『ローゼンメイデン トロイメント』

消化不良な続編。

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ローゼンメイデン - Wikipedia
ローゼンメイデンとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2005年。テレビアニメ『ローゼンメイデン』の続編作品。全十二話。監督は松尾衡。アニメーション制作はノーマッド。一応、原作のエピソードも幾つか含まれているが、内容的には完全にオリジナルである。監督の言によると、第一期で描き切れなかった「アリスゲーム」が今期のテーマとのこと。なお、その脚本会議には原作者のPEACH-PITも参加している。

・続編


 アニメーションに限らず、様々なエンターテインメントにおいて、一般的に「続編作品はコケる」と言われてる。ここで言うコケるとは、営業的な失敗だけではなく、内容的な失敗も含む。当然、前作の完成度が高ければ高いほど、その確率は高くなる。一見すると、後発の方が先発の問題点を十分に認識した上で制作できるため、全体的なクオリティが向上するように思われる。実際、続編の方が完成度の高い作品は多い。だが、世間の評価が出来栄えと比例するとは限らず、一作目のインパクトが全てにおいて優位性を持ち、後発はあらゆる面で先発と比較されて、最大の障壁が過去の自分自身になったりする物なのだ。また、原理主義者の前作ファンが抵抗勢力になり、些細なミスを論ってネガティブキャンペーンを行ったりもする。そうなると、どんなに創意工夫を凝らして頑張っても無意味になり、続編を作ったこと自体が間違いだったと揶揄されるのを待つだけになる。もちろん、続編が成功して長期シリーズになった作品も多数あるのだが、それでも、ファンは「一作目が一番良かった」と過去を懐かしむ物だ。とは言え、前作で高い評価を得たからこそ続編が作られるのであり、この一連の流れは逃れられない宿命のような物なのだろう。ファンの放送前の期待から放送後の失望への移行は、最早、お約束の様式美と言ってもいいぐらいの恒例行事である。
 では、それ以外の具体的な失敗の原因は何だろうか。幾つか考えられるが、よくあるのは前作を上回るために良かれと思って付け加えた新要素が、かえって自分達の首を絞めるというパターンである。例えば、話のスケールを大きくするために物語の舞台を広げたら、閉鎖空間における恐怖という最大の特徴を失い、ただのパニックアクションになってしまったホラー映画などがそうだ。同じことを繰り返すだけなら能がない。新しいことに挑戦して新しい風を作品に吹き込みたい。しかし、それでオリジナルが持っていた良さを失ってしまっては何の意味もないのである。奇をてらえばいいのではない。必要なのは、同じことを繰り返す勇気だ。なぜなら、ファンが望んでいるのは同じことなのだから。そして、この『ローゼンメイデン トロイメント』という作品も、高い評価を受けた前作に新しい要素を付け足そうとして見事に失敗した続編作品である。

・アリスゲーム


 実際のところ、第七話までは全く問題がない。第一期では出番のなかった第二ドールの金糸雀や第一ドールの水銀燈のミーディアムといった原作のキャラクターも登場し、前作同様、非常に『ローゼンメイデン』らしい「何でもあり」のファンタジックドタバタバトルコメディーを存分に楽しむことができる。かつて不登校だった主人公も、第二期では中学校復学を目指して猛勉強中であり、幼馴染みキャラとも親密さを増すなど、ちゃんと成長の跡が感じられてファンにも嬉しい作りになっている。また、オリジナル色が強かった前作のストーリーのフォローもちゃんと行っており、何とか軌道修正して原作に近付けさせようという強い意思が感じられる。特に、復活した水銀燈に対して真紅が謝罪する第六話のシーンなどは、本作屈指の名場面であろう。
 ただ、問題はその後である。第八話以降のストーリーは、ローゼンメイデンの末妹・第七ドールの薔薇水晶を中心にして繰り広げられる。アリスゲームを制してアリスになるというローゼンメイデンの使命に忠実で好戦的な彼女の介入によって、姉妹達の平和な時間は終わりを告げ、新たな戦いが開始されるのだが、これがどうにも収まりが悪く消化不良感が満載なのだ。つい先程まで仲良く暮らしていたはずの姉妹が、突然、命を懸けた殺し合いに身を投じる動機がいまいち伝わらず、どこを取っても唐突さが否めない。真紅に至っては、アリスゲームに頼らずにアリスを目指すと宣言してしまっており、モチベーションの欠片もない。そのため、各人によって温度差が凄まじく、まるで無理やり参加させられた社内運動会のようなノリになってしまっている。これでは盛り上がる物も盛り上がらない。
 おそらく、制作スタッフは「穏やかな日常が一瞬にして崩壊する恐怖感」を演出したかったのだろう。だが、あまりにも厭戦的なムードを描き過ぎていたため、彼女達の行動に非常に大きな違和感を覚えるのが正直な感想だ。今までは好戦的なドールを一人一人諌めていくことに重点が置かれていたため、あまりその不自然さに気付かなかったが、いざこうやって目の前に差し出されるとアリスゲームという設定自体の奇妙さに向き合わざるを得ない。アリスになることがただの目標ではなく逃れ得ぬ宿命だとしたら、なぜそれまで平和に過ごすことができたのか。はたして、「ずっと同じ楽しい日常が続いて欲しい」という視聴者の願いを振り切ってまで描かなければならないアリスゲームとは、一体何なのだろうか?

・第七ドール


 その消化不良感をさらに増幅させるのが、第七ドール薔薇水晶の存在である。ネタバレになるが、実は彼女はローゼンメイデンではない。人形師ローゼンの弟子が、師匠を越えるためにローゼンメイデンを模倣して作った自動人形(詳細不明)である。彼女は第七ドールを詐称して偽りのアリスゲームを演出し、ドール達からローザミスティカを奪って自らがアリスになろうと企む。ローゼンメイデンではないのにアリスになれるのかという単純な疑問もさることながら、模造品にしてはあまりに強過ぎるように感じるのも問題だ。彼女は永久エネルギー炉であるローザミスティカも、力の媒体となるミーディアムも持たない完全自律型なのに、その強さは一体どこから出てくるのだろうか。それこそ、悪魔と取引して手に入れた動力源を用いた戦闘特化型アンドロイドなどといった特殊な設定を盛り込むべきだったのではないだろうか。なぜか不老不死の弟子の正体も含めて、どうにも事前の練り込みが甘いように感じる。
 そして、激しい戦いの末、薔薇水晶は六体のローゼンメイデンを倒すことに成功する。しかし、彼女達から奪ったローザミスティカは「偽物」である薔薇水晶を受け入れず、その力に耐え切れなかった彼女の体はあえなく崩壊してしまう。劇中の台詞にある通り、「偽りには真実の光は眩し過ぎる」という展開は理解できる。彼女は感情表現が乏しく言動も幼稚で、人間的にもかなり未成熟だからだ。だが、物語的にはこれで終わりである。結局、薔薇水晶の自業自得だったというだけで、自らが課した「アリスゲームとは何か?」の問いに全く答えられていない。こういう展開にするなら、本物と偽物の違いをもっと明確に強調しなければならないだろう。両者の最大の違いとは何か? それは当然、作品テーマにもなっている「ミーディアムとの絆」である。ミーディアムと共に生きるローゼンメイデンと、人間の力を必要としない自動人形、この両者の生き方を比較して描かなければならないはずだが、描かれるのは「姉妹の絆」だけで、肝心の人間の存在が蚊帳の外になってしまっている。自分の将来のために猛勉強中の主人公は物語にほとんど係らない。むしろ、薔薇水晶とローゼンの弟子との絆の方が殊更に描かれる。その状況は非常に残念だと言わざるを得ない。同じように生きているのに、ただ生まれの違いだけで紛い物扱いされた薔薇水晶は哀れですらある。

・ノーカン


 さて、薔薇水晶の勝利で終わった今回のアリスゲームだが、当の本人はアリスになれずに壊れてしまった。では、この混迷化した状況にどう収拾を付けるのだろうと思って見ていると、突然、光の中から現われた「お父様」によってローザミスティカは元の体に戻され、薔薇水晶の犠牲者ではない蒼星石と雛苺を除くローゼンメイデン全員が復活する。つまり、薔薇水晶はローゼンメイデンの一員ではないので、先程までの戦いは全てノーカウントという扱いである。一体全体、それは話のオチとしてどうなのか。思わず視聴時間を返せと言いたくなる。また、その際、主人公こそがお父様の化身であるかのような描写があるのだが、この流れだと主人公がアリスゲームの継続を望んでいるように見えてしまう。それはおかしい。本当に主人公=お父様なら、ちゃんと蒼星石と雛苺も元に戻していたはずだ。結局、ファンタジックなオカルトで全てを丸く収めただけで、問題は何も解決していないのである。これだけやって出した結論が、「アリスゲームは無慈悲である」という第一期と同じ物では、視聴者は納得しないだろう。
 このように、主人公の成長物語という一本の筋がしっかりと通った第一期に比べて、本作は何ともまとまりのない作品である。いくら意図的とは言え、楽しい日常が外部の者に無理やり引き裂かれる感覚は見ていて楽しい物ではない。また、第一期の完成度を崩してまで導入した「アリスゲームとは何か?」というテーマについても、少なくとも本作では何一つ結論を出せていない。どうも、原作者を含む制作スタッフ全員がこの問いに対する答えを正確に把握できないまま、見切り発車してしまったように思われる。元々、アリスゲームは不合理な設定だ。ローザミスティカを七つに分けた理由が不明だし、姉妹に殺し合いをさせる必要性も分からない。そもそも、姉妹七体の内、三体がゲームの意味すら理解していない時点で破綻している。この第二期でその矛盾に何らかの解答を出してくれることを期待したが……結局、本作ではローゼンメイデンの謎が何一つ解明されることはなく、徒に混迷を深めただけであった。

・総論


 ファンが望んでいたのは新しい物ではなく、前と同じ物だった。悪いことは言わないから、第三話~第七話の日常話を延々とループさせるのが吉である。

星:☆☆☆(3個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 21:58 |  ☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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