『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』

無茶苦茶。

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お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ - Wikipedia
お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2012年。鈴木大輔著のライトノベル『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は川口敬一郎。アニメーション制作はSILVER LINK.。超ブラコンな妹が出演する日常系ハーレムアニメ……としか紹介のしようがないんだよなぁ。ちなみに、ヒロイン役の木戸衣吹は当時中学生。だからと言って、それが何の言い訳にもならないぐらい演技が下手。

・第一話


 何だこれ。さっぱり分からん。
 とりあえず設定を整理すると、主人公は高校二年生の女の子。この春より、長年離れて暮らしていた双子の兄と同じ高校で寮生活をすることになる。彼女は兄のことが大好きで、何とか既成事実を作ろうと積極的にアプローチする。だが、その寮には他にも三人の女子生徒が住んでおり、皆が兄のことを好きというハーレム状態になっていた。ちなみに、彼らは兄妹を含め全員が生徒会の役員で、兄は寮の管理人でもある。はたして、妹はライバルを押し退けて兄をゲットすることができるのだろうか、というのが基本設定らしい。これだけ見たら、まぁ、人は選ぶが面白くなりそうな内容である。ただ、肝心の第一話がこの設定を全く解説できていない。それどころか、このまとめた設定が合っているのかどうかすら分からない。この言い知れぬ不安感、そこら辺のホラー映画よりよっぽど怖い。
 まず、兄は「転校生」である。この話を聞いた時、大半の人が「え?」と思ったのではなかろうか。上記の基本設定に従うと、どう考えても妹が転校生である。実際、このアニメは妹が荷物を抱えて学生寮に辿り着き、それを兄が出迎えるところから始まる。何かの間違いだろうと何度も第一話を確かめてみたが、やっぱり兄が転校生のようだ。要するに、これは「今まで別々に育てられた兄妹が一緒に暮らすことになった。そこで、妹の通う学校に兄が転校することになり、それを機に二人は同時に学生寮に入寮した。兄はたまたま先に到着しただけ」ということらしい。分かるか! じゃあ、寮に住み付いている兄の情婦共は何なんだよ、と思ったら、どうやら兄妹の入寮後に遅れて寮に加わり、見事に兄の魅力の虜になったということらしい。その時間経過は桜の木の変化を見れば分かる……って、分かるか、ボケ! 何なんだ、このお粗末な脚本は。不親切というレベルを遥かに超えて、完全にミステリーのトリックである。途中で誰か死ぬのか、このアニメは。
 あまりにも理解不能なので調べてみると、どうもアニメ化するに当たって、原作にあった兄と妹が二人だけで暮らすシーンを全面カットし、いきなり男女五人の共同生活から始まるように改変したらしい。何だそりゃ! 頭おかしいのか!? それならそれで、ちゃんと整合性が取れるようにシナリオを修正すべきだろう。ナレーションを入れるとか回想シーンを入れるとか。ここまで無茶苦茶な脚本は前代未聞である。本作の第一話にはクソ脚本オブザイヤ―の称号を与えたい。

・主人公


 改めて、これらの構成変更に伴う最大の弊害は「主人公の不在」である。先述の通り、この物語は妹の視点から始まる。映像作品において誰の視点から始まるかは重要で、動物の刷り込みと同様に、視聴者は最初に登場した人物を主人公と感じる物だ。だが、妹は主人公ではない。構成変更により、彼女は第二話の時点で早くも出番が減少し、その他大勢のポジションに送られる。その間、本作は他の寮生と兄の個人的な関係を描くことに終始する。だからと言って、兄の視点になることはない。ハーレムアニメにおける男性など、本来この世に存在するはずのない唯一神のような物なので、彼の心理描写は行わないし、行う必要もない。描くのはあくまでヒロイン側の視点。彼女達が主人公に恋愛感情を抱いて恥ずかしがっている姿を視聴者が可愛いと感じる。結果、視点があちこちに散乱し、主人公不在の不安定な状態が最後までダラダラと続く。
 そもそも、本作の面白さは、超ブラコンな妹の己の欲望に正直過ぎる奇行の数々にあるはずだ。ハーレム展開は妹の嫉妬心を呼び起こすための舞台装置に過ぎない。だが、本作のアニメ版では、なぜか手段であるはずのハーレムが目的化し、咬ませ犬に過ぎないはずの女子生徒が妹と同格以上のヒロインに昇格している。例えば、第九話・第十話は、風邪を引いた兄の看病権を皆で取り合うというアホみたいな話だが、大方の予想に反し、最後に彼を看病して優勝を勝ち取ったのは妹ではなく生徒会長だった。つまり、ヒロイン達の立場は完全にイーブンである。そんなハーレムアニメは世の中に幾らでもある。妖艶な先輩キャラもクールなお嬢様キャラも男の娘風の幼馴染みキャラもおませなロリキャラも行き遅れのOLキャラも、他のアニメで腐るほど見ることができる。わざわざ妹物を謳っている「お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ」というタイトルの作品でやる必要はない。
 なぜ、本作は原作を改変してまで病的にハーレムであることに拘るのか、あくまで私見だが、おそらくは商売的な理由だろう。放送終了後のグッズ販売や声優イベントなどを考えると、ヒロインの数は多ければ多い方がいい。その方が多種多様な客を取り込める。要は、動物園や風俗店と同じ考えだ。言い換えると「妹一人では金儲けにならない」のである。世の中、銭だ。愛さえあればどうにかなるわけではない。

・脚本


 本作にはストーリーなどという高尚な物は存在しない。六人の女性が一人の男性を取り合うハーレム描写を最初から最後まで延々と繰り返すだけの作品である。たまに、兄は近親恋愛専門の小説家であるとか、兄妹が別々の部屋に隔離されるとかいった物語っぽい何かが挿入されるが、本編に全く影響を与えることなく静かにフェードアウトする。第六話では「ヒロイン達がこの寮に移り住んだのは、兄妹が一線を越えないようにするため」という他のアニメなら一発で炎上するような衝撃のネタばらしが行われるが、それすらも綺麗さっぱり忘れ去られる。よって、物語に関して語ることなど何もない。
 ただ、脚本的に気になる点は幾つかある。一つは、各々のエピソードが異様に長いことだ。例えば、ヒロインの一人が兄と自室で世間話をするというシーンがよく出てくる。普通のアニメだと、二・三分で終わるようなショートエピソードである。だが、本作はそれが誇張抜きで十分近く続くのである。当然、場面転換や第三者の乱入など何もなく、ただ部屋の中で穏やかに語り合うだけ。そういった物が連続するため、一話三十分のフルアニメなのに三エピソードぐらいしかないという危機的状況が頻発する。要するに、これはただでさえ少ない中身をさらに薄めて伸ばし、かさを水増ししているわけである。適切な時間でカットして編集すれば、本作は半分ぐらいの尺で済むだろう。確かに、日常系アニメは女の子の普段着の暮らしを観察するのが唯一の目的とは言え、これはちょっと手抜きと言われても仕方ない。
 もう一つは、回想シーンの扱い方だ。本作はハーレムを強調するために原作を改変し、なぜヒロイン達が寮にやってきたかの件を後回しにしている。それらはシリアスな回想シーンとして後の回に挿入されるのだが、それが文字通りの「挿入」であって、前後の脈絡や話の繋がりなどが一切考慮されていない。しかも、そのシーンがまた長く、誇張抜きで三十分近く続く。するとどうなるか? 驚くべきことに、本作は文脈に関係なく挿入された回想シーンで「回を跨ぐ」のである。こんなアニメを他に見たことがあるだろうか? 正気の沙汰ではない。とてもプロの仕事とは思えないのだが、現場では何が起こっていたのだろうか。時間がないので中学生の息子に構成を切らせたと言われても、自分は驚かない。それぐらい酷い。

・結局、どうしたいんだ?


 これは、兄が突飛な行動を繰り返す妹達に対して度々口にする台詞である。口癖のような物なのだろう。だが、我々こそがこの台詞を制作者に対して言いたい。結局、どうしたいんだ? 本作はタイトルこそ妹物だが、中身はただのハーレムアニメ。男女七人のくだらない四方山話が最終話のラストのラストまで続く。では、この作品はどうやって締めるのだと思っていると、突然、主人公でも何でもない兄がモノローグで語り始める。もちろん、彼が自分の心境を言葉にするのはこれが初めてだし、そもそもその資格がない。さて、そんな彼の衝撃のモノローグの全文がこれだ。
「妹と二人、平凡に慎ましく暮らしていく、そんな僕の願いは今となってはもうとても叶いそうにない。見た目も成績も極普通、心臓には毛の一本も生えておらず、秘めたる才能があるわけでもないこの僕にとっては由々しき事態だ。男女問わず食い散らかす肉食系の生徒会長、自他共に認める絡み難い副会長、友情の厚さでは他に類を見ない会計、年齢以外はパーフェクトな管理人、そして、書記である我が不肖の妹、こんな豪華絢爛な連中に囲まれてしまっては普通の人生なんて送れるはずもなく、だけど、これからも秋子を守り続けていくという僕の方針に変わりはない。そのためには、秋子にとって危険となり得る要素は一つ残らず取り除いていく必要がある。それがたとえこの僕、姫小路秋人自身であってもだ。どうして僕が危険な要素の内に含まれるのか、簡単な話だ。なぜなら、僕と秋子の間には本当は血の繋がりなんてないんだから。姫小路家のややこしい事情については、いつかまた別の機会に語るとして、僕はこのことを秋子に話すつもりはない。僕らが実の兄妹であるという認識は一応、秋子にとってもブレーキになっているはずで、その障害が取り除かれたら、どういうことになるかは火を見るよりも明らかだし、それにこれ以上派手に迫られると、僕の方のブレーキが怪しくなると言うか……」
 ど、どこからツッコめばいいんだ。まず、主人公は平凡な人間ではない。小説家という職業、美少女に囲まれる環境、他人の恋愛感情に気付かない鈍感力、どこを取ってもスペシャルな人間だ。そんな彼が「周りが悪い」と責任転換をして、当たり前のようにハーレムを受け入れ、その上で妹を守ると宣う厚顔無恥な態度、完全に人間のクズである。そして、いきなり出てきた義妹設定には開いた口が塞がらない。つまり、何だ? 二人きりだと理性がもたないから、ハーレムにしようってことか? 今までの硬派な態度は全て演技だったってことか? いい加減にしろ、クソ脚本! こんな無茶苦茶な話が通るか!

・総論


 本ブログは脚本重視なので、ここまで酷い脚本だと最低得点を付けざるを得ない。つか、全く商業レベルに達していないんだけど、これ、本当に地上波で放送されたの? ドッキリじゃないよね? 私、騙されてる?

星:★★★★★★★★★★(-10個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
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