『極上生徒会』

深夜アニメの完成形。

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極上生徒会 - Wikipedia
極上生徒会とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2005年。オリジナルテレビアニメ作品。全二十六話。監督は岩崎良明。アニメーション制作はJ.C.STAFF。宮神学園極大権限保有最上級生徒会、略して「極上生徒会」の面々が繰り広げる笑いあり涙ありの学園コメディ。ゲーム制作会社のコナミが『ときめきメモリアル』に変わる新たなメディアミックス戦略として企画・製作した。そのため、コナミ作品のパロディーが随所に散見できる。

・脚本アニメ


 純然たる「企画アニメ」でありながら、本作はほぼ脚本家の黒田洋介個人の作品と言っても過言ではない、それぐらい脚本の影響力の大きい作品である。彼の作風の特徴は、良くも悪くも「適当」であることだ。話の統一感よりも場のノリやテンポを重視して、思い付いたアイデアをパッパとストーリーに放り込んでいく。そうすることで、視聴者の予測も付かない方向へ話が流れ、独特の面白さを生む。その適当さが悪い方向に表出したのが、同脚本家が構成を手がけた『機動戦士ガンダム00セカンドシーズン』である。理想主義者の監督が創造した現実感のない世界の中で、適当にキャラクターを動かして遊んでいたら、崩壊したストーリーが取り返しの付かない方向へ転がり落ち、結果、本来訴えたかったことと逆の主張を訴えるという不愉快極まりない作品になってしまっている。
 一方、その適当さが良い方向に表出したのが本作である。声優のインタビューを読む限り、どうやら企画段階ではもっとシンプルでシリアスな百合系萌えアニメだったらしい。だが、いざ蓋を開けてみると、全二十六話の各エピソードは奇想天外という四字熟語が最も相応しいぐらいバラエティーに富んでおり、萌えと笑いとシリアスが高次元で融合した傑作ギャグアニメとなっていた。一見、ベタなシチュエーションに見えて、予想も付かない出来事が予測も付かない方向から次々と飛び出してくるため、視聴者はツッコミの腕を鍛えられる。また、その才能はネーミングセンスにも発揮されており、「美幼女」「パヤパヤ」「宇宙異星人エイリアン」「V機関」といった一度聞いたら忘れられないような単語が次々と飛び出し、作品に彩を添えている。本作ほど「時間を忘れて楽しめる」というアニメ作品はそう多くない。

・極上生徒会


 このように適当極まりない作品でありながら、『機動戦士ガンダム00』と違って最後まで全くぶれずに走り通せたのは、物語の中心となる軸がしっかりしているからだ。一見、チャランポランなドタバタ喜劇のようだが、登場人物は全員、孤児であったり重い使命を背負っていたりと何かしらの暗い背景を抱えている。特に、理事長兼生徒会長は日本屈指の大財閥に身柄を縛られており、卒業後は自由な人生を送ることさえできない。そのため、自分と同じ不幸な境遇にある子供達が、せめて学園内では有意義で「楽しい」学生生活を送れるようにと、自ら設立したのがこの学園である。それを統括する生徒会も、実質的には生徒会長の親衛隊である一方、能力はあるが様々な事情で発揮できない人々がアイデンティティーを確立する場にもなっている。基本的な役割は、昨今のライトノベルアニメでありがちな「○○部」と同じであるが、本作の場合は理不尽な「社会」に対抗する自己防衛の組織であるという点で大きく異なり、子供達の楽園を自分達の手で作り上げようと奮闘するのが趣旨である。そのため、ゆるい喜劇であることの必然性がちゃんと確立されているのが素晴らしい。
 一話完結型のコメディーであるため、大まかなストーリーはないに等しい。ただし、一つのラインが裏で脈々と流れており、所々で表に顔を出すという形式を取っている。それが上記の生徒会長の実家である神宮司家を巡る争いである。第二十四話で実家に連れ戻された生徒会長を助けるため、極上生徒会のメンバーが立ち上がる。それは子供っぽい行為だが、子供にしかできないこと。言わば、神宮司家は「大人の象徴」であり、本作では子供対大人という普遍的なテーマが描かれている。それは身の周りの「社会」という要素が欠落して、内に引きこもる昨今のアニメではほとんど見られないことである。

・キャラクター


 典型的な女性のみの日常系アニメでありながら、生徒会のメンバーだけで十三人、そこにレギュラーと準レギュラーを加えると二十名近い大所帯になる。『魔法先生ネギま!』や『ガールズ&パンツァー』のように大人数であることをウリにした作品を除くと、『スケッチブック ~full color's~』『AKB0048』などと並んで業界トップクラスの数である。ここまでキャラクターが多いとちゃんと描き分けられるか心配になるが、そこは『ときめきメモリアル』で一時代を築いたコナミ、しっかりと個性的に設定付けされている。いや、個性的と書くと語弊があるかもしれない。正確に言うと、彼女達は「組織的」なのだ。生徒会という組織があり、その中に様々な役職があり、彼女達はそれらを日々忠実にこなしている。そういった社会的な役割が、彼女達をより生き生きと見せているのである。例えば、『Angel Beats!』には数々の個性的なメンバーが登場したが、組織として全く機能していなかったため、致命的にキャラが薄いという矛盾が発生していた。個性とはその人の人格だけではなく、社会における立場(=ペルソナ)をも含めての個性なのである。
 そんな個性的なキャラクター群であるが、キャラクターデザイン自体はかなり地味である。昨今の業界を席巻するテンプレ的な萌え絵とは正反対の少年漫画風デザインだ。作画自体もあまり良くないため、美少女アニメと呼ぶには少し抵抗がある。ポジティブに捉えれば、誰でも抵抗なく視聴できるユニバーサルデザインということだが、絵柄だけで商売するキャラクタービジネスを考えると少々厳しい。
 ただ、その画的な地味さを払拭するのがCVである。現在では単独で主役を張れるレベルの中堅声優がずらりと顔を揃え、キャスティングもよく合っているため、非常に高品質になっている。特に、主演の田村ゆかりと生天目仁美を座長にした一種の劇団のような形になっていることで、全体的なまとまりの良さを生んでいる。本作に限らず、声優の個性とキャラクターの個性が見事に一致している作品は高確率で名作である。

・主人公


 と副題を付けたが、本作の主人公は天真爛漫でドジっ子でお節介で寂しがり屋という点ぐらいしか目立たない没個性的なキャラクターである。他のアニメだと天下を取れるかもしれないが、キャラの濃い極上生徒会の中では比較的地味だ。だからと言って、存在感がないというわけではない。いや、逆に存在感があり過ぎて困る。それは主に「プッチャン」に起因するものだ。
 プッチャンとは、彼女が常に手にはめている人形(パペット)のことである。その人形は人の手にはまっている間だけ意志を持ち、自由に行動し、好き勝手にしゃべる(声優は一人二役)。かつて、戦場を駆け抜けた(?)ほどの強さを誇る。何と言えばいいか……もう、この時点で本作は普通のアニメではない。見た目は人形と語り合う痛い子だ。存在自体がギャグと言うか、ツッコミどころしかない。適当にも程があるわけだが、言い換えると本作にはそういった破天荒な存在を許容できる器の深さがあるということだ。ただの萌えアニメだと、しゃべる人形を持ったキャラクターが出てきた時点でイロモノ確定だろう。しかし、本作ではちゃんとギャグとして成立しているだけでなく、物語の根幹にも深く係わっている。それゆえ、彼は『極上生徒会』という作品を象徴する存在となっている。
 ちなみに、プッチャンが動く理由は、亡くなった主人公の兄の霊が神宮司家の超能力によって封じ込められているからだ(なお、時系列に矛盾が生じるため、正しくは伯父なのではないかと推測する)。実は主人公も神宮司家の血を引いており、その血筋特有の超能力が本作の鍵となっているのだが、だからと言って物語的になくてはならないというわけではない。主軸にしてもいい特殊能力を、あくまで設定の補強としてのみ使っているのが上手いところだ。

・その後の展開


 アニメの他には、メディアミックスとして漫画やゲームなどが制作され、いずれも高い評価を受けているが、『ときめきメモリアル』のようなブームとはならなかった。一つはキャラクターデザインの平凡さ、もう一つはギャグアニメに特化し過ぎたことがその原因であろう。良くも悪くも万人ウケを狙ったことが結果的にマーケットを狭めたのである。以後、本作が直接の原因ではないものの、コナミはキャラクタービジネス業を縮小させ、2009年発売のゲーム『ラブプラス』のヒットまで斜陽の時を迎えることになる。
 本作の一年後、エポックメイキングたる『涼宮ハルヒの憂鬱』が登場したことにより、アニメは「萌え」一辺倒に傾いていく。キャラクターデザインはより少女漫画風デフォルメ絵に。話の面白さよりも安心感や空気感を重視。ストーリーは添え物程度で、むしろ、何もない方が好まれる。そして、最大の差異は、本作では意図的に省かれている性的な要素が、他の作品では当たり前のように扱われている点だ。明らかに商売目的の企画アニメである本作より、何十倍も「売れればいい」という商業主義に陥っているのは何と言う皮肉だろうか。

・総論


 この頃は良かった。思わず、そう懐古してしまうほど完成された理想的な作品である。アニメーションが本来持つ「楽しさ」を前面に押し出した作りは、最近では逆に貴重になっている。いつかまた、本作のようなアニメが作られることがあるだろうか? そのためには、まず、プッチャンの存在を視聴者が許容できるところまで先祖返りしなければならないだろう。

星:☆☆☆☆☆☆☆☆(8個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:50 |  ☆☆☆☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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