『異世界食堂』

小学生の作文。

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異世界食堂 - Wikipedia
異世界食堂とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2017年夏犬塚惇平著のなろう系ライトノベル『異世界食堂』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は神保昌登。アニメーション制作はSILVER LINK.。異世界と繋がった奇妙な洋食屋を舞台にしたハートフルファンタジー。本作の監督・シリーズ構成・脚本を一人で務めた神保昌登は、『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」としてゲッツされた件』の監督でもある。

・第一話


 舞台は日本にある一般的なスタイルの洋食屋。一人の男性シェフが切り盛りしている。ところが、OPムービーが終わると、なぜか客が全員ファンタジー世界の住民に変わっている。視聴者が呆気に取られる中、彼らは白ご飯に合う料理は何かを醜く言い争う。あのさぁ……。「普通の人々が異常なことをする」か「異常な人々が普通のことをする」から面白いのであって、異常な人々が異常なことをしても何も面白くないんだよ。この場合だと、亜人達が昼休みのサラリーマン風に普通に昼食を取っていた方が断然気になるだろう。そういうとこだぞ。その後、洋食屋の大ファンである巨大なドラゴンの女王が、人間型に変身して店にやってくる。そして、席でビーフシチューを食べた後、深鍋いっぱいのシチューを持って帰り、住処でドラゴンの姿に戻って再び食事をする。意味が分からん! こういうのは謎の美女が来店して、なぜか深鍋をお持ち帰りし、その後でネタばらしをすべきだろう。商業アニメで素人漫才みたいなことをするな。頼むから、プロが作ってくれ。

 Bパート。朝四時に起床したシェフが厨房に行くと、そこに一人の異世界の魔族の女性が横たわっていた。女性が目を覚ますと、いきなり回想シーンに切り替わり、身の上話をペラペラと口頭で説明する。それによると、彼女は人間の町の宿屋で働いていたが、正体がバレて町中から迫害を受け(?)この店に辿り着き、厨房にあったコーンポタージュスープを無断で食べて眠ってしまったらしい。この店は前日にスープを作り置きしているのか? そこはフォン・ド・ヴォーとかにすべきではないのか? そんな女性を不憫に思ったシェフは、わざわざ特製モーニングセット(メニューにない)を作って与えた後、即座に彼女をアルバイトとして雇う。そういう展開にしたいなら、最初から人手不足だって伏線を張っておけよ。そして、シェフは汚れた彼女を見かねて、シャワー室で体を洗うように要求する。洋食屋にシャワー室? ここだけ見ると十八禁の流れにしか思えないのだが、いいのか? ラストは、恐ろしく不細工なモンタージュでその日の出来事を振り返りながら、女性が異世界の廃屋で就寝する。家に泊めてやれよ!……いや、そうじゃなくて、この第一話での一番の疑問点は「なぜ、日本の洋食屋が異世界と繋がっているのか?」だろう。視聴者の感情を放置したまま話を進めるな。それは作劇における問答無用の最悪の行為である。

 こんな感じで、本作の第一話は絶望的なまでの作劇センスの無さを我々に見せてくれる。アニメの脚本教室などで悪い例として使えるレベルだ。間違いなく、2017年クソ脚本オブザイヤーの有力候補の一つである。

異世界食堂


 洋食屋に異世界の客が来る理由は、第二話冒頭の会話で簡単に説明される。それによると、先代の店主の時になぜか七日に一度、異世界と扉が繋がるようになり、それ以来ずっと異世界の住人相手に商売をしているらしい。説明になっていないと思うだろうが、本当にこれだけなので勘弁して欲しい。では、なぜ異世界食堂なのか? それに関してはあまり詳しく解説する必要はないだろう。我々の住む世界より文明レベルの低い世界を出しておき、我々にとっては当たり前のことを彼らに大げさに褒めさせる。そして、「人間凄い」=「俺、人間」=「俺凄い」という三段論法で視聴者を気持ち良くさせることが目的だ。要するにマスターベーションである。はっきり言ってクソだが、そこを批判しても仕方ない。そういう物だとして話を進めよう。

 それよりも注目しなければならないのは、シェフの腕前である。洋食屋の凄さを示したいのなら、わざわざ異世界を相手にする必要はない。本当に味が究極レベルに達していれば、普通の日本人でもかつてないほどの至高の口福を味わうことができるはずだ。逆に味音痴の異世界人を相手にすることで、その洋食屋がどれだけ凄いのかが分かり難くなってしまっている。もしかすると、彼の腕前は素人レベルなのかもしれない。もしくは、インスタント食品を温めただけかもしれない。残念ながら、その疑惑を覆すだけの証拠は劇中にはない。本作に登場するメニューは極めてオーソドックスな料理ばかりだ。これは本作最大の欠点である。まともなジャンルの作品なら、こういった疑念を一瞬でも視聴者に抱かせた時点でアウトだが、まぁ、所詮は「なろう系」である。本来、あってしかるべき物が当たり前のように欠落しているからこそ、あれだけ批判されている。

 そもそも「洋食屋」である。本作に登場する異世界の詳しい説明は何もされないが、おそらくオーソドックスなゲーム系の剣と魔法のファンタジー世界なのだろう。ということは、「中世ヨーロッパ」がベースになっているはずだ。それだと洋食屋のメニューと被ってしまうため、異世界の食文化をしっかりと定義しないといけないはずだが、実にいい加減である。例えば、ドワーフがビールを「異世界の酒」と言って驚くシーンがある。ビールが発明されたのは紀元前で、当然、中世ヨーロッパでは一般的に普及している。と言うより、ドワーフがビールを飲むファンタジーは幾らでもある。少し調べたら分かるようなことだが、本作はそういう基本的な作業をサボっている。では、どうしているかと言うと、そこで登場するのが「和食」である。中世ヨーロッパ風ファンタジーにはあり得ないメニューを提供することで、下調べの不備を誤魔化しつつ、マウントを取るのである。だったら、最初から和食屋にすれば……いや、それだと和食に対する下調べを十分にしないとすぐにぼろが出るので、何でもありの洋食屋にしているのだろう。何ともバレバレな手品の種である。

・脚本


 衝撃の第一話を経て、第二話以降はまだましになる。もっとも、第一話のような目に見える大きな間違いが少ないというだけで、作品の質は恐ろしく低い。と言うより、語るべき中身が何もないため、状況はより悪化している。

 本作は一話十五分のオムニバス形式の短編ドラマ集である。つまり、実質的には全二十四話構成であり、異世界に現れた不思議な洋食屋を舞台にして、そこに訪れる様々な異世界住人の人生模様を描いている。こう書くと何やら筒井康隆や星新一の香りがするが、残念ながら掠りもしていない。やたらと設定だけ豪華な人々が洋食屋にやって来て、料理を食べたら終わりという投げっ放しシナリオだ。ユーモアもウィットもサプライズもレトリックもブラックもサスペンスも何もない。たまにストーリーらしき物があったかと思うと、豚汁を食べて母の手料理を思い出すなど、こじつけもいいところ。『美味しんぼ』を例に挙げるまでもなく、美味しい料理を食べてどのような感情の変化が発生し、その結果、何が起こったかが大切なのに、そこに至る前に終わってしまう。確かに、異世界人が人間の料理を食べて感動したら面白いだろう。だが、本作は全二十四話である。たった一つのアイデアだけで乗り切れるほど甘くない。あくまでそれはベースであって、そこに何をプラスするかが大切である。

 シナリオも酷ければ、脚本はそれに輪をかけて酷い。とにかく、設定の説明が多過ぎる。十五分の短編ドラマには明らかに過剰な量の設定を、これでもかと劇中で説明する。しかも、ナレーションやモノローグで。中には原作の文章をただ朗読しているだけの回もある。短編ドラマなのだから不要な部分はできるだけ削ぎ落とすべきだし、映像作品なのだから映像で表現できる物は全てそうすべきだ。さらに、回想シーンの量と使い方が尋常ではない。第一話のBパートのように回想を何度も連続して使ったり、回想シーンの中でさらに思い出話をしたりする。時系列をちゃんと整理すれば、そんなタイムトラベルみたいなことはせずに済むはずだ。また、料理の美味しさを示す演出も、馬鹿の一つ覚えみたいに「おかわり」のみである。何のために多文化の異世界を舞台にしているのか。

 いつものことだが、小説とアニメでは表現方法が異なるため、内容をアニメ用にアレンジしなければならないのだが、本作はそれが全くできていない。ただ、原作に絵を付けただけだ。元々の出来が悪いのは事実だが、第五話のBパートや第十話のBパートのように、シナリオ自体はそこそこなのに脚本の構成が酷いせいで台無しになっている回もあることを考えると、アニメスタッフ側の罪は重い。

・主人公


 本作には特定の主人公は存在しない。言ってみれば、各回で洋食屋を訪問する客一人一人が主人公である。ただし、本作の目的は、異世界人を見下して自尊心を充足させて悦に入ることなので、感情の主体が人間側になる。すると、どうしても唯一の人間であり、本来は狂言回し役の洋食屋のシェフに感情移入してしまうことになる。普通のファンタジーではあり得ない不思議な状況だが、では、仮にシェフを主人公として見てみると、やはり彼の内面はいろいろと理解し難い物がある。異形の亜人達が次々と店にやってきて、中には攻撃的な態度の戦士もいるのに、なぜか異様に平然としている。一歩間違えれば身に危険が及ぶのだから、慣れでは片付けられない問題であろう。また、彼は金儲けにはあまり頓着せず、ツケも平気で容認する。おそらく、異世界に人間の文化を広めたいという使命感と、困っている人を放っておけないという献身性があるのだろう。だが、それは本当に彼の意志なのだろうか? 店と異世界が繋がったのは先代の時であって、もしかするとただ己を押し殺して父の遺志に従っているだけかもしれない。そういった裏の感情が分からない以上、やはり彼を普通の日本人だとみなすのは無理がある。ファンタジー世界の住民より何倍もファンタジーだ。

 最終回。店に二人の客がやってくる。彼らはかつて魔王と戦って世界を救った英雄の一員であり、いつものように店の料理に舌鼓を打ちながら、まるで世間話でもするかのように次のことを語り合う。昔、魔王との戦いで行方不明になった仲間がいた。だが、実は彼女は生きており、邪神討伐の衝撃で異世界に転送されたらしい。そして、彼女こそがこの店のシェフの祖母なのだ、と。……は? ……ハ? いや、何でそんな大事なことをこのタイミングで言うの? もっと作品全体の裏ストーリーになるような重要事項じゃないの? それに、シェフに異世界人の血が入っているとなると、いろいろと事情が変わってくる。実は料理に特別な魔法がかかっているのかもしれない。それでは、もうこの作品が何をしたいのか分からなくなる。もしかして、ここの制作者は作文と小説の違いを理解してないんじゃなかろうか。もちろん、作劇のセオリーなんて物は一つではなく、人によって幾らでも変わってくるだろうが……。

 ちなみに、その話をする前に食べていたのがコロッケで、常連の客が初見の客に対してこう助言する。「コロッケはソースが命」と。そのソースは市販の物なのだが? シェフの腕前、関係ねぇ! 以上、自分で作った料理を自らぶっ壊す、なろう系アニメにしかできない匠の技である。

・総論


 ただシンプルにお話のレベルが低いというストロングスタイルのクソアニメ。ある意味、このブログのためにあるような作品。

星:★★★★★★★(-7個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 10:27 |  ★★★★★★★ |   |   |  page top ↑
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