『戦勇。』

内輪ウケ。

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戦勇。 - Wikipedia
戦勇。とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2013年。春原ロビンソン著の漫画『戦勇。』のテレビアニメ化作品。全二十六話。監督は山本寛。アニメーション制作はOrdet、LIDEN FILMS。自称勇者の主人公が王宮戦士と共に魔王討伐の旅に出るファンタジーコメディー。一話五分のショートアニメである。原作は「ニコニコ静画」に投稿されたデジタル紙芝居風の漫画であり、現在は有料配信されている。

・パロディー


 本作は、中世ヨーロッパ風「剣と魔法」ファンタジーのパロディーアニメである。ただし、日本で言うファンタジーとは、明確にFCゲーム『ドラゴンクエスト』のことを指す。もっと具体的に言うと、その中でも『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』である。海外で同じことをすると、おそらく『アーサー王伝説』や『指輪物語』や『真夏の夜の夢』辺りがネタ元になるだろうから、いくら国民的RPGとは言え、日本におけるこの偏りは異常である。未成熟と言ってもいいかもしれない。やはり、これは1990年より刊行された漫画『ドラゴンクエスト 4コママンガ劇場』シリーズや同作出身の作者による漫画『魔法陣グルグル』の影響が大きいのだろう。特に前者は、アンソロジー本をメジャー化したという点においても功績が大きい。多くのライトノベル作家が、ちょうどその世代に当たるという推測もあながち間違ってはいないだろう。
 ……と、思わず『まおゆう魔王勇者』の項目で書いたことをコピペしてしまったが、要はそういう作品である。本来、正義の味方であるはずの勇者一行が悪人だったり、世界を支配しようとする魔王が善人だったり、そうやってファンタジー世界におけるお約束をあえて覆すことで笑いを誘おうとする一連のシリーズである。本作が放送された2013年前後は、類似のファンタジーコメディーが雨後の筍の如く量産されたため、タイトルだけで区別するのは非常に難しくなっていたが、本作は一話五分のショートアニメという比類なき特徴が存在するため、タイトルさえ覚えれば判断は容易い。そこに「ニコニコ静画でお馴染みの」という枕詞を付ければ完璧である。たったこれだけで視聴意欲が根こそぎ吹き飛んでしまうから素晴らしい。
 例の如く、内容の前に現実的な問題を処理しておくと、一話五分、主題歌や前回のあらすじなどを除けば一話二分程度という短い尺でありながら、一週間に一度という通常通りの放送間隔のため、極めてストーリーを把握し難いという難点がある。あまりにも中身が少な過ぎて、一週間後には前回の流れを忘れてしまうのだ。しかも、いわゆる分割2クール方式なので、第十三話と第十四話の間は三ヶ月もの空白期間がある。さらに言うと、本作は場面転換が少ないわりに、物語はどんでん返しを多用するという形式だから、余程熱心にストーリーを追って行かなければ、途中で訳が分からなくなってしまうだろう。そのため、内容以前のところで視聴者離れを起こしてしまうのである。それは非常に悲しいことだ。今ならアーカイブで連続視聴ができるため、評価も幾らか変わってくるだろうから、興味がある方は再視聴をオススメする。

・ギャグ


 繰り返しになるが、本作はただのギャグアニメではなく、ファンタジーパロディーアニメである。よって、ネタ元の『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』を知らないと面白さは半減する。ネタ元における「勇者」とは、正義のヒーローであり、パーティーの中心であり、世界を守るために自己を犠牲にして戦うスペシャルな存在だ。それをパロディーにすると、主人公はただの雇われ兵士であり、非力であるばかりか味方の足を引っ張り、仲間に邪険にされて出番もない、あげくの果てに犯罪を起こして投獄されてしまう、ということになる。その際に用いられているギミックが、「ファンタジー世界に現実世界のモラルとルールを持ち込む」ことである。現実世界のモラルとルールとは、要するに法と金が全てを支配するという構造だ。正義と力が支配するファンタジー世界にそれを持ち込むことによって、キャラクターごとに価値観の相違が生まれ、そのギャップにユーモアが発生する。具体的に言うと、勇者としての王道を歩もうとする主人公の行動を仲間がメタ的な視点で茶化し、それに対して主人公がツッコミ返すというのが、本作のギャグの基本パターンである。なるほど、それは確かに面白い。ただ、そればかりだと確実に飽きる。視聴者側としては、現実のくだらない柵から逃避するためにファンタジーを見ているのだから、あまりに茶化し過ぎると興醒めしてしまう。本作は適度にファンタジーらしいバトル展開を加えることでそのバランスを取っているが、それでも現実側に偏り過ぎなように思える。
 また、パロディーと言えば忘れてはならないのが、例によって例の如く、他の漫画やアニメ、そして、ネットネタのパロディーである。本ブログだと常に批判される運命にあるが、その理由はどこまでも「内輪ウケ」の世界だからだ。分かり易い例を挙げると、突然、作画のタッチが劇画調になるというギャグがあるとする。それは古より受け継がれる定番ネタである。ただ、かつてのそれが劇画漫画「風」であったのとは異なり、昨今のそれが明確に漫画『男坂』のパロディーだったりするから問題なのである。前者なら大多数の人間が面白さを理解できる。だが、後者ではその元ネタを知らないと面白さが理解できない。その最たる物がネットネタである。原作のニコニコ静画を見るような層なら、全てのネタを理解できるだろう。だが、アニメ化して不特定多数の人に見せようとするなら、ネットに精通していなくても理解できるようにしなければならない。でなければ、わざわざアニメ化などする必要はないのだから。

・ストーリー


 本作は一話五分のショートアニメでありながら、一つの核となるストーリーが存在する。もちろん、フルサイズの作品に比べるとあってないような物なのだが、それでもこの厳しい制限化でよく頑張っている。その情熱に敬意を表して、ここに紹介したいと思う。
 ある日突然、世界に穴が開き、幾多の魔物が世界に溢れ出した。伝説の魔王が復活したと考えた王は、かつて魔王を封印した勇者の子孫を派遣しようとしたが、誰が子孫か分からなかったため、とりあえずそれっぽい人を七十五人ばかし選んでみた。その中の四十五番目の勇者こそが主人公のアルバだった。というような流れで、その後は上記の通り、ファンタジーのお約束を覆して笑いを取るという展開になる。自称勇者の主人公が役立たずで、魔王が幼女で世界征服の意図がなく、本当の悪役は勇者を派遣した王様だった、そして、真の勇者は……という話である。ただ、こういったスケールの壮大さとは裏腹に、物語自体は非常にこじんまりとしている。具体的な描写がないので推測になるが、時間にしてほんの二・三日、距離にして数キロ以内で話が完結している。何せ、主人公達がほとんど移動していないにも係らず、敵の方から次々と襲いかかってくるのである。ストーリー的にこれほど楽なことはない。もちろん、この地味な生活感こそがファンタジーコメディーの華であったりするのだが、もう少し派手に動いてくれないと、ただのお遊戯会で終わってしまう。既存のファンタジー作品をパロディーにするのは良いのだが、ファンタジー自体をパロディーにしてしまうと、じゃあ、この作品のジャンルは何なんだということになってしまうだろう。
 また、気になるのは、本当の悪役は勇者を派遣した王様だったという点だ。この「実は主人公の所属している組織自体が黒幕」という展開は、昨今のファンタジーコメディーにおいて定番中の定番になっており、例えば、本ブログで紹介している『まおゆう魔王勇者』『はたらく魔王さま!』『勇者になれなかった俺はしぶしぶ就職を決意しました。』『アウトブレイク・カンパニー』は、いずれも王や教会や日本政府が黒幕である。なぜ、このようなことになっているかと言うと、元ネタの『ドラゴンクエスト』における「勇者システム」が非常に分かり易い欠陥だからだ。常識的に考えて、世界を滅ぼそうとしている悪の軍団に対して、たった一人の兵士を派遣するはずがない。もし、そのような作戦を取るなら、当然、身分を隠した隠密行動になるだろうし、組織は全力で彼をフォローしようとするだろう。まさか、銅の剣や竹槍で魔王を倒せとは命じるまい。ならば、普通の人は何か裏があると考えるだろう。ただ、そんな分かり易過ぎる穴を突くのは、プロのクリエイターとしてどうかと考える。皆と同じことをしてもオリジナリティーは生まれない。本作で言うなら、実は黒幕などいなくて、全員が何かを勘違いしていましたとした方が綺麗にまとまったはずだ。

・タブー


 本作は基本的にギャグアニメであるため、多少のドタバタや不合理は問題ない。むしろ、ある程度行き当たりばったりな方が、予測も付かない面白さに繋がるメリットがある。ただし、いくらコメディーでも絶対にやってはいけないタブーという物が存在する。そして、本作はそれを二つも破っているという重大な問題が発生している。
 一つ目は「登場人物が多過ぎる」ことである。コメディーの基本として、個性的で愉快なゲストキャラクターを多数登場させるのは好ましいことだ。ただ、本作が残念なのは「一つのキャラクターにつき、一つの属性しかない」ことである。例えば、ルドルフという老騎士は「ロリコン」である。それはそれで面白いのだが、彼は本当にその特徴しかない。そのため、画面に映っている間は、ずっとそのことばかりをしゃべり続けるという単純で底の浅いキャラになっている。ところが、そういったあからさまな出オチキャラなのに、本作ではなかなか舞台から退場せず、延々と主人公に絡み続ける。結果、キャラクター総数ばかりが増え、相対的に一人一人の出番が少なくなるという現象が発生してしまうのだ。『コードギアス 反逆のルルーシュ』がまさにそうだったが、劇中で戦死させるなどして適度に間引いていかなければ、画面が余剰人員で溢れ返ってしまう。せっかく作ったキャラクターに思い入れがあるのは結構だが、そこは心を鬼にして段階的に減らしていくことが作者に課せられた使命である。
 もう一つのタブーは「ギャグでストーリーを進める」ことである。ギャグワールドの中では、面白ければどんなに物理的に不可能なことでも成立する。例えば、主人公を砲台で発射するということも平気で行う。ただ、大事なのは「それで場所移動してはならない」ということである。そういうことをやってしまうと、途端、何でもありの世界になってしまう。そうではない。ストーリーはストーリーとして、他のジャンル同様、ある程度のリアリティを持って進める。ギャグはあくまで添え物、それがコメディーとしての正しい在り方だ。本作はその辺りの切り替え方があまり上手くない。シリアスとギャグの境目があやふやで、シリアスであるべきところをギャグで誤魔化したり、逆にいきなりシリアスな展開になって置いてけぼりを食らったり。一話五分のショートアニメの中にストーリーを盛り込むという非常に困難な作業を行っているのは分かるが、そこはもう少し注意して頂きたい。

・総論


 ギャグの質自体は人を選ぶとは言え、まぁ面白い。ただ、一つのファンタジー作品として見ると、結局は定番のネタを継ぎ接ぎしただけのドタバタ騒ぎで終わっているため、あまり評価には値しない。もう少しストーリー面でのオリジナリティーが欲しかったところである。

星:☆☆(2個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
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