『ゼロの使い魔~双月の騎士~』『ゼロの使い魔~三美姫の輪舞~』

擬似ツンデレ。

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ゼロの使い魔 - Wikipedia
ゼロの使い魔とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2007年、2008年。テレビアニメ『ゼロの使い魔』の続編。全十二話+全十三話。監督は紅優。アニメーション制作はJ.C.STAFF。『ゼロの使い魔~双月の騎士~』が第二期、『ゼロの使い魔~三美姫の輪舞~』が第三期に当たる。制作会社は同じだが、スケジュールの都合で前作の主要スタッフが参加できず、新たな監督の下で再出発することになった。

・失敗続編


 第二期と第三期は放送時期に一年間の開きがあるのだが、ここでは二つまとめて評論する。それと言うのも、両者共にあまりにも出来が悪過ぎるからである。実際、原作ファンからも第一期のファンからも多くの批判を浴びており、中には存在自体をなかったことにしている者もいる。同様の批判を浴びた『みなみけ~おかわり~』のように、シリーズ異色作の一作品だけが黒歴史扱いされるのはよくあることだが、二作続けてという例はあまり類を見ない。普通は最初の失敗を糧にして、その続編で汚名を返上すべく奮闘する物だが、それができないほど状況的に追い込まれていたのだろうか。全ては推測に過ぎないが、第二期の監督がそのまま続投した事実がある以上、当たらずも遠からずなのかもしれない。
 では、なぜ続編が失敗したのか、その理由を順を追って考えて行こう。

・シリアス


 第二期のストーリーは、主人公達の住むトリステイン王国とレコン・キスタに占拠されたアルビオン王国との争いがベースになる。大陸征服を狙うアルビオンは、その橋頭堡たるトリステインに対して様々な謀略を仕掛け、主人公達を翻弄する。否応なく戦争に巻き込まれていく学院生達。その魔の手は、余所者であるはずの主人公にも及び……と、相変わらず世界観は陳腐だが、登場人物の過去が複雑に絡み合うシリアスなシナリオは完成度が高い。戦時中の緊迫感も十分に描けており、下手な戦争ドラマより悲哀に満ちている。特に、本作のキーパーソンであるトリステイン王国銃士隊隊長のアニエスは、声優の好演も相まってシリーズ屈指の良キャラとなっている。
 ただし、これは『ゼロの使い魔』。はっきり言って、視聴者は誰もそんなシリアス展開は求めていないのである。視聴者が見たいのは、個性的な主人公とヒロインが織り成すドタバタ恋愛コメディーであって、本シリーズからそれを除いてしまうと、ただの三流パクリファンタジーになってしまうのは第一期の頃から自明のことである。一応、制作スタッフもその大前提は忘れていなかったらしく、時折、思い出したようにコミカルなシーンが挿入されるのだが、全体の雰囲気が暗いため完全に浮いている。中でも第十一話の無理やりコメディー推しは酷く、最終回直前にそんな話を入れる制作スタッフの神経を疑う。アニメの監督をする以上、もう少しシリアスとコミックをバランス良く配置できる柔軟性を磨かなければならないだろう。(ちなみに、本作で最も浮いているのはED曲であり、哀しいストーリーの直後に頭のゆるい台詞とメロディーが流れると、視聴者は途方もない脱力感に襲われる)

・空気


 もっと酷いのは、主人公がほとんどストーリーに絡まないことだ。大半のエピソードがゲストキャラクターを中心に描かれ、主人公はただ脇で傍観するだけ。前述のアニエスや神官戦士のジュリオの方が、明らかに主役らしい立ち位置にいる。元々、主人公でありながら「成長」という要素が全くない存在なので、画面から外れた瞬間、物語から消えてしまうのである。主人公ですらそんな扱いなので、ヒロインは完全に空気だ。第一期の頃の可愛らしさは見る影もない。ゼロのルイズ、ツンデレのルイズ、そういった一番のアピールポイントを捨ててしまっては物語が面白くなるはずがなかろう。
 ただ、さすがに最終回だけは二人が中心になる。反転攻勢に出たアルビオン軍から味方を逃すため、主人公はたった一人で七万の大軍に立ち向かう。愛するヒロインを想い、命を懸けて敵を足止めする主人公。と言っても、彼の力は全て天から与えられた才能のため、物語的にはあまり盛り上がらない。やがて、善戦むなしく、主人公は集中砲火を浴びて殺されるのだが……その後に続くエピローグの壊れっぷりはどうしようもなく、それまでのあらゆる物を台無しにする威力がある。原作ファンは怒り、それ以外は呆然とする。何を思ってこんなオチにしたのか。少しは空気を読んで欲しい。

・ハーレムラブコメ


 第三期は打って変わってドタバタコメディーが中心になる。第二期が余程不評だったのか、あれほど悲劇的だったアルビオンとの戦争は何の描写もないままいつの間にか終結し、前作のようなシリアスムードはほとんど顔を出さなくなっている。基本は主人公が多数の女の子にちょっかいを出し、それにヒロインが嫉妬するという『うる星やつら』的なハーレムラブコメだ。それはそれでいいのだが、「『ゼロの使い魔』ってそんな話だっけ?」と視聴者は絶えず違和感に苛まれることになる。また、直接的な下ネタが多くなっているのも頂けない。第一期の頃から胸や下着ネタはあったが、ここまで露骨ではなかったはずだ。それゆえ、本作の印象を一言で表すと「軽薄」である。
 その軽薄さを象徴するかの如く、ラスト二話で取って付けたようなメインストーリーが始まるのだが、これが本当に取って付けた感に溢れており、非常に残念な出来になっている。悪の組織にさらわれた友人を助け出すという話なのだが、敵の城への侵入も救出も逃走も全部一話でこなしてしまう。そして、その後に続く巨大モンスターとの迫力の欠片もない消化不良な戦闘。話の盛り上がりどころか、第三期は一体何がやりたかったのかと呆気に取られるレベルである。

・なぜ、失敗したのか?


 要するに、第一期の何が面白かったのかと言うと、ヒロインが「ツンデレ」だったからである。それも「自分を嫌っていた人が段々と心を開いて行く」という本来の意味でのツンデレだ。ところが、第一期終了時点で二人の間には完全に恋愛関係が成立してしまっている。すると、二人のいざこざは全てただの「痴話ゲンカ」になってしまい、最初の頃のような人間関係の面白さは望めない。できるのは、精々、強気な小心者が嫉妬に駆られて爆発する「擬似ツンデレ」だけだ。
 つまり、続編の制作が決まった時点で失敗は規定路線だったのである。それでも、第一期並みの面白さを求めようとするなら、二人の関係を一度リセットするぐらい思い切ったことをやらなければならないだろう。そういう意味において、第三期第一話の主人公のガンダールヴの力が失われるという展開は良い機会だったのだが、第二話の時点も早くも復活してしまい、せっかくのチャンスをふいにしてしまう。結局、「制作スタッフの力不足」で全てが片付いてしまう話である。

・総論


 ストーリー重視に走ったことで本来の楽しさを失った第二期と、開き直ってドタバタコメディーに徹したらただの三流アニメになってしまった第三期。失敗した理由は正反対だが、どちらも同じ問題点を抱えている。つまり、制作スタッフが第一期の成功した理由を正確に把握できていないという点だ。しっかりとマーケティングを行わず、「ツンデレ」というキーワードだけでアニメを作るとこうなるという良い反面教師である。

星:☆☆(2個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 21:47 |  ☆☆ |   |   |  page top ↑
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