『フルメタル・パニック? ふもっふ』

コメディー。

公式サイト
フルメタル・パニック! - Wikipedia
フルメタル・パニック?ふもっふとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2003年。賀東招二著のライトノベル『フルメタル・パニック!』シリーズのテレビアニメ化作品。全十二話。監督は武本康弘。アニメーション制作は京都アニメーション。現役傭兵の主人公が、不慣れな日本の高校で様々な騒動を巻き起こす学園ラブコメ。『フルメタル・パニック!』シリーズの中でもコメディー色の強い短編をアニメ化したため、全編メインストーリーとは関係のない一話完結型のギャグアニメとなっている。内容が内容だけにファンからの批判も少なくないが、純粋なコメディーとしては多くの人々に支持されている。

・概要


 言わずと知れた名作アニメ『フルメタル・パニック!』の外伝的作品が本作である。言わずと知れているのだから解説は必要ないはずなのだが、後の文章との絡みがあるので、今一度、簡潔に説明しておく。『フルメタル・パニック!』とは、冷戦構造が現代まで引き継がれたパラレルワールドの日本を舞台にした学園SFロボットアニメである。主人公の相良宗介は子供の頃から戦場で育ち、今は超国家の傭兵部隊の一員として活躍中という特異なプロフィールを持った少年。性格は、冗談や暗黙の了解も理解できないぐらい真面目で堅物ないわゆる朴念仁。ある日、彼はヒロインの千鳥かなめを護衛するため、同じ高校に生徒として潜入する命令を受ける。しかし、彼はずっと硬派な軍人として育ったため、一般的な日本の常識が分からない。そのため、彼を中心にした予想外の騒動が次々と巻き起こる。と、もちろん、この後はロボットアニメらしいシリアスな展開も発生するのだが、大部分を占める日常パートは基本的にこうである。つまり、一般常識を知らない主人公が現代社会で直面するカルチャーギャップやそのコントラストを楽しむ物だ。劇中では、そんな彼を平和ボケならぬ「戦争ボケ」と称しているが、言い得て妙である。戦争という非日常な空間に慣れ切ってしまった人間から見ると、現実社会の方がファンタジーになり、まるで現代にタイムスリップしてきた古代人のような扱いになる。その少し社会批判を含んだ主客逆転現象こそが本作の最大の魅力である。
 本作は、そういった本編の一部分を抽出して何倍にも誇張した作品である。次回予告で自虐ネタにしている通り、本編のシリアスなロボット戦争アニメの側面を完全に排除し、何のストーリー性も持たない一話完結の学園ラブコメに徹している。宗介のキャラクターも本編より何倍もパワーアップし、最早、日常生活が送ることすら困難なレベルにまでデフォルメ化されている。それは他のキャラクターも同様で、千鳥も本編以上に豪快なツッコミキャラになっている。分かり易く言うと、セルフパロディーの形式に近い。問題はそれが面白いかどうかだが、戦争ボケの人間が日常生活を送るというネタは、オーソドックスではあるが、その分、人類共通の普遍的な面白さがある。もちろん、人の笑いのツボはそれぞれなので一概には言えないが、靴箱に入れられたラブレターを爆弾テロと勘違いし、靴箱ごと爆破処理してしまう高校生がいたら、それは誰がどう考えても滑稽な光景なのである。また、セルフパロディーと言うと、得てして原作視聴者じゃないとキャラクターの相関関係やお約束が分かり難くく、それゆえ、特定の人間にしか理解できない内輪ウケになってしまいがちだが、本作はそういった閉鎖性を極力除外して初見でも分かるように調整しているのは好感が持てる。ちゃんと第一話の冒頭で世界観を簡潔に説明しているのも良い。つまり、それが良いか悪いかは別として、独立したコメディー作品として必要な基本的なことをしっかりとこなしているという意味では、十分評価に値する作品である。

・コメディー


 本作は非常に優秀なコメディー作品である。優秀であるがゆえに、制作の京都アニメーションが新作萌えアニメを発表する度に、「そんな物はいいから、ふもっふの第二期を作ってくれ」と古参のファンに言われ続けることになる。実際、京都アニメーションほどの作画力を持って萌えアニメを作るほど無駄なことはないので、ふもっふとは言わずとも、何らかの一般ウケする作品を制作して欲しいのは本音である。
 ところで、優秀なコメディーと劣悪なコメディーとの差は何だろうか。上記の通り、笑いのツボは人それぞれなので面白さに良し悪しを付けるのは難しいのだが、作品の良し悪しは判別することができる。こういった場合、蓋然的に話しても切りがないので、具体例として第九話『女神の来日(温泉編)』を挙げてみよう。この回は慰安旅行にやってきた旅館の温泉で、男子生徒達が女子生徒の入浴を覗こうと奮闘するというお馬鹿な物語である。ちょうど一つ前の『Persona4 the Golden ANIMATION』でも似たような話があったが、コメディーとしてはよくある定番ネタである。ただ、本作のそれが他作品と異なるのは、男子生徒の覗きを阻止しようとするのが、ヒロイン護衛に命を懸ける戦争ボケの宗介である点だ。現役の傭兵である彼が全力を出せばどうなるか、当然、近代兵器による軍事防衛という話になる。対する男子生徒達もその防衛網を突破するために全力で立ち向かい、結果、たかが覗きなのにまるで戦争映画のような馬鹿馬鹿しくも爽快なアクションムービーになる。もちろん、そのシチュエーション自体も面白いのだが、大事なのはこの「全力」という点にある。ここで「たかが覗きなのに」と制作スタッフが照れを出してしまうと面白くも何ともない。生徒達が死に物狂いで行動しようとしている以上、脚本や演出も全力で戦わなければならない。重火器類はリアルに、防衛も軍事的に正しく、そして、アクションシーンは持てる作画力をフルに生かして、グニグニとキャラクターを動かす。はっきり言って、それはコスト的に見て非常に無駄な行為である。動かない一枚画でも十分に意図は伝わる。だが、そうやって無駄に細部の質を高めることで、制作者の本気度が伝わり、万人に好まれるエンターテイメント性が発生する。それが優秀なコメディーである。第九話以外にも、ちょっとしたミスが原因で細菌兵器が教室中に蔓延する最終回などは、ホラーアニメの『Another』以上の緊迫感に満ちている。それができるのは日本屈指の技術力を持つ京都アニメーションだからであり、だからこそ「そんな物はいいから、ふもっふの第二期を作ってくれ」と言われ続けるのである。
 ちなみに、第九話の演出はかの山本寛である。いろいろと素行に問題のある方だが、こうやってゲストで演出を担当すると『スケッチブック ~full color's~』の第十一話や『ペルソナ ~トリニティ・ソウル~』の第六話など、なかなか面白いコメディー回を作る。何とももったいない話である。

・ラブコメ


 本作はただのコメディーではなく、恋愛コメディー(ラブコメ)である。とは言え、世の創作物を鑑みると、ただのコメディーよりもラブコメの方が多いだろう。その逆もしかりで、ただのラブロマンスよりも喜劇チックなラブコメの方が多い。一見、無関係に思えるそれらがなぜ組み合わされるのか、その理由を考えてみるとなかなか面白い。まず、喜劇を描こうと思ったら、登場人物が何らかの非常識なアクションを起こさなければならない。だが、非常識な人間だけを集めても、コントにはなるかもしれないが喜劇にはならない。そのため、ストーリーとギャグを両立させようと思ったら、常識と非常識が混在する人格を作り出すという困難な作業を行わなければならない。一番簡単なのは酒なりドラッグなりを飲ませて、強制的に人格自体を変えてしまうことだ。実際、深夜アニメでも登場人物がお酒を飲んで酔っ払う話は多い。ただし、近年の表現規制により、未成年者の飲酒は自粛する方向にある(甘酒や謎の神酒に変更されることも)。そこで恋愛である。恋は盲目という慣用句のままに、人は恋に落ちると周りが見えなくなる。どんなに真面目な人でも、いや、真面目であればあるほど恋愛が絡むと人が変わり、非常識な行動を取るようになる。ある意味、合法ドラッグである。そこに面白さが生まれる。また、二人の関係がこの後どうなるか、視聴者の関心はそこに集中するため、一話完結なのに全体的なストーリーを感じるというメリットも生まれる。そういう意味で言うと、恋愛とコメディーの親和性は極めて高い。
 さて、本作は主人公とヒロインのラブコメである。ヒロインの千鳥は、主人公の宗介に対してほのかな恋心を抱いている。もっとも、それは明確に好きだと言える物ではなく、何事においても危なっかしい宗介に対する「放っておけない」という親心が発展した物だ。また、自身の強気な性格もあって、なかなか気持ちを表に出せないでいる。一方、根っからの戦争ボケである宗介は、その生い立ちのせいで恋愛感情その物が認識できない。だが、心の奥では千鳥に対して少なからず好意を抱いており、彼女にだけは他の友人とは明らかに異なる接し方をする。そんな二人の心のすれ違いから生まれる奇妙な男女関係は、実に微笑ましく面白い。まさに誰もが認める正統派ラブコメである。
 ところが、ここ最近、深夜アニメ業界において根っからラブコメと言える作品は数少ない。ヒロインに対する注目が高くなり過ぎて、男性主人公すら余計な物となり、結果的に恋愛その物を忌憚する。その流れを牽引したのが、他ならぬ『らき☆すた』や『けいおん!』を制作した京都アニメーションなのが皮肉なところだ。オリジナル作品の『たまこまーけっと』はラブコメの基本すらできておらず大コケ(映画版は好評だが)、2014年に『甘城ブリリアントパーク』でようやく原点回帰したが、機を逸した感が強く、まさに失われた十年である。やはり、素直にふもっふの第二期を作るべきだったのかもしれない。

・総論


 アニメ史を語る上で見ておかなければならない作品だが、見てしまうと現状に対する哀しみが増すだけなので、見ない方がいいかもしれない。

星:☆☆☆☆☆☆(6個)
関連記事
スポンサーサイト
テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 13:44 |  ☆☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
twitter
検索フォーム
最新記事

全記事一覧
評価別一覧
年代別一覧
掲示板
カテゴリ
リンク
カウンター
RSSリンクの表示



にほんブログ村
PR1
PR2