『ゼロの使い魔F』

至高のエピローグ。

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ゼロの使い魔 - Wikipedia
ゼロの使い魔とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2012年。テレビアニメ『ゼロの使い魔』『ゼロの使い魔~双月の騎士~』『ゼロの使い魔~三美姫の輪舞~』の続編。全十二話。監督は岩崎良明。アニメーション制作はJ.C.STAFF。シリーズ完結編ということで、不評だった第二期・第三期の監督から、再び第一期の監督に再交代している。また、ストーリー構成を原作者自身が行うなど、その完成度に期待が高まった。(※2013年4月4日、原作者のヤマグチノボル氏がお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます)

・元素の兄弟


 本作は、アニメ『ゼロの使い魔』シリーズ四部作の完結編である。ただし、放送当時はまだ原作が完結しておらず、ストックも十分に余っている状態だった。そのため、長い物語を本クール内で終わらせようと、かなり強引にストーリーをまとめ上げており、物語上に数々の弊害が生まれている。
 例えば、第一話で「元素の兄弟」と名乗る謎の集団が主人公達を襲撃する。如何にもメインストーリーに係わる重要人物のようだが、実際の彼らは悪の組織に金で雇われた単なる傭兵団であり、第七話で再登場した後は最終話まで出て来ない。何のことはない。ただ、物語を円滑に進行させるためだけの「賑やかし役」であった。本作は一事が万事、その調子である。様々な新キャラクターが鳴り物入りで登場するが、活躍するのはほんの一・二話、気付けば舞台からいなくなっている。深みのある人物設定など何もない。シリーズを締め括る総決算と言えば聞こえはいいが、要は体のいいダイジェストである。

・ハーレムアニメ


 本作の最大の特徴は「ハーレムアニメ」であることだ。いや、以前からそうだったと言われそうだが、本作の場合は周囲の人々に訳もなく好意を持たれるだけの精神的ハーレムではなく、正真正銘、本物のハーレム(後宮)である。複数のヒロインから寵愛を受け、ベッドを共にし、終いには自分のお屋敷で共棲生活を始める。その中には一国の王女も含まれる。欲望に素直なのは結構だが、少ない話数で話をまとめ上げなければならない完結編でやることではない。結局、その辺りの問題は最後までなぁなぁで、不適切な男女関係を清算したというストーリーもなければ、彼女達の幸せな人生を描いた後日談もなく、当たり前のように最終回で主人公とメインヒロインが添い遂げる。いくら成人男性向けの萌えアニメと言えど、人を人と思わない残虐非道な物語には呆れるばかりである。

・ワールドドア


 物語の最中、ヒロインは「ワールドドア」という古代魔法を身に付ける。それは異なる場所と場所を繋ぐテレポートの魔法だった。そして、ヒロインはその魔法を使って、早速、主人公を元の世界へ送り届ける。まさかの力技。第一期であれほど苦労して元の世界へ帰ろうとしたストーリーは一体何だったのか。嗚呼、懐かしき栄光のゼロ戦……。
 って、いやいや、さすがにこれは酷い。「簡単に行き来できない」が異世界物の最大の肝なのに、「魔法で穴を開けました」ではゴリ押しにも程がある。伏線も何もあった物ではない。そもそも、この手の魔法は、送る側の地形や対象となる人物を正確にイメージしないと使えない(例:ドラゴンボール)のはセオリーではないのか。よしんば、ワールドドアを最重要アイテムとして使うにしても、それならそれで魔法を修得するために幾つもの障害を設けるべきではないのか。1クール全てをワールドドア修行に費やしてもいいぐらいだ。いくら時間に追われたダイジェストストーリーにしても、これはちょっと常識的にあり得ない。本作における最大の批判ポイントである。

・エンシェントドラゴン


 日本語に訳すと古代龍。そのままである。本作最後のエピソードは、蘇った古代龍から世界を守るストーリーである。まさか、最後の最後でヒロイックファンタジー的な龍退治をするとは誰が予想できただろうか。国同士で戦争していた頃が懐かしい。それはともかく、古代龍の尋常ならざる力により、破滅の危機を迎える魔法学校。ただし、真昼間の出来事なので、相変わらず画的な迫力はない。せめて舞台を夜にすればいいのにと思うが、物語上、現実世界で日食を起こすためには昼の話じゃないといけないらしい。こういうのを本末転倒と言う。
 最終的には、主人公が自衛隊から無断で持ち出したF-2戦闘機(なぜかフル装備)とヒロインの魔法でドラゴンを退治する。主人公は日本に帰っても重犯罪者なのだが、それでいいのだろうか。そう言えば、使い魔の力を使い過ぎると主人公が死ぬという伏線があったような気がするが、適当な理由を付けてなかったことにされている。ついでに言うと、ドサクサに紛れて、壊れたはずの知性を持つ剣も復活している。真面目に考えると頭が痛くなりそうだが、主人公自身が「どうでもいいや」と言っているので、どうでもいいのだろう。

・エピローグ


 以上が本作のストーリーである。下手すると第二期・第三期よりも質が悪く、原作者が係わるとダメになるというジンクスが今回も守られているように思えるが、それらネガティブな要素を全て吹き飛ばす一発逆転ホームランが最後に用意されている。それがエピローグである。
 ED曲が流れる中、結婚式を済ました主人公とヒロインがワールドドアで現実世界に帰ってくる。二人は秋葉原を練り歩き、電車に乗って、主人公の家へ辿り着く。その時のヒロインの表情が実にいいのである。特に電車に乗り、好奇心に瞳を輝かせて窓の外を眺めている姿は、これまでのどんなツンデレ仕草より何十倍も可愛らしい。これを見るために視聴者は長い物語に付き合ってきたのだと言っても過言ではない。それゆえ、『ゼロの使い魔』という作品を締め括る、これ以上ない最高のエンディングになっている。

・総論


 本作で物語を完結させるため、かなり強引にストーリーをまとめ上げており、お世辞にも出来が良いとは言えない作品である。実際のところ、第二期も第三期も第四期の前半も全て不要で、第一期を見た後すぐに第四期後半を見ても何の差支えもない。それでも、逃げずにちゃんと話を終わらせたという意味において、制作スタッフの努力は評価に値する物である。

星:☆☆☆☆(4個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:26 |  ☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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