくのが無難だろうか。

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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 19:49 |  未分類 |   |   |  page top ↑
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