『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』

漫画とアニメの違い。

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GUNSLINGER GIRL - Wikipedia
GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2008年。テレビアニメ『GUNSLINGER GIRL』の続編。全十三話+特別編二話。総監督は石踊宏。監督は真野玲。アニメーション制作はアートランド。原作第三巻~第五巻の「ピノッキオ編」をベースにしたシナリオである。なお、ストーリー構成とメイン脚本は原作者自身が行っている。

・続編


 ひどく叩かれた続編作品である。その叩かれっぷりは、同じく制作会社の交代した続編である『みなみけ~おかわり~』に負けず劣らずであろう。ただ、『みなみけ~おかわり~』が原作との相違点を主に批判されたのとは異なり、本作は原作に忠実に、しかも、原作者が直接制作に参加しているにも係わらず批判されたという点が特徴的だ。では、本作はそんなに非難されるべき内容なのだろうか。実際のところ、世間一般に言われているほど悪い作品ではなく、単体で見ればそこそこの出来栄えである。だが、やはり物足りなく感じる部分が多々存在するのも事実だ。そういった点を踏まえ、本作がなぜ批判されたのか、その理由を前作と比較しながら見て行こう。

・キャスト


 まず、絶対に見逃せない点が、キャストの全変更である。この点に関しては一切の擁護ができない。確かに、前作から五年が過ぎて、キャスティングには難しい面があったかもしれないが(ヘンリエッタ役の南里侑香は当時、声優業をあまり行っていなかった)、それならそれで、たとえモザイク化したとしても一部のみ変更で済ませるべきである。理由は簡単だ。キャラクターの外見はデザインを担当した人間によって大きく変わる。それどころか、各回の作画監督によって微妙に変化する。しかし、声優が同じなら、経年劣化はあるだろうが基本的に声質は変わらない。声のイメージとはそれほどまでに視聴者の心に染み付く物であり、声が変わった時点でそれはもう別のキャラクターだ。それゆえ、キャストの全変更は、前作からのファンに対するこれ以上ない不誠実な行為であり、絶対にやってはいけないことである。この一点だけは叩かれるのもやむなしと言えよう。

・作画


 次によく言われるのが作画の劣化である。ただ、一口に作画と言っても様々な要素がある。例えば、単純にキャラクターデザインだけを見ると、実は前作よりも原作に近い。コンテや原画の質や動画枚数も、さすがに前作には負けるがそれほど酷くはない。背景は玉石混淆、良くもないが悪くもない。結局、一番の問題はその後の「仕上げ」の部分、そして、「演出」である。塗りはそれなりに綺麗だが、如何にもデジタルペイントという色使いで原作の雰囲気を再現できていない。それを覆い隠すために、画面全体にグラデーションのフィルターをかけているのだが、むしろ画的な安っぽさを助長している。そして、映画を意識したにしては手抜きにしか見えない演出の数々(ハンディカメラ風の画面揺れや粒子の粗等)。要するに、ただ漫画をアニメ化したというだけで、映像的な思い入れがあまり見られないのである。前作が細部まで拘った丁寧な作りだっただけに、予算面での難しさはあるだろうが、もう少し気合を見せて欲しかったところだ。

・そしてピノッキオは人間に


 本作のストーリーはピノッキオ編と呼ばれるものである。義体のトリエラと五共和国派の若き殺し屋ピノッキオとの因縁のライバル関係を描いたストーリーで、殺しの道具として育てられた合わせ鏡のような二人が出会ったことにより、人間らしさや自分らしさを見つめ直すという原作でも人気のエピソードである。原作者自身がストーリー構成を手がけているため、アニメ版でも原作とほぼ同様の物語が繰り広げられる。では、当然、面白くなるはずだが……そうはならないのが、アニメーションの難しさであろう。
 つまらない理由は明白である。と言うのも、ハードボイルドなシリアスストーリーである以上、どうしても「敵側の描写」が多くなってしまうからだ。当然、義体達の可愛らしい日常を描いたシーンは反比例的に減らされる。つまり、一期があくまで義体を中心とした「萌えアニメ」だったのに対して、二期は義体が物語のコマでしかない。漫画とアニメのファン層の違い、表現方法の違い、尺の違いなど様々な理由があるが、漫画とアニメを全く同じに作っていけないということだけは確かだ。

・そしてヘンリエッタは空気に


 もう少し、具体的に言おう。それは「本作のメインヒロインは誰か?」ということである。実際のところ、原作では誰がメインかという扱いはない。言ってみれば、義体全員がヒロインであり、同格の扱いである。ただ、アニメ版はそうではない。誰の目にも明確に「ヘンリエッタがメインヒロイン」である。なぜなら、一期がそういう構成で作られているからだ。
 ところが、二期ではトリエラがメインになり、ヘンリエッタは脇に追いやられる。ヘンリエッタがメインのエピソードは二話だけで、最終回ですら出番はない。これが外伝なら何も問題はないのだが、本作は正式な続編である。そのため、ヘンリエッタを目当てで見始めた視聴者が肩透かしを食らうという事態が発生する。一期ではメインだったはずのヒロインがほとんど画面に出てこない。では、一期は何だったのか、そう感じてしまうのだ。
 ここは少し原作の展開を変更してでも、ヘンリエッタの出番を増やすべきだった。もしくは、完全に舞台上から追い出すかだ。それぐらいやらなければ、一期の呪縛から逃れることはできなかっただろう。主人公とメインヒロインは、それほど物語にとって重要なファクターなのだ。ちなみに、もし三期があるなら、ヘンリエッタはもっと出番が減ることに留意されたし。

・音楽


 ここまで欠点を見てきたが、では、本作が前作に勝っている部分は一つもないかと言われると、実は一つだけ存在する。それが音楽である。残念ながら、一期は主題歌も含めてあまり音楽面に関しては恵まれていなかった。しかし、二期はより分かり易くて印象に残るアニメらしい音楽になっている。特に、実写を用いたOPムービーは映像芸術的に見ても素晴らしい。ただ、それも後半では原作者自身がコンテを切った面白くも何ともないムービーに差し替えられてしまうのだが。

・総論


 「原作者が口を出すとダメになる」、この法則が見事に守られた作品である。ただ、原作者は比較的良い仕事をしているのだ。複雑な物語をしっかりと全十三話で完結させている。それゆえ、失敗の責任は、漫画とアニメの違い、しいてはアニメの方向性を明確に打ち出せなかった監督にある。

星:☆☆☆(3個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:40 |  ☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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