『ヨスガノソラ』

やり過ぎ。

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ヨスガノソラ - Wikipedia
ヨスガノソラとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2010年。Sphere制作の十八禁美少女ゲーム『ヨスガノソラ』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は高橋丈夫。アニメーション制作はfeel.。田舎町に越してきた双子の兄妹が個性的なヒロイン達と共に波乱に満ちた学園生活を営む恋愛物語。近親相姦を描いた際どいストーリーと地上波アニメ(TOKYO MXで放送)の限界に挑んだ大胆な性描写が話題になった。

・ハーレムアニメ


 美しいぐらい典型的なエロゲー原作のハーレムアニメである。複数の美少女ヒロインが登場するが、そのほとんどは第一話の時点で主人公に対しての好感度がMAX。その内、三人は過去話との絡みですでにフラグが立ち、三人は容姿のみで主人公に惚れている。意味もなく主役がモテまくるハーレム物は世に多数存在するが、ここまで甘い設定は珍しい。その主人公も典型的な「エロゲー主人公」で、恋愛には無関心だが性欲だけは人一倍、優柔不断なくせに自分勝手で、相手が弱っていると見るや上から目線で説教する。現実に存在するとあまり友人にはしたくないタイプなのに、なぜかヒロインにはウケがいい。こんな男を恋人にしている時点で女性としても底が知れているわけだが、エロゲーでそれを指摘するのはご法度である。
 ストーリーは可もなく不可もなく、ヒロインの悩みを解消して心を通じ合わせるといったオーソドックスなエロゲーシナリオだ。ただ、ゲームだと当たり前過ぎて気にならない各種イベントが、アニメ化されると畑が違うせいか、やること成すこと妙に面白い。その角度では下着は見えないだろう、他人の秘密を勝手にバラすなよ、スコップを持って何をする気だよ、何で木よりも低い建物に雷が落ちるんだよ、中学生が小学生を逆レイプかよ等々、ツッコミどころが多過ぎて、恋愛そっちのけで爆笑できるだろう。言ってみれば、一般男性が昼メロドラマを見る感覚に近い。本来の楽しみ方とは違うが、笑えるという意味では良い作品である。

・美術と音楽


 作画は非常に丁寧だ。特に背景美術は一見の価値がある。これと言って画的に優れているというわけではないが、色彩センスが良く、田舎特有の迫り来るような大自然の圧迫感が見事に表現されている。また、光の使い方が抜群に上手い。日向と日陰、屋外と屋内といった光のコントラストが実に的確で、夏の午後の気だるい雰囲気が手に取るように味わえる。それゆえ、下手な実写ドラマ以上に風景の現実感を感じることができるだろう。ただ、劇中の小道具(車や電話等)に関しては、明らかに手を抜いた箇所が複数見られるのはマイナスポイントか。
 音楽はエロゲー原作らしく非常に高品質で粒揃い。ただし、使い方もエロゲー基準で、複数のシーンを跨いで延々とBGMが流れ続ける。しかも、メインテーマ曲のアレンジ違いが多いため、三十分間、常に同じ曲がかかっている印象だ。まるで、クラブミュージックにおける「トランス」である。メロディー自体は綺麗なので、ずっと耳にし続けることで心に響くかもしれないが、映画的には最悪の演出である。逆に言うと、内容に魅力がないから音楽で盛り上げるしかないということだ。こんな物で得た感動は、本当の意味での感動ではない。

・ヨスガにソラってろ


 本作の目玉は双子の兄妹による近親相姦である。その強烈なインパクトにより、本作は妹物の代名詞的な扱いになり、「ヨスガる」という言葉が近親間の恋愛を示す隠語として流行した。ただ、エロ漫画・官能小説の世界では古くから近親相姦は定番のシチュエーションであり、「コンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)」が2004年に近親姦を再緩和して以降、アダルトゲーム業界でも数百の単位で実の母娘姉妹がヒロインとして登場している。また、本作はオムニバス形式のため、妹がメインのシナリオは三話しかない。それも「兄妹で愛し合っていたことが周囲にバレて迫害されたので、海外に逃げました」というだけの単純なストーリーだ。人類共通のタブーを描いた物語としては実にお粗末で、決して歴史に名を残すような作品ではない。それゆえ、他の名作を差し置いて、本作が近親物の代表作になっている今の状況には疑問を覚える。
 もちろん、その理由は、本作が「地上波」の「アニメ」で「兄妹間」の「性行為」をリアルに描いたからに他ならない。先人が周囲への悪影響に配慮して自粛していたお約束を勝手に打ち破ったため、視聴者の印象に残ったというだけの話だ。文字通り「やった者勝ち」の世界である。それが倫理的に正しい行為かどうかは、後世の判断を仰がなければならない。
 なお、アニメ版のストーリーは、短い尺内で収められるように原作を大幅に改変しているため、原作ファンからは批判されている。感動的な物語をただの陳腐な集金目的のエロアニメにしたという理由でだ。確かにエロなどに頼らず、妹シナリオだけを1クールかけてじっくりとアニメ化していたら、真っ当に評価される良作になっていただろう。作画が非常に良いだけにもったいなく感じる。

・ベッドシーン


 さて、本題に入ろう。本作の最大のセールスポイントであり、本作を本作たらしめている要素が大胆な性行為描写である。もっとも、性器が直接画面に映ることはなく、喘ぎ声も極力抑えられているため、感覚的には映画のベッドシーンに近い。放送コード的にはギリギリ枠内だろう。それでも、何の年齢制限もない地上波で流して良い物かどうかは議論する必要がある。
 例えば、昔、『失楽園』というテレビドラマが地上波で放送されたことがある。それは子供も見られるゴールデンタイムに係わらず、古谷一行と川島なお美の演じる不倫カップルの激しいSEXシーンが売りだった。ほとんどポルノ映画かアダルトビデオかというレベルの映像がお茶の間に垂れ流される。その惨状に比べれば、本作は深夜に放送しているだけましということになるだろうか。答えは否だ。なぜなら、本作は「アニメ」だからである。
 『失楽園』はドラマである。そのため、役者が登場人物を「演じている」ことになる。当時の古谷一行は五十三歳、川島なお美は三十六歳と誰もが知っている。しかし、本作の場合は、アニメの中の世界で推定年齢十七歳のキャラクター達が実際に「行っている」ことなのだ。つまり、ドラマというよりは、本人出演の再現ビデオやアダルトビデオに近い。要するに「児童ポルノ」なのである。そのため、制作スタッフは、本作が児童ポルノに該当しないよう最大限の努力を払わなければならないのだが、「登場人物は全員十八歳以上です」という言い訳はアダルトゲームの世界でのみ通用することであって、テレビ地上波という「アウェイ」では通用しない。郷に入れば郷に従うのは当然のことで、どこでも自分ルールで押し通せると思っているのなら、制作スタッフは不誠実であると言うより他にない。

・総論


 ギャグアニメとして見れば爆発的に面白いので、☆9個でも構わないのだが、残念ながらギャグアニメではないので厳しい評価になる。特に、性描写に関しては完全にやり過ぎだ。昨今、この業界が慢性的に抱えている「自分さえ良ければいい」という悪癖が具現化したような作品である。

星:★(-1個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 23:22 |   |   |   |  page top ↑
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