『ひだまりスケッチ』

自己満足の極み。

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ひだまりスケッチ (アニメ) - Wikipedia
ひだまりスケッチとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2007年。蒼樹うめ著の四コマ漫画『ひだまりスケッチ』のテレビアニメ化作品。全十二話+特別編二話。総監督は新房昭之。チーフディレクターは上坪亮樹。アニメーション制作はシャフト。美術科所属の女子高生四人組が、学生寮「ひだまり荘」を舞台に暖かな日常を過ごす物語。蒼樹うめ特有の可愛らしいキャラクターや、第十話で作画が間に合わないまま放送した通称「富士山」などが話題になった。

・シャフト演出


 本作は俗に言う「シャフト演出」を用いて作られているアニメである。シャフト演出とは、総監督の新房昭之が『月詠 -MOON PHASE-』や『ぱにぽにだっしゅ!』などで始めた止め画や素早いカット割りなどを多用する特殊なアニメ演出のことである。つまり、動画枚数の制約による動きの少なさから、絶えず「紙芝居」と批判されるテレビアニメの特性を逆手に取り、わざと映画の文法を無視することで「動く紙芝居」感を強め、ビジュアル的な面白さを狙った斬新な手法のことだ。感覚的には、OP曲やCMなどで見られるアーティスティックな演出を、本編にも流用した物という趣が強い。
 ただ、手法としては面白いかもしれないが、映像演出としてはどうなのかという単純な疑問を覚える。演出と言うからには、脚本で描かれている心理・状況描写をさらに画的に増幅させる行為であるはずだ。では、フラッシュバックやモンタージュを多用して何を表現しているのだろうか? もちろん、これと言って大した意味はない。しいて言えば「インパクト」だが、そんな物は一回見たら確実に飽きる。結局、この手の凝った表現技法は、何らかの特別なシーンで用いるからこそ印象に残るのであって、何でもない普通のシーンで用いても目障りなだけだ。それこそ演出家の自己満足に過ぎない。

・絵


 そして、本作で用いられているシャフト演出の目玉は、ずばり「実写」である。劇中に登場する様々な小道具(時計や動物など)が実物の写真となって、カットの合間にコラージュ的に挿入される。その中には、有名絵画や彫刻の「写真」も含まれる。そこに繰り広げられるのは、精密な絵画の画像をデフォルメされたアニメ画のキャラクターが鑑賞するというかなり異様な光景だ。
 しかし、それはどうなのだろうか。本作は高校の美術科を舞台にしており、主人公達は皆、絵を描くことを何よりの楽しみとしている。それゆえ、当然、本作のメインテーマは「絵を描くこと」になる。にも係わらず、実写を演出に使うということは、絵を描くという行為から「逃げている」ことにならないだろうか。アニメーションも絵である。アニメーターの中には美大卒の人もいれば、過去に絵描きを目指していた人もいる。そういったスタッフをお膝元に抱えながら、彼らに絵を描かせないというのは重大な背信行為であろう。要するに「お前らの絵では芸術が表現できないから、代わりに実写を使う」と言っているに等しい。そんな制作スタッフが「自分がどんな絵を描いたらいいか悩んでいる主人公」を描くというのは滑稽千万である。不愉快極まりない。

・シリーズ構成


 原作は四コマ漫画でありながら、各回ごとのストーリーと全体のオチを持っているのが特徴で、連作ストーリー四コマ漫画とでも言うべき作品である。そのため、アニメ化するのは他の四コマ漫画よりも随分と楽なはずだ。だが、上述のような自己満足がシリーズ構成にも表れており、非常に不快な状況が発生している。具体的に言うと、本作は必ず一話が一日分に当たるように再構成されており、その日に起こったことを思い出しながら、最後に主人公がお風呂に入って終わりという流れになっているのだ。それは別にいいのだが、問題は一日の物語にしたせいで、原作の「体育会の準備回」と「文化祭の前日回」が丸ごとカットされたことにある。
 特に、シャレにならないのが「文化祭の前日回」だ。文化祭展示用の絵の題材が見つからず四苦八苦していた主人公が、「大切な物はすぐ側にある」と気付き、身近なクラスメイトの姿を写生する。だが、完成前に睡魔に襲われて……という主人公の心の葛藤と成長を描いた大事なエピソードなのだが、本作では前半部分が丸々省略されて回想シーン行きになったため、とんでもなくお粗末な物になってしまっている。伏線が欠けているどころか、話すら繋がっていない。しかも、余った尺に付け加えられたのは、まさかの「銭湯回」。これには原作者も驚きだろう。(ちなみに、この回が例の富士山である)
 なぜ、そのような特殊な構造にしたのか。なぜ、普通に二日間の物語にしなかったのか。結局、「一話一日と事前に決めたから」としか言い様がないのだが、そうかと思えば、オリジナルストーリーの最終回だけは二日間に及ぶ物語なのである。何と言うダブルスタンダード。自己満足にも程がある。

・内輪ウケ


 最後に問題点をもう一つだけ上げておこう。これは個人の好みに左右されるため、人によっては気にならないかもしれないが、ダメな人はとことんダメだろう。それが謎のキャラクター「うめ先生」である。要は原作者なのだが、マスコットキャラクターとして毎回登場し、キャラクターソングまで歌っている。劇中にキャラ化した作者が登場すること自体は、世の漫画・アニメではよくある定番の楽屋オチだが、実はこのキャラ、原作漫画の中には出て来ないのである(作者の自己紹介ページのみ)。つまり、アニメスタッフがわざわざ原作者をアニメに登場させるという非常に不思議なことを行っている。ここまで堂々と内輪ウケのネタをやられると、嫌悪感を通り越してかえって馬鹿馬鹿しい。ていうか、断れよ。

・総論


 本作の特徴は、すなわちシャフトというアニメーション制作会社の特徴である。それゆえ、本作を評価するかしないかは、同社の内向的な手法を許容できるかどうかになる。個人的には、シャフト演出を映像作品とは認めたくないのだが……。なお、内容とは無関係なところで優劣を決められる原作者は可哀想かもしれないが、ドヤ顔で劇中に登場している時点で同情の余地はない。

星:★★(-2個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:25 |  ★★ |   |   |  page top ↑
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