『ブラック・ブレット』

ダイジェスト。

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ブラック・ブレット - Wikipedia
ブラック・ブレットとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2014年。神崎紫電著のライトノベル『ブラック・ブレット』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は小島正幸。アニメーション制作はキネマシトラス、オレンジ。謎の怪物の襲撃を受けた近未来の日本を舞台に、呪われし運命を背負った少年少女が戦うアクションファンタジー。bullet(弾丸)の読み方についてだが、よりネイティブに近い発音は「ブリット」になる。よく日本で使われる「バレット」は基本的には正しくない。

・設定


 う、うーん……。いや、やりたいことは分かるし、やっていることも決して間違っていない。キャラクターデザインもいいし、作画も丁寧で、演出も悪くない。好きか嫌いかで言うと、かなり好きな部類のアニメではある。ただ、非常に残念なことだが……出来は悪い。
 設定は甘い。もっとも、それは説明不足・描写不足が主たる原因なので、破綻はしていない。十年前、「ガストレア」と呼ばれる虫型の怪物が突然大挙して現れ、東京の街は壊滅的な被害を受けた。人々はガストレアの嫌う「バラニウム」という黒い鉱石で街を覆うことによって、何とか生き長らえた。十年後、一応の平穏を取り戻した東京では「呪われた子供たち」と呼ばれる十歳以下の少女が社会問題になっていた。彼らは生まれながらにしてガストレアウイルスに感染し、人間離れした驚異的な身体能力を持っている。そこで、呪われた子供たちを対ガストレア用の生体兵器として利用する「民間警備会社」が生まれ、金儲けのために怪物の鎮圧に当たっていた。主人公は小さな民間警備会社に所属する男子高校生。彼は十年前、大けがを負ったことで人体実験の被験者になり、体の半分をサイボーグ化していた。本作はそんな主人公と相棒の呪われた子供が東京の街を救うために戦う物語である。
 未知の怪物に襲われたことでパラレルワールド化した日本を舞台にした作品は、深夜アニメ界隈では定番ネタである。それらに共通して見られる問題は、このような異常事態にも係わらず「都市生活が正常に機能している」ことである。本作も、周囲を怪物に取り囲まれて隔絶された状況なのに、なぜかインフラも経済も滞りなく、まるで我々の世界の延長線上にあるかのように平和にのんびりと暮らしている。これは間違いなく大きな設定上のミスである。ただし、本作はある一点を殊更に強調することによって、そのミスを覆い隠すことに成功している。それが「呪われた子供たちに対する差別」である。敵であるガストレアのウイルスを宿した子供達を市井の人々が忌み嫌い、激しい憎悪と暴力を間接的・直接的にぶつける様子を、包み隠さず執拗なまでに描いている。平和そうなのは見た目だけで、実際は常に死の恐怖に怯えている。そういった人間の持つ光と闇の二面性を描くことで、世界が抱えている潜在的な恐怖心と異常性を演出している。これは上手い。この点に関しては、本作は他のアニメと一線を画しており、素直に称賛されるべきである。

・高速展開


 では、本作の何が問題かと言うと、それは異様なまでに「展開が早い」ことである。いや、早いというレベルではない。高速である。ウサイン・ボルトである。
 例えば、第一話。怪物退治に出かけた主人公は、事件現場で仮面を付けた謎の人物と出会う。彼は世界に混乱をもたらそうとしている凶悪なテロリストだった。さて、このシーンが第一話の後半や第二話で描かれたのなら何も問題ない。ところが、本作はそれを第一話冒頭の最初のシーンでやるのである。その時点では、まだ視聴者は民間警備会社の役割や仕事が何も分かっていない状態なのだから、まずは日常業務を見せて、彼らがどういった生業の人間なのかを示さなければならない。だが、本作は最初の仕事と同時にラスボスまでも出してしまうため、何が何だか分からないまま話が進む。その後も怒涛のように展開が押し寄せ、次々と新しい人物が登場しては、新しい事実が明らかになる。仮面の男は自分の足で主人公達の前に現れて、自分の口で自己紹介をする。主人公とヒロインが一緒に暮らし始めた頃の思い出話という、主人公の思想の根幹を成し、本来なら独立した回にすべき重要エピソードも、十秒ほどの短い回想シーンで処理してしまう。この一ヶ月一万円生活のような無駄の無さは、別の意味で芸術的だ。もっとも、他の三流アニメだとそもそも描かれなかったりするので、あるだけましなのだが……。そして、ドーピングを使って仮面の男を倒し、続けて現れた怪物も倒し、ついでに黒幕も倒したことで、第一部はたったの四話で終了してしまう。最低でも六話、できれば1クールかけてじっくりと描きたいところだ。
 なぜ、このような残念な事態になってしまったのか。詳細は分からないので推測に頼ることになるが、おそらくアニメ化に当たって1クール分しか放送枠を確保できず、続編の制作も見込めないため、無理やりにでも全十三話でストーリーを収めようとした結果の高速展開なのだろう。つまり、制作ではなく製作の判断の問題である。ただ、第一部だけをアニメ化することや、ストーリーを改変して尺を上手く調整することもできたはずで、その判断には疑問符を付けざるを得ない。実際問題、短い時間に多くの物を詰め込んだせいで、作品としての完成度が著しく低下したのは紛れもない事実なのだから。ただ単に原作小説を宣伝するためのアニメ化か、それともアニメ文化の発展に少しでも貢献する気持ちがあるのか、今一度原点に立ち返ってその点を見つめ直して欲しい。

・主人公


 こういった外的要因によってダメになってしまった作品の粗探しをしても仕方ないので、できる限り良い点を褒めることにしよう。では、本作の良点は何かと言うと、やはり、それは「主人公」になるだろう。
 本作の主人公は、基本的には他のライトノベル原作アニメと同様で、普段はぼんやりとしているが、いざという場面になると急に人が変わったようにヒーロー的な活躍をし、ヒロインが理不尽な扱いを受けるとすぐにキレて、誰彼構わず熱い啖呵を切るタイプの人間である。ただ、彼が他の主人公と違うのは、人体実験の材料にされて人ならざる体になってしまったという重い過去を持っていることや、人々から差別を受ける呪われた子供たちと一緒に暮らしていることで、世の中の不正を人一倍憎む心を有している点である。そして、その思想は最初から最後まで一貫して変わらない。常に弱き者の側に寄り添い、強き者に立ち向かう。他のアニメにありがちな、何の苦労も何の努力もしていないのに、なぜか世の中全てが分かった振りをして、上から目線で他人に説教するような人間ではない。つまり、地に足が着いているということだ。だからこそ、彼の発言には説得力があり、己の理想を実現するために体を張って突き進む背中を素直に応援することができる。確かに、それは子供じみた暑苦しい正義感かもしれないが、いい歳した大人が必死になって否定するようなことでもない。特に、本作は中高生をメインターゲットにしているため、こういった主人公こそが相応しい。
 また、主人公は超人的な能力を持っているが、決して無敵という訳ではない。敵はそれ以上に強力なため、劇中ではむしろ敗北を喫することの方が多い。あれだけ大口を叩いておいて呆気なく敗れるのだから、その姿は明らかに「かっこ悪い」。だが、本作の主人公はどんなに無様にやられても決して諦めず、ボロボロになりながら何度も立ち上がって敵に戦いを挑む。その姿は間違いなく「かっこいい」。『聖剣使いの禁呪詠唱』の項目と見比べてもらうとよく分かると思うが、本当のかっこ良さを描くためにはある程度のかっこ悪さを同時に描かないといけないのだ。全く痛みを知らず、すました顔で敵を惨殺するような人間はただの兵器である。兵器に自分自身を投影できるほど人間は愚かではないし、そんな作品が世間に受け入れられることはない。

・ダイジェスト


 第五話からは第二部が始まり、激動の第一部に比べると本作はやや落ち着きを見せる。だが、それでも一般の作品と比べると全体的なテンポは早い。その理由の一つとして、本作に登場する人物が皆、その場の状況を把握する「理解」と事件の真相を言い当てる「推理」と今後の目標を定める「決断」が異様に早いことが挙げられる。これらが遅いとただの頭の悪いアニメになってしまうが、だからと言って早過ぎるのも考え物だ。あまりにもサクサクと話が進むため、まるで超能力者しか住んでいない世界に迷い込んだかのような錯覚に襲われる。
 第八話以降の第三部もその流れを引き継ぎつつ、最終話へ向けて加速度的にスピードを上げていく。特に、最終話は目に見えて放送の尺が足らず、激安タイムセールのような詰め込みっぷりを披露する。紛失したバッテリーの伏線はあっさりと消化され、せっかく集めた八人の仲間は活躍の場すらない。あっと言う間に命懸けの決断をし、あっと言う間に最強の敵は倒される。それで終わりかと思ったら、突然場面が切り替わり、民間警備会社の女社長と実は事件の黒幕だった彼女の兄との対決シーンが描かれる。すると、なぜか二人で決闘をすることになり、それに勝利した社長が闇落ちしたところでいきなりストーリーが終了する。意味が分からない。はっきり言って、この対決シーンには物語的な必要性をほとんど感じない。この分の尺を使えば最終決戦をもう少し盛り上げることができたはずだ。ただ、原作通りにストーリーを進めようと思うと、社長の闇落ちは必須になる。この辺りのジレンマが歯痒い。どうせ続編などあり得ないのだから、ばっさりとカットしてしまっても構わないと思うのだが。
 このように、本作は製作の都合によって、まるでダイジェストムービーのようになってしまった不幸な作品である。ただ、内容自体はちゃんと地に足が着いた熱い青春物であり、中高生向けアニメとして十分なクオリティを保っている。こういった作品をどう評価すればいいのか判断に迷う。本来あったであろう形に戻せば間違いなく高評価なのだが、そんな物はこの世のどこにもない。そもそも、ダイジェストムービーを批評する文化などあり得るのか? ゆえに、深夜アニメ業界の特殊性とそれを取り扱うことの難しさを強く実感する。

・総論


 個人的には好きな作品。こういう物だと割り切れば、面白い。

星:☆(1個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 09:59 |   |   |   |  page top ↑
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