『みつどもえ』『みつどもえ 増量中!』

今後に期待。

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みつどもえとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2010年、2011年。桜井のりお著の漫画『みつどもえ』のテレビアニメ化作品。全十三話+特別編一話。監督は太田雅彦。アニメーション制作はブリッジ。「日本一似ていない」小学六年生の三つ子を中心としたギャグアニメ。名前と内容のせいで勘違いされやすいが、原作者は女性である。ここでは、第二期に当たる『みつどもえ 増量中!』全八話もまとめて紹介する。

・勘違いネタ


 本作は、個性的な小学生達が繰り広げるテンポ重視のドタバタ系ギャグアニメである。一つのクラスがそのまま作品の舞台に相当するため、非常に登場人物が多い。かの『ちびまる子ちゃん』に何倍も毒を加えた感じと言えば分かり易いだろうか。だが、そんな華やかな見た目に反して、物語の本軸となるネタは基本的に二種類しかない。それが「勘違いネタ」と「下ネタ」である。魅力的な三つ子の女の子を主人公に擁し、他に幾らでも話の作り様があるはずなのに、なぜか驚くほどこの二つにばかり固執している。それゆえ、本作の内容は非常にワンパターンな印象を受ける。
 勘違いネタとは、要するに誰かが発した言葉を聞き間違え、自分の中で勝手に別の事象と置き換えた人が、勘違いしたまま行動する内に元の事象とのズレが大きくなり、そこに面白みが生じるというお笑いのパターンである。落語等で重用されていることで分かる通り、技術的には難易度が高く、上手くハマれば高い効果を生み出すタイプのネタであるが、本作はあまりにもその頻度が高過ぎる。数にしても半分近く、展開に困ったら勘違いネタというレベルだ。全く無関係な物を巧みに結び付ける作者の発想力は見事だが、ストーリーのパターンが毎度同じでは台無しである。せっかく面白い設定を用意しているのだから、そこまで捻らなくても十分に話を構築できるのにもったいない。
 ただ、こうなっているのにも理由があり、それは本作が原作漫画の第一巻・第二巻を中心にアニメ化されているからである。キャラクターが固まっていない連載初期は、方向性が定まるまでいろいろと手探り状態になるのはよくある話だ。実際、原作では巻数が進むにつれ、ネタのワンパターンさが減ってオーソドックスなギャグ漫画へと変遷している。それなら、アニメ化する際のストーリー構成で、マンネリ化しないようにもう少し気を使ってあげるべきだったのではないだろうか。

・下ネタ


 もう一つ、重要視されているのが下ネタである。ある意味、本作の代名詞的な位置付けと言ってもいい。小学校が舞台の物語なのに、胸や下着ネタが当たり前のように登場し、しばしば全体のオチにもなっている。今も昔も、少年漫画にそういった要素が出てくるのは普通の光景なので、それに対して批判をする気はないが、本作は他のお色気漫画とは少し異質な雰囲気を湛えている。と言うのも、全般的に下ネタがストレートで捻りやぼかしが少なく、極めて大人的だからだ。また、登場人物も「ませた小学生」ではなく、あくまで「スケールダウンした大人」として描いている。つまり、小学生らしい無邪気さゆえのエロではなく、最初から目的のある大人の変態行為なのである。もっと端的に言うと、「親父ノリ」だ。それが作品の個性とは言え、掲載誌が『週刊少年チャンピオン』という少年誌でありながら、読者ターゲットが完全に成人男性向けなのはあまり頂けない。
 また、下ネタにこだわるあまり、設定的な奇妙さをも生んでいる。次女は女性の胸が大好きで裸婦絵を描くのが趣味。三女はこっそりとエロ本を読むのが趣味。この時点でキャラが被っているという初歩的なミスが存在するが、それ以上に気になるのは、彼女達の家が「父子家庭」だということだ。離婚したのか他界したのかは分からないが、三つ子がかなり小さい頃から片親だということは描かれている。つまり、母親の存在を知らずに育った子供達が、偏執的に女性の裸に興味を示しているのである。これでは、どうしても発達心理学的な面に目を向けざるを得ない。不用意な発言は控えるが、彼女達が愛情に飢えているのは間違いないだろう。そう考えると、いろいろと問題のある設定である。

・キャラクター


 さすが、個性的なキャラクターが揃っている。「日本一似ていない三つ子」のキャッチフレーズは伊達ではなく、本当に似ていない。似ているところを探すのが困難なほどだ。できれば、性格はそのままでいいから、見た目の共通項は一つぐらい欲しかったところ。また、作画が非常に丁寧で、キャラクターデザインも可愛らしいのだが、原作ファンにはあまり評判が良くないようだ。確かに、アニメ画に原作のような色気はなく、綺麗過ぎて際どいネタとの擦り合わせが悪いということもあるのだろう。ある意味、少年漫画原作のアニメが常に抱えている宿命とも言えよう。
 ただ、本作におけるそれ以上の問題要素は、CV(キャラクターボイス)である。特に、メインキャラクターである三つ子役の声優は各々に難点を抱えている。三女のひとは役の戸松遥は、『かんなぎ』でもそうであったように、低音で演じると地声が混じってキャラクターがぶれてしまう。次女のふたば役の明坂聡美は、声質が元気キャラと致命的に合っておらず覇気もない。そんな中、長女のみつば役の高垣彩陽だけは、アニメらしいメリハリのある演技をしているが、他二人の体たらくに足を引っ張られて明らかに一人だけ浮いている。主役がそんな状態なので、クラスメイトの中にも小学生キャラを演じ切れていない役者が何人か含まれている。本作のようなキャラクター先行の作品で、CVに違和感があると厳しい。
 一方、三つ子が主人公ということで、自動的に「家族」というテーマがクローズアップされるが、それに関しては意外とよく描けている。三つ子はそれぞれ独立志向が高く、普段はほとんど会話も交わさないが、心の中ではちゃんと大事な存在だと思っているということが劇中の細かな描写から見て取れる。父親との関係にしても、年頃の女の子らしく幼い反発心を見せるが、心から嫌っているというわけではない。女性漫画家の原作ということも影響しているのであろうが、この辺りのバランス感覚が本作は微妙だ。ただ、もう少し三つ子だけの絡みがあっても良かったのにと思うのは正直な感想である。これだけ豪華な食材が揃っていれば、下手に調味料を加えなくても美味しい料理は作れるだろう。後、いくら他に適当な人材がいないとは言え、三女が家事全般を取り仕切っているという設定はさすがに無理がある。父子家庭特有の環境も踏まえて、家族の「生活」については一考の余地があるだろう。

・増量中


 予算との兼ね合いによる物なのか、第二期は全八話しかなく、内容もそのまま継続なので一括してこちらに書く。上述の通り、原作は回を重ねるごとに漫画として成長しているので、アニメ版第二期でもそういった面が垣間見える。安直な下ネタが減った代わりに、三つ子とクラスメイトの交流話が増えており、各キャラクタ―の個性を生かした物語作りができるようになっている。特に、長女とライバルキャラのお嬢様とのやりとりは楽しくも微笑ましい。また、次女と男子生徒の幼馴染み関係も強調されていて良い。そういう意味では、全体的な作品レベルは第一期よりも確実に向上している。
 細かい注目点を挙げると、あえて長女のお腹を出っ張らせているのが面白い。主役クラスの食いしん坊・肥満キャラは世のアニメによく登場するが、ビジュアル的にちゃんとそれを表現している作品は聞いたことがない。それゆえ、見た目が絶対の美少女アニメでありながら、欠点をしっかりと画にするというアニメ表現の新時代を築いている。
 ちなみに、第一話のガチレンジャーの回だけはちゃんと個別に批判しておこう。戦隊物のパロディー話なのだが、視聴者はその番組の普段の形態がどうなっているのかを知らないのだから、「その番組自体がおかしいのか」、それとも「今回だけおかしいのか」の判断ができない。つまり、戦隊物のパロディーとして笑わせたいのか、ダメな戦隊物として笑わせたいのかの明確な線引きが存在しないため、観ている方は混乱してしまうのである。例えば、黄色レンジャーがカレーばかり食べているが、普段からそうなのか、今回だけそうなのか、最後まで分からない。これは明確な演出上の失敗である。どう考えても、AパートとBパートで回を分けるべきだっただろう。

・総論


 方向性が固まらず、似たようなネタばかり用いていた原作初期をアニメ化したため、あまり一般ウケしないマニアックな作品に仕上がっている。全体的に練り込み不足であり、もう少し三つ子という特殊な設定を活かした物語作りをすべきだろう。ただし、増量中ではその辺りの問題は幾分解消されているため、今後の展開に期待したい。

星:☆☆☆☆(4個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 23:00 |  ☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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