『鉄腕バーディー DECODE:02』

改善された傑作。

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鉄腕バーディー - Wikipedia
鉄腕バーディーとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2009年。テレビアニメ『鉄腕バーディー DECODE』の続編作品。全十三話。監督は赤根和樹。アニメーション制作はA-1 Pictures。前作の評判があまり芳しくなかったため、第二期の制作が発表された時はファンの間でも驚きを持って迎え入れられた。

・成功続編


 通常、続編作品がオリジナル作品を超えることはないと言われている。事前の期待感だけが空回りした続編は、前作を超えるどころか元の雰囲気を再現することにすら失敗し、結果的にシリーズ自体を終わらせて「なぜ続編を作った?」とファンになじられるのがオチだ。当然、その傾向は元が名作であればあるほど高くなる。初見のインパクトという最大の援護射撃がない状態では、ハンデが大き過ぎて勝負にならない。もちろん、元の評価が低かった場合は超えることもできるだろうが、そもそも、名作だからこそ続編が作られるのであって、存在自体が矛盾している。
 ただし、オリジナルが採算度外視の実験作であった場合はその限りではない。一般的な人気はあまり高くなくても、何らかの傑出した独自性・将来性が見られる作品は、期待値込みで続編が作られることもある。そういった例はゲームに多く、あくまでマニア向けだった一作目を修繕し、二作目以降で一般層にブレイクを果した作品は数多く存在する。その一番分かり易いケースが、今や国民的ゲームの『モンスターハンター』である。初代モンハンは、あくまで出来の良いアクションゲームに過ぎなかったが、携帯機に移植されるや否や、皆でわいわい盛り上がれるコミュニケーションゲームへと昇格した。そして、本作も後者に分類されるパターンであり、第一期は決して成功したとは言い難い作品であったが、その独創性に対する期待感から第二期が制作され、結果的に前作を上回った稀有な作品である。

・モッタイナクナイ


 本作の素晴らしい点は、なぜ前作が失敗したかをよく研究し、その欠点をしっかりと改善していることである。前作の失敗とは、すなわち物語に生かされることなく闇に消えた「死に設定」の数々である。姉、幼馴染み、廃墟マニア、報道研、オカルト記者、そして、有田しおん。驚くべきことに、そういった設定が本作では見事に物語として昇華されており、前作のガッカリ感からは想像もできないほどの進化を遂げている。特に、第二期は「幼馴染み」が重要キーワードであるため、主人公の幼馴染み、そして、彼女の所属する報道研が物語に大きく係わっている。特に第三話や最終話などは、報道研が存在しなければ成立できなかった良回である(ただし、幼馴染み自身はあくまで脇役であり、彼女の相手役も別に存在する)。また、前作にはなかったメインストーリー外の悪人退治の回も存在し、『鉄腕バーディー』の世界に深みを与えている。
 そして、何より「有田しおん」だ。前作ではまともに活躍したのは第一話だけで、完全に設定だけの空虚な存在になってしまっていた。しかし、本作ではストーリー上、ヒロイン自身が自分の足で活動することが多く、結果的に地球での仮の姿である有田しおんがフィーチャーされることになる。当然、お馬鹿キャラとスーパーヒロインとのギャップや、嫌々ながら芸能活動をする場面など面白いシーンが数多く見られる。それゆえ、次回予告だけのネタキャラから脱却し、穏やかな日常の象徴として、本作を語る上で無くてはならない存在にまで成長している。

・ストーリー


 前作の一ヶ月後、リュンカ事件の首謀者が脱走して地球に逃げ込んだ。宇宙連邦からの逮捕命令を受けたヒロインは、芸能活動と並行して彼らの足取りを追う。しかし、彼女の行動を先回りして脱走犯を始末する謎の人物がいた。その人物こそヒロインの幼馴染みであり、かつて彼らから差別と迫害を受けていたこと、リュンカに親友を殺されたことなどを理由にその復讐を果たそうとしていた。自らの命を犠牲にする「力」を使ってまで悲願を達成しようとする幼馴染みと、苦悩しつつそれを止めようとするヒロイン。やがて、二人は拳を交え……。
 以上が本作のメインストーリーである。元々、ストーリー構成には定評があったが、本作は幼馴染みとの宿命の対決という縦軸にヒロインの過去話という横軸を加えることによって、物語の厚みを何倍にも深めている。特に原作のエピソードを元にした過去話は、人種差別と家族のトラウマという深夜アニメの枠を遥かに超えた重いテーマを扱っており、比類なき高い完成度を誇っている。また、お互いのことを大事に想いつつ、決してそれを口に出せない幼馴染み同士の切ない関係をしっかりと描写し、大人向けの恋愛ドラマとでも言うべき形を構築しているのも見逃せない。原作のファン層である二十代三十代男性に、ちゃんとターゲットに合わせてあるのが見事だ。ただ、残念なのは、幕切れが少々あっさりし過ぎていることだろうか。ラストバトルが終結した後、何の余韻もなくエンディングが始まってしまう。後五分も尺があれば、感動的なエピローグを描けていただろうに。

・戦闘


 本シリーズの最大の売りであった迫力のあるアクロバティックな戦闘シーンは、当然、本作にも継承されている。しかも、前作のように第一話をピークにして尻すぼみになるのではなく、全話に渡って同一クォリティの激しい肉弾戦を楽しむことができる。ただし、深夜アニメの予算と時間の都合上、戦闘シーンの作画レベルは他よりも一段落としてある。ぬるぬる動く代わりに人体の歪みが恒常的に発生する。とは言え、気になるレベルではない。画像の粗は十分に演出が補っており、戦闘の面白さは保証する。
 また、本作のもう一つの特徴に、手加減のないバイオレンス描写が挙げられる。グロテスクとも呼べるような容赦のない暴力・流血描写が各所に散見でき、制作スタッフの本気度が見て取れる。そのため、耐性のないお子様にはオススメできない。もっとも、物語のベースが差別に対する復讐劇である以上、そういった部分で手を抜く方が失礼だ。心の痛みを描くためには、きっちりと体の痛みも描かなければならない。それゆえ、決して見た目のインパクトだけで凄惨なシーンを入れているのでなく、ストーリー演出上の必然である。それがよく分かるのが次に紹介する第七話のBパートである。

・第七話Bパート


 話題になったので、知っている人も多いだろう。ヒロインの過去(正確に言うと記憶の中)における戦闘シーンだ。ここでは極限まで作画を簡略化して、ラフ画にそのまま色を付けたような砕けた映像を使っている。心無い人には作画崩壊だと揶揄されたりもした。しかし、実際に見て頂ければ分かると思うが、このシーンの情報量は異常である。人物画だけでなく背景までもを全て一枚画の中に取り入れ、目で追うことができないぐらいのスピード感で縦横無尽にカメラとキャラクターが動き回り、予算の限られている深夜アニメでありながら、大作映画並みのアクションを再現している。また、ここは育ての親との別離の場面である。そのため、そんな感情の爆発を崩れた人物画が痛々しいほどリアルに表現しており、アニメーションの枠を超えた高レベルな映像芸術となっている。見た目が綺麗なだけで、人間が生気のないマネキン化しているアニメが多勢を占める中、画で魅せることにこだわっている本作は非常に貴重である。萌えアニメだけがアニメではない。ただし、このシーンは視聴者の批判を受けたことによってDVD版では修正されてしまっており、台無しになっている。今や違法動画サイトでしか見られないというのは、何かが間違っているような気がする。
 なお、この作画の崩しは最終回でも用いられており、第七話以上の迫力のある戦闘シーンを作り上げているが、こちらは演出と言うよりただ時間が間に合わなかっただけに見えるのは残念だ。第七話は精神世界の物語というエクスキューズがあったため、良い効果をもたらしていたことを忘れてはならない。斬新な演出も使い様ということだ。

・総論


 傑作である。あの拙劣な前作からここまで化けるとは誰も想像していなかっただろう。しかし、売り上げが伸び悩んだため、第三期は作られていない。どんなに良い物を作ろうと『モンスターハンター』にはなれないのがアニメ業界である。そして、今日もまた視聴者に媚びた萌えアニメが大量生産されることになる。

星:☆☆☆☆☆☆☆☆(8個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 23:25 |  ☆☆☆☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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