『ゆゆ式』

幼稚園。

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ゆゆ式 - Wikipedia
ゆゆ式とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2013年。三上小又著の四コマ漫画『ゆゆ式』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督はかおり。アニメーション制作はキネマシトラス。情報処理部に所属する女子高生三人組が、まったりゆったりとした日々を過ごす日常系アニメ。高校の部活を舞台にした日常系アニメでありながら、入学式以外の学校行事が全く描かれないという大きな特徴を持つ。

・第一話


 彼女達は仲良し三人組。同じ高校に入学して、同じクラスに配属される。三人は何をするにもいつも一緒。登下校も一緒、学校でも一緒。そんな春の日のこと、彼女達は部員0の謎の部活「情報処理部」を発見して入部する。そこで三人は毎日楽しい放課後を過ごすのだった、と本作は他の日常系アニメと似たような展開でスタートする。だが、その光景に他のアニメではあまり感じない非常に大きな違和感を覚える。それは何だろうかと考えると、三人組はこの第一話で、担任教師以外の学内の人間とは誰一人として口を聞いていないという事実に気付く。
 日常系アニメの特徴は、とにかく内に内に閉じ籠もることである。気心の知れた仲間以外を極端に排除して、誰も邪魔しない安全な場所で自由気ままに過ごす。その中でも、本作の非社会性は完全に突き抜けている。何をするにしても三人で行動し、周囲の人間は視界にすら入らない。高校に進学して環境が変化したのに、中学時代とやっていることが全く同じ。そして、最終的には三畳ほどの狭い情報処理部室にひき籠もる。そこから感じられるのは、楽しさでも自由さでもなく「寂しさ」である。三人だけで過ごす楽しみは否定しないが、クラスメイトや先輩後輩と交流することによって新たな楽しみを発見する可能性もあるはずだ。なのに、自ら社会生活を拒絶してシェルターに閉じ籠もっている姿はかなり痛々しい。しかも、そのことに対して「こういう時間が大切な時間」と自己弁護する様がさらに痛々しい。日常系アニメの始祖である『あずまんが大王 THE ANIMATION』や『苺ましまろ』などと見比べてみると、本作の社会性のなさと寂寥感は際立っている。
 それに加えて、本作は俗に言う「百合」的な要素がプラスされている。明確な恋愛感情こそないが、同性同士で好きだの可愛いだのを言い合う萌えの一ジャンル。ただ、本作の場合は、完全に自己完結した三人組でそれをやるのだから、とんでもなく内向的である。それはいわゆる「ホモソーシャル」という奴で、潜在的な欲求不満を同性の仲間内で充足し合う関係なのだろう。もっと言うなら、自己という概念が消失し、無意識を共有化した三位一体のような、三人で一人のような状態になっているに違いない。高校時代はそれでもいいかもしれないが、将来、彼らが卒業して別々の進路を選んだ時にどうなるか、大変興味深い。

・相川さん


 本作は典型的な量産型日常系アニメだが、他の作品ではあまり見かけないタイプのキャラクターが二人登場する。その内の一人が次に紹介する「相川さん」である。
 彼女は三人組のクラスの委員長である。別の友人グループに所属しているため、基本的に両者の間に交流はない。だが、彼女は三人組の一人に憧れを抱き、何とか彼女達とお友達になろうと接近する。最初はギクシャクして変人扱いされていたが、最終的には仲良くなって部室にも出入りするようになる、といった一風変わったキャラクターである。が、はっきり言うと、あまり必要性を感じない。キャラも弱いし、彼女の力でギャグが盛り上がることもない。それどころか、彼女がいることで別グループとの間に無駄な軋轢が生じ、本作のテーマであるまったりゆったり感が失われてしまう。では、なぜ、そんな十字架を背負ってまで、わざわざ劇中に登場しなければならないのか。一つは当然、視聴者の分身としての役割だ。元々、日常系アニメに主人公は存在しない。いるのはヒロインだけ。本来の主人公は、透明な存在となってヒロインの近くを彷徨い、彼女達の日常を温かく見守っている。その役割を改めて可視化したのが、相川さんという存在なのだろう。ヒロインを可愛いと感じて恋に落ちるという当たり前の感情。人が人を好きになる喜び。そこに作者の葛藤が見て取れる。時流に流されて日常系の作品を作ってしまったが、本当にやりたいのは真っ当な恋愛ドラマなのだ。その想いが相川さんという無駄な存在を作り上げてしまったのだろう。
 そして、もう一つ、こちらが重要なのだが、三人組を殊更に持ち上げてヨイショする太鼓持ちとしての役割だ。相川さんは惚れた弱みで三人組を褒めまくる。「凄い」だの「面白い」だの。しかし、冷静に考えると、彼女達は毎日狭い部室でブラブラしているだけなので、大して凄くもないし面白くもない。おしゃべりと間食が大好きな極めて平凡な女子高生である。しかし、物語の主役である以上、何らかの特殊性を持たせないといけない。普通は、部活動で頑張って何らかのコンクールで賞を獲るという方向へ向かう物だが、そんな面倒臭いことはやっていられない。すると、一番手っ取り早い手段が、適当な第三者に褒めてもらうということになる。それはどうなのか。今更、その善し悪しを問おうとも思わないが、画的な不自然さだけは誤魔化せる物ではない。

・お母さん


 もう一人が「お母さん」である。お母さんと言っても誰かの母親ではなく、三人組のクラス担任&部活顧問を務める女教師の愛称である。おっとりした性格かつふくよかな容姿で、まさに母親のイメージからそのような変わったニックネームが付けられている。それだけならまだ分からないでもないが、本作の奇妙なところは、三人組が彼女のことをまるで本当の母親のように慕っていることである。実際、彼女達は所構わずお母さんにベタベタと甘えまくり、プライベートな質問を連発する。可愛い女子高生だから何をやっても許されるという範囲を超え、かなり気持ちの悪い光景だ。彼女達はどれだけ家族の愛情に飢えているのかと心配になる。
 別に母親がいないわけではない。三人とも両親は健在だ。ただ、この手のアニメのセオリーに従って、両親の存在は画面から抹消されている。なぜなら、子供が自由気ままに生きるためには、親が最も不要な存在だからだ。だが、本作では教師にその代わりを務めさせて、母親だけが物語に舞い戻ってくる。それは一体どういうことだろうか。素直に母親を出せば済む話なのに、なぜそのような回りくどい方法を取るのだろうか。
 一つ考えられるのは、「部室の庇護者」という意味合いである。情報処理部室は誰にも邪魔されない安全な場所であるが、それでも外部からの侵入者が来ないとも限らない。生徒会が部活動の実態調査に来るかもしれないし、他のクラブが部室の所有権を賭けて殴り込みに来るかもしれない。例えば、同ジャンルのアニメ『ゆるゆり』では、二度ほど部活動の危機が訪れている。そのいずれも特に問題になることなくいつの間にか解決していたが、それすらも嫌だということなのだろう。そのため、部室を外敵から守ってくれる絶対的な保護者を必要とした。それがお母さんなのである。彼女はその名の通り、母親のように優しく三人組を守ってくれる。母親の庇護の下、ぬくぬくと育つ子供達。言わば、部室は母親の胎内と同じということだ。今や、そこまで幼児化しているのである。誰が? もちろん、日常系アニメのヒロインとこの手の作品を好む視聴者である。別に、全てのアニメがそうとは言わないが、こういった作品が平気で放送されているという事実は無視できない物があるだろう。

・情報処理部


 では、三人組が所属している情報処理部とは、一体何をする部活なのだろうか。一言で言うと、気になったテーマをインターネットで検索して、その結果について語り合うというただそれだけの部活である。本当にそれだけである。しかも、その検索対象がフリー百科事典のWikipediaだったりする。何だそれは。世の日常系アニメには、活動内容が不明な謎の部活が数多く登場するが、ここまで酷い物はあまり見かけない。今時、小学校の授業でも、いや、幼稚園でもやっていることだろう。これを大真面目に部活動と言い張る様は、呆れを通り越して哀しみすら覚える。ただの無職を自宅警備員と言い換えるようなレベルの話である。
 このように、本作は平和が売りの日常系アニメの中でも、ずば抜けて「何も起こらない」アニメである。最初から最後まで同じ三人組による取り留めのないおしゃべりが延々と繰り返される。物語も中身も何もない。ただ、決して争い事が一切起こらない極楽浄土を舞台にしている訳ではない。意外と騒動のタネはあちこちに撒かれている。それは、上記のような別の友人グループとのいざこざであったり、三人組内での確執であったりする。と言うのも、この三人組、実は二人が幼馴染同士でもう一人が後から遅れて加わったという2+1のグループなのである。そのため、二人の思い出話にもう一人が嫉妬するという危険なシチュエーションが何度も訪れる。だが、彼女はその感情を決して表に出さない。気付いているのか気付いていないのか、我慢しているのか無頓着なのか、そのどちらとも取れるようなギリギリのラインで踏み止まっている。第三者に彼女の本心を探ることは不可能だ。よって、本作には常に妙な緊張感が漂っている。平凡な日常を守りたいという想いと壊してしまいたいという想いのせめぎ合い。今は平和が勝っているが、いつそれが崩れるか分からない、そんな緊張感。あぁ、平和を守ることはこんなに大変なんだなと別の意味で勉強になる一作である。

・総論


 見た目はただの日常系アニメだが、その底に言い知れぬ不気味さを抱えている。何と言うか、いろいろ大丈夫か? これ。

星:☆(1個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 09:27 |   |   |   |  page top ↑
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