『ラムネ』

幼馴染み。

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ラムネ (ゲーム) - Wikipedia
ラムネ(ゲーム)とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2005年。ねこねこソフト制作の十八禁美少女ゲーム『ラムネ』のテレビアニメ化作品。全十二話。監督は髙田淳。アニメーション制作はトライネットエンタテインメント、ピクチャーマジック。夏、海沿いの田舎町を舞台にして、男女の幼馴染みの「普通」の日常生活を丹念に描く。『銀色』『みずいろ』などの泣きゲーで名声を博したねこねこソフト初のテレビアニメ作品である。

・幼馴染み


 本作は稀に「幼馴染みシナリオの究極系」と称されることがある。それは、シナリオの出来が良いとか歴史に残る名作だとかいう訳ではなく、幼馴染みという存在を突き詰めていったらこうなるだろうなという物語の終着点を描いているからである。つまり、王道の極地である。ただし、ここで言う「幼馴染み」とは、リアル世界における古い友人のことではなく、あくまで「ギャルゲー世界における幼馴染み」のことを指す。幼い頃から常に一緒の時間を過ごし、知らないことなど何もない。毎朝、互いに起こし合い、一緒に登校する。ヒロインは「犬チック」と呼ばれるドジで甘えん坊な性格で、いつも主人公にベッタリ。主人公はそんなヒロインをからかったり邪険にしたりしつつ、楽しい日々を過ごしている。そういった(あくまでギャルゲー内では)ベタな関係だ。
 ただ、このような状況を設定した場合、常に一つのクエスチョンが付きまとうことになる。それは「ここまで仲が良ければ、普通の恋人と変わりないのではないか?」という至極当然の疑問だ。だが、エロゲーである以上、幼馴染みから恋人へと関係が変化して、最終的に体を重ね合わせなければならない。しかし、両者の差が少なければ少ないほど、どうしてもドラマ性が弱くなる。この難しい命題をクリアするため、ゲーム制作者は苦心の末にあの手この手で物語を構築している。例えば、ヒロインに何らかのアクシデントが発生して、それを解決している間に恋が芽生えるとか。先に肉体関係が発生して、そこからお互いの在り方を見つめ直すとか。中には、最終手段としてヒロインを殺してしまうような作品も存在する。しかし、本作ではそういった派手なアクションをほとんど使わず、真正面からこの問題に取り組むことによって、他とは違う独自性の確立に成功している。

・ラムネ


 主人公とヒロインは家が隣同士の幼馴染み。幼少の頃からベランダを通じて互いの部屋を行き来している。朝は順番に起こし合う、貸し借りを覚えておく、百に達したら相手の言うことを何でも聞く、それは一年ごとにリセットされるなどの様々なルールを取り決めている。お互い、何となく好き合っているのは分かっているが、その感情を口にすることによって今の関係が壊れてしまうのを恐れ、「好き……なんてね」の状態でずっと止まっている。それは、まるでラムネのビー玉を取るには瓶を壊さなくてはならないのと同じように。
 ところが、ある出来事がきっかけでその制止した歯車が動き始める。まず、主人公が一年後輩のサブヒロインに告白されるというイベントが発生する。彼女にとっては、遠い街へ引っ越す前の最後の思い出作り。だが、主人公はそんな彼女の気持ちを理解しつつも、すぐにそれを断ってしまう。通常の幼馴染みシナリオだと、ここから三角関係に発展してドロドロの愛憎劇が始まる物だが、本作ではあり得ない。なぜなら、幼馴染みとの絆はすでに堅く結ばれ、第三者の介入する余地などどこにもないからだ。しかし、彼女の存在と、彼女が去り際に残した「いつまでも大丈夫なんて思っちゃダメですよ」という台詞により、二人は図らずもお互いに向き合わざるを得なくなる。そして、バイク旅行に出かけた先の旅館で、ついに主人公とヒロインは気持ちを通じ合わせる。

・なんてね


 通常の作品だと、そこでめでたくエンディングだ。しかし、本作の場合、それでも二人は「なんてね」の関係のままである。幼馴染みと恋人の違いは肉体関係の有無ではない。長年積み重ねてきた物を壊すには、もっと大きなきっかけが必要だった。
 結果的に台風がそれをもたらすことになる。激しい嵐によって道路が破壊され、主人公がバイク事故を起こしてしまう。事故の後遺症で昏睡状態に陥ってしまう主人公。戻らない意識。学校にも行かず、必死に看病するヒロインの「貸し」だけが溜まっていく。そして、一年後、目を覚まさない主人公の側でヒロインは過去を思い出す。子供の頃に交わした「好き……なんてね」のやり取り。しかし、それは本心ではない。「なんてね」なんかじゃなく「愛している」。ヒロインが初めてそれを口にした時、風鈴の音に誘われるように主人公が目を覚ます。
 先程、派手なアクションはないと書いた。その言葉通り、はっきり言ってバイク事故の件は完全な蛇足である。物語的にはバイク旅行の辺りで綺麗に収束している。ただし、それはあくまで「幼馴染みシナリオ」が終わっただけで、そこから新たに「恋人シナリオ」へ進むためには、今までの物語を全否定しなければならないのだ。言い換えると、彼らにとっての平凡な日常は我々一般人にとっての特別な非日常であり、人並みの幸せを得ようと思ったら、彼らもまた我々と同じ次元まで降りて来なければならない。そのための通過儀礼がバイク事故である。つまり、わざわざ最後に余計な蛇足を付け加えているのは、見た目の派手さでも安易な感動を得るためでもなく、そうしなければならない必然性があるからなのである。

・構成


 上記のストーリーもさることながら、本作はその構成の技術が抜群である。ストーリーをメインの幼馴染みシナリオ一本に絞り、他のヒロインのシナリオはそれぞれ一話分のサブエピソードとして物語内に挿入している。そうすることで、女性は多数登場するのにハーレムアニメにはならないという絶妙の状態を維持している。そして、そのサブエピソードのアレンジの仕方が実に上手い。妹シナリオなどはゲーム本編よりも出来がいいとまで言われる始末である。また、細かい点では、原作だと劇中に二回来る台風を本作では一回にまとめて簡略化している。その代わり、時間差のトリックを上手く使って、話に矛盾が起きないように仕組んでいる。
 何より、本作の優れている点は、本編開始前のプロローグに毎回、子供時代のエピソードを持ってきていることだ。元々、原作は子供パートと現代パートに分かれており、子供時代の出来事が物語に多大な影響を与えるという形式を取っている。それを各話に分散して描くことで、全体的なまとまりの良さを生んでおり、「なんてね」の伏線もちゃんと最終話に出せるようになっている。ゲームとアニメの違いをちゃんと汲んだ極めて優秀な構成である。

・短所


 やはり、エロゲー原作の低予算アニメということで、作画面はかなり厳しい。アップの画はまだ見れるが、引きの画は常時崩壊レベルである。キャラクターデザイン自体も灰汁があり、美術面や背景のCG処理も危うい。もっとも、作画を気にするような人はそもそも本作を見ないだろうから、単純に短所と言ってしまっていいかは分からない。
 また、ラストシーンでかかるはずの歌曲『ラムネ』が、版権の問題か、それとも歌手との契約の問題か、理由は不明だがなぜか削除されている。その代わり、原作のOP曲である『なんてね76's』がエンディングにかかるのだが、歌曲『ラムネ』はその歌詞・メロディー共に本作を象徴する歌なので、これがないのは大幅な減点ポイントである。努力の跡はうかがえるが、やはり何とかして欲しかったのは本音だ。

・総論


 アニメ作品としての質はお世辞にも良いとは言えないが、幼馴染みシナリオの完成度は他の追随を許さないレベルである。後発の作品がどんなに凝った物語を構築しようと、決して本作を超えることはできないだろう。見た目にこだわらないという条件付きだが、幼馴染み属性を自認する人は一度鑑賞してみる価値のある作品である。

星:☆☆☆☆☆☆(6個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 00:09 |  ☆☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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