『よみがえる空 -RESCUE WINGS-』

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よみがえる空 -rescue wings-とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2006年冬。オリジナルテレビアニメ作品。全十三話(最終話はテレビ未放送の番外編)。監督は桜美かつし。アニメーション制作はJ.C.STAFF。航空自衛隊の救難隊に所属する主人公の成長を描いた青春ドラマ。主要スタッフは名作アニメ『ガンパレード・マーチ ~新たなる行軍歌~』と共通だが、特に比較する必要性は感じない。

・第一話~第三話


 本作の主人公は、航空自衛隊小松基地に所属する航空救難団小松救難隊のヘリコプターパイロットに着任することになった新人自衛官。ただし、彼は元々戦闘機のパイロットになるのが夢で、その選考に漏れてしまったため、嫌々ヘリのパイロットになった。そのため、やる気もなければ、人命救助に己を懸けようという気概もなかった。着任早々、主人公の浮付いた心を見抜いた上官は、「中途半端な奴」と彼を叱責する。だが、彼はそれを理解できない。本作は、そんなダメダメな主人公が一人前の救難隊パイロットになるまでを丹念に描いた成長ドラマである。

 主人公の鬱屈した感情を表現するために、本作の序盤は徹底的に物語の舞台である石川県小松市の悪い点を挙げ連ねている。田舎過ぎてお店がないとか、住民が排他的だとか、移動が大変だとか。当然、主人公の成長に合わせて小松市の良さを徐々に発見していくという流れなのだが、肝心の視聴者が序盤で視聴を止めてしまうと心に残るのは市の悪い印象だけ。それではただのネガティブキャンペーンだ。実在の物を材料にしてしまうと、こういうことが起こり得るので怖い。もっとも、最大のネガティブ要素であるはずの小松基地のジェット機の騒音公害だけは、華麗にスルーされているので安心して欲しい。まぁ、さすがにそれは描けないか。

 第一話。主人公が小松基地に着任した当日に、石川県で震度六強の大地震が発生する。文字通り「最初からクライマックス」である。これ以上の大きな事件はもうないだろうに、ストーリー後半はどうするつもりなのか。それはともかく、離島の被害が大きいという報告を受けたので、早速、主人公を含む小松救難隊はヘリで現場へ急行する。自衛隊は県知事の出動要請がないと動けないはずだが? 消防や警察はどこへ行ったのか(注:後のエピソードではちゃんと出動要請の描写がある)。生まれて初めて災害現場に足を踏み入れた主人公は、青春ドラマのセオリー通り、自分勝手な義俠心に捕らわれて単独行動をする。その結果、偶発的ながら子供に大怪我を負わせてしまう。悪天候の中、急いでヘリで病院に搬送するが、一歩間に合わず子供は命を落とす。ショックを受けた主人公はそこら辺にいた葬儀屋を殴り、逮捕されて留置所で一夜を明かす。完全にコントである。悲惨な災害現場で笑かしにくるのは止めてほしい。

・第四話~第六話


 第四話。一ヶ月後のゴールデンウィーク、先日の事故で心に傷を負った主人公は、相変わらず小松市の悪口を言いつつ、遠距離恋愛中の恋人につらく当たっていた。ヘリの操縦訓練でも失敗ばかり。そんな主人公を上官は「大事な物が抜けている」と批判する。当然、主人公にはそれが何なのか分からない。だが、メディック(救難員)のプロフェッショナルな厳しい山岳訓練に特別参加したことで、彼は何かに気付く。話の流れ的に考えると、おそらくそれは「仲間との信頼関係」や「人命を預かる責任感」といった具体的な欠点になるだろう。しかし、主人公は恋人に対してメールでこう打ち明ける。「俺はまだまだです」と。……はぁ!? え、今までそれすら気付いてなかったの? そういう段階? この一ヶ月間、彼は何をやっていたんだ。こうして、主人公は新人だとか未熟だとか以前に、ただ単に性格が悪い男だということが判明する。何でこんな奴に恋人がいるのか。

 第六話。夏のお盆休み。この期に及んでまだ戦闘機のパイロットに未練がある主人公は、ヘリの訓練にも身が入らず、自衛隊を辞めることまで考えていた。そして、久しぶりの恋人とのデートで本音を打ち明ける。「ほんまもんの仕事をしたい」と。彼曰く、救難隊は元々戦闘機が事故を起こした時に隊員の命を救うために作られたらしい。だから、災害出動はあくまで「サイドビジネスみたいな物」なのだと。……は? え? いや、ツッコミどころが多過ぎてどこから処理したらいいのか迷うのだが、とりあえず、そういう大事なことは第一話で言って欲しい。後、災害も戦闘機の事故も本質は何も変わらないはずだ。こいつは味方機が事故を起こすことを期待しているのか? それに、警察にしろ消防にしろ、仕事は少なければ少ないほどいいのであって、仕事を待ち望んではいけないだろう。特に、自衛隊にとっての本来の仕事は「防衛」なわけだ。もし、彼が戦闘機のパイロットになっていたら、他国の戦闘機とドッグファイトすることが彼の言う「ほんまもんの仕事」なのである。本業を行えず、一生を訓練で終えることができたら、それはそれで栄誉あることだろう。彼は根本的に自衛官に向いていないのではないか。

 ただ、真面目な話をするが、日本の自衛隊のアニメだから災害救助の話になるのであって、他国の軍隊のアニメだったら当たり前のように戦場での負傷者救助の話になるだろう。そういう意味で言うと、本作は温いなどというレベルではない。ままごと遊びレベルだ。本作は自衛隊が製作に全面協力したいわゆる宣伝アニメだが、本当に宣伝になっているのかどうかは疑問である。

・第七話~第九話


 そんなこんなで、ほんまもんの仕事を待ち望む主人公。すると、抜群のタイミングで小松基地の戦闘機が墜落事故を起こす。悪天候の中、緊急出動する主人公と上官。結果、一人は救助できたが、一人は助けられなかった。落ち込む主人公に上官は身の上話をする。実は、彼も昔は戦闘機のパイロットだったが、事故を起こして同僚を失い、無理やりヘリのパイロットに転向させられたらしい。それを聞いて、ようやく主人公にも救難隊としての自覚が芽生え、訓練に精を出す。第七話にして初めてスタートラインに立つ主人公というのも珍しい。ちなみに、どちらの事故の原因も、バードストライクや雷といった「不可抗力」であることが殊更に強調される。そりゃ、人為的ミスだったら大問題だからねぇ。戦闘機一機百億円もするし。

 さて、ここでもう一度原点に立ち返りたいのだが、そもそも、なぜ航空自衛隊の救難隊を題材にしたのかである。災害救助の現場を描きたいなら、消防のレスキュー隊を主役にした方が出動回数的に何倍も充実した作品になるはずだ。それなら、主人公もくだらないことで一々悩まなくて済む。なのに、あえて航空自衛隊の救難隊を主役にしようと思うなら、いくらスポンサー付きとは言え、やはり何らかの皆が納得できるだけの理由が必要だろう。具体的には、他にない救難隊の特別優れた点を強調しなければならない。それができないなら、本作に価値はない。

 第八話。主人公は休日に紅葉狩りに出掛け、山頂行きのロープウェーに乗る。この時点で先の展開が読めてしまうが、案の定、ロープウェーが故障して空中で立ち往生する。その際、本作において初めて消防が登場する。だが、悪天候で風が強いため、レスキュー隊の小さなヘリコプターでは救助に向かうことができない。そこで自衛隊の小松救難隊に白羽の矢が立つ。レスキュー隊にも大型ヘリぐらいあると思うが……。要するに、消防を下げることで自衛隊を持ち上げているわけだが、その倫理的な善し悪しは別にして、このエピソードにより小松救難隊のメリットは「装備の良さ」だということが明らかになる。だとしたら、もう少しヘリの性能をアピールしてもいいと思うのだが?

 もっとも、ここでの一番の問題点はそこではなく、パニック演出が非常に拙いことであろう。絶体絶命のピンチのはずなのに、ゴンドラに閉じ込められた人々がやけに冷静なのである。特に、主人公はまるでベテラン自衛隊員かのようにテキパキと皆を指導する。つい数ヶ月前まで災害出動をサイドビジネス扱いして、適当に訓練をこなしていた人物とは思えない。自衛隊員も人間なのだから、もう少し不安を押し殺して職務を全うする心理を描いても良かったのではないだろうか。

・第十話~第十二話


 第十話。本作におけるラストエピソードは、雪山で遭難した登山グループを救助するミッションである。例の如く、悪天候なので山岳救助隊のヘリが飛べず、自衛隊に出動要請が下される。こいついつも悪天候だな。そして、主人公達の活躍により、何とか一名の救出に成功する。文章にするとこれだけなのだが、このエピソードはダラダラと三話も続く。なぜなら、主人公の恋人の話や遭難者の家族の話が随時挿入されるからだ。恋人の話は本編と何も関係なく、遭難者の家族の話もそれ自体はよくできているが、遭難者自体がぽっと出のモブキャラに過ぎないため、あまり必要性を感じない。あくまで勝手な予想だが、元々の構想段階では小松基地の自衛隊員が雪山で遭難する予定で、それが制作中に何らかの理由で没になり、慌てて設定変更したせいでこのようなことになったのではないか。そう考えないと、この乱雑さはちょっと説明できない。

 以上、本作は主人公の成長物語として見るとそれなりによくできているし、職業ドラマとしてもちゃんとツボを押さえているため、どちらかと言うと良作に位置する作品になるだろう。では、すなわち面白いアニメかと問われると、申し訳ないがさっぱり面白くない。その理由も簡単で、主人公にさっぱり共感できないからだ。前述のような性格の悪さもさることながら、それに対して意見を言う人間も上官一人しかいないため、全ての面において緩い。自衛隊の、しかも救難隊ともなれば、体育会系の権化のような厳しい規律の下でハードな訓練を積み重ねているのではないのか? さらに、主人公は第一話の時点で彼女持ちな上に家庭環境にも恵まれており、人間的に非常に薄い。例えば、ラストエピソードでワイドショーのコメンテーターが無謀な雪山登山を批判し、それに対して主人公が「極限状態にいる人間の判断が正しいかどうかなんて分かるはずがない」と怒るシーンがあるが、その擁護自体がズレているし、作品全体のことを考えたら、むしろ主人公が雪山登山を批判して上官に諫められるというパターンでもいいのではないか。その思想が正しいかどうかは別にして、他人の意見に反論するだけの主人公はかっこ良くない。青春ドラマの主人公である以上、自分の信念に向かって全速力で突っ走って欲しい物だ。それがどんなにかっこ悪くとも、必ず支持してくれる人が現れるだろう。

・総論


 何を思ってこのアニメを作ったんだろう。

星:☆☆☆(3個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 09:56 |  ☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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