『僕は友達が少ない』

温い! 薄い! 浅い!

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僕は友達が少ない - Wikipedia
僕は友達が少ないとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2011年。平坂読著のライトノベル『僕は友達が少ない』のテレビアニメ化作品。全十二話+OVA二話。監督は斎藤久。アニメーション制作はAIC Build。友達のいない主人公が、同じく友達のいないヒロイン達と共に楽しい時を過ごす学園ハーレムアニメ。2011年版「このライトノベルがすごい!」の投票で二位に選ばれた。また、2013年に実写映画化されることが発表された。

・僕は友達が少ない


 このタイトルを聞いて、皆さんはどのような内容の作品を想像するだろうか。当然、主人公は内気で口下手な対人恐怖症の持ち主だろう。あるいは無駄にプライドが高く、「俺はお前らとは違う」と常々考えている中二病タイプの人間かもしれない。十年に一人の天才だったり、特殊な技能を持っていたりと他人と違うせいでイジメや孤立を味わっている、もしくは過去のトラウマや幼少期の虐待などで社会に対して嫌悪感を抱いているなどの理由で、「友達はいらない」が口癖だが、本当は心の底で友達を欲しいと思っており、その葛藤がギャグやら問題行動やらになって表れる。そんな彼が世間の荒波と戦いながら、自分自身の心の弱さと向き合い、本当の親友を見つけて成長するストーリーだろう。
 一方、ヒロインは「人は一人では生きていけない」が信条の博愛主義者か、はたまた主人公に輪をかけた孤立主義者か。どちらにしろ、彼女達との出会いによって、主人公の人生は変革の時を迎える。共感はいつしか友情へ。友情はいつしか愛情へ。だが、彼女には誰にも打ち明けられない大きな秘密があった。おそらく、人間その物に絶望しかねない大きな楔が。彼女を守るため、皆で力を合わせてそれに立ち向かう主人公達「友達が少ない同盟」……とまぁ、こんな辺りか。
 先に断っておくが、上記のような妄想は、本編には「一切」出て来ないので安心して欲しい。人間の弱さも脆さも怖さも儚さも、これっぽっちも描く気のない軽薄なハーレムアニメである。

・主人公


 まず、物語が始まって最初に驚かされるのは、主人公が「転校生」であることだ。友達がいない原因は、転校初日に犯した失敗とその厳つい見た目が災いして、恐ろしい不良と勘違いされているからである。何だそりゃ!? 人間関係をテーマにした作品で、友達がいない原因を特定させる馬鹿がどこにいるのか。そんな物は、原因を取り除けば済んでしまう話である。だが、人間はそんなに単純ではない。コンプレックスという言葉の正式名称が「感情に彩られた心的複合体」であることからも分かるように、人間の心理は極めて複雑に絡まり合っている。心の病因を一つ取り除けば、全てが良くなるといった簡単な話ではなく、逆に「友達が少ない」などといった蓋然的な悩みであればあるほど、問題解決が難しくなるというのが臨床心理学の常識である。なぜ、ライトノベルが「人間性が浅い」「中身がない」などと批判されているのか、作者は一度でも考えたことがあるのだろうか。
 もっとも、本作の主人公は典型的な「巻き込まれ型やれやれ系」なので、その中身はどうでもいいと言えばどうでもいい。いや、巻き込まれ型どころか、背景のように横で突っ立っているだけである。しかも、作画の拙さゆえに文字通り直立不動なのは笑える。物語的にも、友達関係の構築に真正面から取り組んでいるのはヒロイン二人のため、いてもいなくても大して変わらない。むしろ、最初から登場人物が全員女性の日常系アニメにした方が、何百倍も面白くなったはずだ。
 ちなみに、不良と間違えられている要因の一つは、外国人の母親から受け継いだ金髪のせいなのだが、美少女アニメで髪の色に触れるのはタブーである。それなら、緑髪やピンク髪はどうなるのだ。そもそも、ヒロインの一人は金髪なのだが、彼女も不良なのか。

・友達作り


 そんな主人公が、ある日、一人きりで誰もいない空間と話しているヒロインと出会ったことから物語が始まる。友達がいなくてクラスでも孤立していた彼女は、空想上の「エア友達」と話していたのだと言う。実は、彼女は主人公の幼い頃の親友だったという心の底からどうでもいい裏話があるのだが、それ以外に本作にはこれと言うストーリーはないので、容赦されたし。ただ、最終回ではヒロイン側の視点でこのどうでもいい裏話を描き直すので、見ている方は恥ずかしい。失敗した手品の種明かしをされている気分だ。
 その後、何だかんだで友達作りを主眼としたクラブ「隣人部」を作ることになり、何だかんだで孤独な部員達が集まる。この「何だかんだ」が、本当に適当で何の物語にもなっていないのが凄い。今まで孤独を貫いていた人間が友達作りを決意するということは、過去の人生を全否定して新たな道を歩き始めるということである。それは、ちょっとやそっとの勇気やきっかけでできることではない。それこそ、一人一話以上かけてじっくりと描くべき重大事件だ。にも係わらず、まるで社交的な「リア充」の人間のように容易く部活に参加する。過去の因縁がある発起人はともかく、他の部員の薄っぺらな心理描写は怒りが沸いてくるレベルである。

・隣人部


 要するに『涼宮ハルヒの憂鬱』の「SOS団」の十番煎じなのだが、ハルヒの場合は部活を作る設定的な必要性があったわけだ。だが、本作における存在意義は、十番煎じらしく安物のパック緑茶並みに薄い。隣人部の活動は、全十二話中、四話が水着回で二話がゲーム回である。後はカラオケやらお祭りやらの定型イベントだ。1クールのアニメなのに、途中でネタ切れ感を味わえるという貴重な作品である。その中身に関しても、流行ネタ・パロディネタ・下ネタ・ネットネタと見事なまでのセンスの無さに溢れており、他作品と比べてもギャグのつまらなさは際立っている。もっとも、これでもライトノベル原作アニメの中では、面白い方なのが恐ろしい。
 ただ、問題はそこではない。ハーレムアニメなのだから、話がつまらなくても女の子が可愛ければいいのだ。それより異常なのは、第一話以降、部外の様子が一切描かれないことである。例えば、星奈というキャラクターは、学園理事長の娘で学内の男子を下僕として扱っているそうなのだが、第一話の冒頭を除いて全くその光景が出て来ないので、彼女という人間がさっぱり分からない。そのため、視聴者は限られたヒントを元に高度な脳内補完を延々とやり続ける必要がある。それは他のキャラクターも同様で、クラス内における位置付けが示されるのは初登場時だけ。部員ですらそれだから、彼ら以外の生徒は完全なモブキャラで人間味もない。つまり、主人公達の周りに「社会」が存在しないのである。「友達のいない人々が部活で楽しい時を過ごす」が本作の趣旨なのだから、鬱屈した学校生活をしっかりと描き、それを華やかな部活動と比較して初めて意味を成すのではないか。外へ向かうべき物語なのに、安全な場所に引きこもってどうするというのだ。
 要するに、彼らの人格はただの「設定」なのである。設定資料集だけを渡され、後はそのキャラクターを用いてごっこ遊びをしようとするTRPG的なノリだ。そんな物で人間の奥深い心理を描こうなど片腹痛い。

・友達


 「友達」とは何だろうか? どういった状態を友達と呼ぶのだろうか? ただの友達と親友の違いは? 年齢の差は? 趣味の有無は? 間に金銭が介在すると友達ではないのか? 同士や同僚と友達は違うのか? 心の内を全てさらけ出すのが友情か? では、隠し事があったら友達ではないのか? 男女間で友情は成立するのか? 友情と愛情の違いは?
 本作は友達をメインテーマにしている以上、「友達とは何か?」という問いに対して、どんなに無茶苦茶で独り善がりであろうとも、絶対に一つは結論を出さなければならない。何でもいい。「一緒にいて楽しいのが友達だ」でも「欠点を補い合うのが友達だ」でもいい。しかし、驚くべきことに、本作は最終回で「続編に続く」とばかりにその問題を保留する。ふざけているのか? 描く力もなければ、描く気もない。それなら、こんな小難しいテーマを持ち出すなと言いたい。
 そもそも、なぜ友達がいない人々を主人公に選んだのか。それは、同じように友達がいないであろう読者・視聴者が共感し易いようにするためである。しかし、あまりにもリアルに孤独を描いてしまうと彼らがショックを受けて離れて行ってしまうため、ガラスのハートを傷付けない程度にマイルドに仕上げている。イジメや不登校の問題を爽やかにスルーしているのは見事だ。それが意図的なのか、描く力量がないのかは分からない。しかし、そんな作品が面白くなるわけがないのだ。物語的にもそうだし、ギャグ的にも自虐ネタが中途半端なので絶望的なまでにつまらない。自らのコンプレックスをひた隠しにしているお笑い芸人が面白いか? 心の内面に立ち向かえない人間がクリエイターを名乗るな! 同じように孤独な人間の友情と恋を描いた傑作アニメに『N・H・Kにようこそ!』や『四畳半神話大系』などがあるので、制作者はそれらを視聴して少しは勉強して欲しい。

・総論


 温い! 薄い! 浅い! の三重苦が味わえる極めて低レベルなクソアニメである。こんな作品を世の中に出して、制作者は恥ずかしくないのだろうか。いや、恥ずかしいからペンネームを名乗っているのだろうが。だったら、もっと自らの弱さと正面から向き合って、心を解放して欲しい。

星:★★★★★★★★(-8個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 21:55 |  ★★★★★★★★ |   |   |  page top ↑
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