『鉄腕バーディー DECODE』

モッタイナイ。

公式サイト
鉄腕バーディー - Wikipedia
鉄腕バーディーとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2008年。ゆうきまさみ著の漫画『鉄腕バーディー』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は赤根和樹。アニメーション制作はA-1 Pictures。遠い宇宙からやってきた肌も露わな怪力のスーパーヒロインが、地球を守るために悪と戦うSFアクションコメディー。アニメ本編よりも、グラビアアイドルの木口亜矢によるヒロインのコスプレの方が話題になった。

・概説


 女性版『ウルトラマン』といった作品だ。強靭な肉体とずば抜けた身体能力を持つ宇宙連邦捜査官のヒロインが、謎のエネルギー源「リュンカ」を持ち去った逃亡犯を追って地球にやってくる。しかし、廃ビルでの逃亡犯との交戦中、偶然そこに居合わせた高校生の主人公の命を誤って奪ってしまう。身から出た錆、主人公の体が修復するまで、仕方なく彼の魂を自分の体の中に宿すことにしたヒロイン。こうして、二人は奇妙な「二心同体」の生活を始めるのだった。
 以上を基本設定として、本作はアニメ版独自のストーリーが展開される。惑星一つ吹き飛ばす程の力を持ったリュンカを巡って、様々な陣営の様々な思惑が交差する。実はリュンカとは宿主になった人間の中で萌芽し、成長後にその星の生物を食い尽くす生体兵器であり、今回、その宿主に選ばれた人物こそ主人公の愛する人であった。地球を守るために宿主ごとリュンカを処理できるのか、主人公とヒロインは苦悩する。やがて、覚醒を始めるリュンカ。世界の消滅が迫る中、二人の選んだ結論は?
 このように、善と悪が複雑に絡み合った非常に重厚な物語であり、それ単体でも十分に評価されるべき内容である。リュンカの力を欲するのがただの悪質宇宙人ではない(本作の黒幕は選民思想を持つ地球人)という点も、内容に深みをもたらす良いアクセントになっている。だが、見方を変えると、ここが一番の落とし穴にもなっている。と言うのも、ストーリーを構築することが本作における最優先事項であり、それ以外の付帯要素が完全に後回しになっているからだ。

・モッタイナイ


 本作は非常に「もったいない」作品である。それは、良くできた設定を全く生かし切れていないという意味においてのもったいなさだ。例えば、二心同体という設定一つ取っても、グラマラスな女性宇宙人と擬似的な同棲生活をする訳だから、幾らでも面白くなりそうなシチュエーションを描けるはずなのに、そういった日常的なコメディーシーンは劇中にほとんど出てこない。正義を守るために宇宙連邦捜査官に変身して戦うというウルトラマン設定にしてもそうだ。他にも、姉や幼馴染み、廃墟マニア、報道研、オカルト記者などといった上手く扱えばどうとでもなるはずの「死に設定」がてんこ盛り。特に、異性の幼馴染みなどは、正体を隠した変身ヒーロー物にとって話を盛り上げる格好のネタなのに、主人公の恋人役が別にいることもあって、本作では完全に空気である。
 そんな死に設定の中でも最たる物が「有田しおん」である。ヒロインの地球での仮の姿であり、芸能界に紛れている逃亡犯に接近するため、そして、自らの生活費を稼ぐために色物グラビアアイドルに扮して活動している。お馬鹿な宇宙人アイドルという設定から来る妙な口調は、CVの千葉紗子の好演もあって非常に面白く、生真面目な連邦捜査官とのギャップも含めて他に類を見ない好キャラに仕上がっている。だが、大暴れしている次回予告を除いて、本編での出番はほとんどない。本当に序盤の顔見せ程度の出演で、終盤になると存在すら忘れ去られる。せっかく用意した魅力的な設定が物語に絡まないのは、視聴者にとっても残念なことであり、大幅なマイナスポイントである。

・戦闘


 本作は、ダイナミックなアクション作画に定評のあるりょーちもが総作画監督を務めており、生身で戦うスーパーヒロインという設定と組み合わさって、その戦闘シーンの出来栄えに期待が集まった。実際、第一話は脚本・コンテ・作画・演出、どれをとっても屈指の完成度を誇る良回である。躍動感のある空中の動き、しなやかな体のライン、迫力のある肉弾戦は深夜アニメのレベルを軽く超えており、ハリウッド大作映画などと比べても全く遜色がない。それゆえ、これはどんなに凄い作品になるだろうかと視聴者は期待に胸を膨らませた。
 だが、その後が続かない。予算と時間の都合もあるのだろうが、第二話以降は急激に劣化し、普通の変身ヒーロー物に成り下がる。そもそも、バトルシーンの数自体が少なく、たまにあっても第一話のように画面狭しと軽快に動き回ることはなく、すぐに決着が付いてしまう。精々、第九話のマリオネット戦と最終回のリュンカ戦が少し目立つ程度だ。この辺りも実に「もったいない」点である。もし、メインストーリーの方に重きを置き過ぎたせいで、戦闘シーンにまで手が回らなくなったのだとしたら、本末転倒としか言い様がない。本作の目玉は肌も露わな美少女による格闘アクションであって、それ以上でもそれ以下でもないのだ。デートシーンに貴重な動画スタッフを割いている場合ではなかった。最大のアピールポイントを生かせていないという意味において、本作のがっかり度合いは他のアニメの追随を許さない。

・改善案


 では、どうするのが最良の方法だったのだろうか。繰り返しになるが、本作の欠点は初期設定がストーリーとシナリオにほとんど絡まないことである。となると、その設定に沿った物語をどこかに入れておきたいところだ。具体的に言うと、主人公=ヒロインがその特殊な体質を生かして悪人をなぎ倒す勧善懲悪の一話完結型エピソードである。内なるヒロインに翻弄される主人公、二心同体がゆえの予想も付かないドタバタ日常、嫉妬する幼馴染み。そういった王道の物語が数話、贅沢を言えば1クール近くなければ、設定を十分に活用したとは言い難いだろう。もちろん、メインストーリーにも入り込む余地はあるはずだ。敵陣への潜入調査に有田しおんは有効だろう。高校の報道研究部でしか描けないことも多数ある。
 また、もう一つ必ず改善しなければならないのは、主人公とヒロインの関係性である。ただの運命共同体ではつまらない。主人公は家族と別れて一人暮らしを始めたばかりの高校生、そこへ年上の押しの強い宇宙人ヒロインが転がり込んできたわけである。当然、パートナーであり戦友であり家族であり姉であり友達であり、そういった幾つもの要素を兼ね備えた複雑な関係性になるはずだ。文化間ギャップ、世代間ギャップ、男女間ギャップ、そして、それを乗り越えた先にある普遍的な共通感覚、そういった物をもっと強調していれば、本作は何倍も面白くなったに違いない。

・総論


 とにかく、第一話は素晴らしい。このクォリティを保ったまま最終話まで続いていれば、間違いなくアニメ史に残る傑作になっていただろう。そういう意味でも、本作はせっかくのチャンスをふいにしたもったいない作品である。

星:☆☆☆☆(4個)
関連記事
スポンサーサイト
テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:32 |  ☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
twitter
検索フォーム
最新記事

全記事一覧
評価別一覧
年代別一覧
掲示板
カテゴリ
リンク
カウンター
RSSリンクの表示



にほんブログ村
PR1
PR2