『機動戦士ガンダム00ファーストシーズン』

意欲は買うがつまらない。

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機動戦士ガンダム00 - Wikipedia
機動戦士ガンダム00とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2007年。人気ロボットアニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの一作。全二十五話。監督は水島精二。アニメーション制作はサンライズ。三つの大国が支配した未来の地球で、「武力による戦争の根絶」を掲げる私設武装組織「ソレスタルビーイング」が、ガンダムを用いて紛争への武力介入を開始する。シリーズ初の西暦設定や現代にも通じる社会問題を描くなど、これまでにないリアルなストーリーが期待された。

・欠点


 ガンダムという題材を使って新しいことをやろうとした意欲は買う。だが、本作における最大にして致命的な欠点は、とにかく「つまらない」ことである。
 例えば、戦闘一つ取っても、設定上、ガンダムは異様に強く敵側のMSは異様に弱いため、常に一方的で反撃の機会すら与えないまま圧勝してしまう。棒立ちの鈍重な敵機を俊敏な味方機が好き放題に切り刻む光景は、一歩間違えればただのスプラッタムービーである。そもそも、自由に空を飛べ、簡単に地域を移動でき、武器は無制限でバリアーまで完備という一昔前のヒーローロボットですらやらなかったような無敵っぷりでは、戦闘シーンが盛り上がるはずがなかろう。しかも、ストーリーの前半は、「紛争が起きる→ガンダムが武力介入する→フルボッコ」という劣化『水戸黄門』のような流れを延々とループさせるだけ。脚本家も扱いに困ったのか、敵側が決死の物量作戦で主人公達を追い詰めようとするなど、どちらが悪役なのかすら分からない。これで話が面白くなると考えた神経が凄い。
 また、つまらない原因はキャラクター側にもある。と言うのも、本作は尺に限りある三十分アニメとは思えないほど、登場人物の人数が多いのである。主人公達とその上層部、三勢力の代表及びパイロット、そして、中立的立場の民間人と主要キャラクターがテンコ盛り。しかも、それらの人物のほとんどが第一話から一斉に舞台上に出揃うため、各々の出番はほんの数秒、一言二言しゃべって退場するというパターンを繰り返し、人間性の深みや話の膨らみ、キャラクター間の横の繋がりなどが一切ない。さすがに、これではまともな物語など構築しようがないだろう。どうも、制作スタッフは様々な人々の思惑が絡み合う「群集劇」をやりたかったようだが、ちょっとお粗末としか言い様がない。

・4クール


 元々、初代ガンダムが人気を博した理由は、ロボットアニメの面白さに加えて、思春期の子供特有の生々しい感情とその成長を描いたストーリーが同世代の男の子の共感を得たからである。だが、本作はそういった要素を完全に排除し、主人公はクールなイケメン四人組になっている。ここで言うクールとは、ただ単に無口というだけではなく、他人に対する興味が薄いという意味である。主人公などはマンションの隣人はまだしも、同じ船のクルーにすら心を開いていない。そんなエゴイスティックな人々が、自らを「ソレスタルビーイング(天上人)」と称して紛争に武力介入し、世界恒久平和を成し遂げようというのだから笑える。一体、彼らは何様のつもりだろうか。そもそも、他人に対して興味を持たない人間が紛争根絶を謳うという点に根本的な疑問を抱く。身近にいる人の幸せを願うからこその世界平和だと思うのだが。
 もう一つ、クール四人組の決定的な問題点がある。それは「生活感」がないことだ。食事や就寝などの生活描写がほとんど出てこない。作戦会議中に冗談一つ言わず、意見の衝突もない。主人公達は完全無欠のスーパーマンであって、裏の顔や心の闇などを全くと言って垣間見せない。はっきり言って、これでは「ゾンビ」である。かっこいいのは見た目だけで、中身は空っぽの操り人形だ。それ以前に、人間味溢れるギャグキャラが味方側に一人もいない(敵側にはいる)というのは、創作物として画期的である。キャラクターに生活感がないのにリアルを自称するとは片腹痛い。

・溢れ出る小者臭


 全二十五話のメインストーリーの大半は、超兵器を携えた主人公側vs紛争を助長する大国側の小競り合いである。一応、それ以外にもサブエピソードは存在するが、あまり本筋には絡んでこない。ストーリーが動くのは物語も終盤に差し掛かった第十六話、「トリニティ」と名乗る謎の部隊が現われてからである。彼らはソレスタルビーイングの教義を先鋭化させ、戦争協力した民間施設に対する無差別攻撃を行うなど、目的のためなら手段を選ばない悪行を繰り返す。思わぬ過剰な後ろ盾に動揺した主人公達は、やがて、彼らと自分達は違うという苦しい言い訳を始め、自らの正当性を主張する。何と言うか、哀れである。
 さらに、第二十話近辺から敵側もガンダムに対抗できるMSを開発し、反転攻勢に出る。すると、今までの戦いは何だったのかと言うほどに、急激に追い詰められる主人公達。結局、彼らはMSの性能に頼っていただけの素人パイロットだったという衝撃の事実が明らかになる。MSの性能差が戦力の決定的な違いじゃないのが、ガンダムだったはずだが……。それにしても、主人公達の立場が危うくなるにつれ、アニメ的にも物語的にも盛り上がるというのが斬新で面白い。これほど主人公が応援されないアニメも珍しいと言うか、どこからどう見ても完全に悪役である。ある意味、実験的と言えなくもないが、彼らは「俺達がガンダムだ」と勝手に自認する痛々しい人達なので笑い話にしかならない。

・ラスト


 そんな滅茶苦茶な物語ではあるが、意外とラストだけは綺麗にまとまっている。一致団結した敵連合部隊によって主人公達は全滅の憂き目に遭い、ソレスタルビーイングは崩壊、その結果、大国同士が手を結んで地球連邦政府が設立される。「悪役」の主人公達が反面教師になることで、世界が一つになるというなかなかよくできたシナリオだ。ガンダムワールドでは当たり前のように登場する地球連邦政府の発足までを描いた物語だと考えれば、なかなか興味深い。ただ、だからと言って話が面白くなるわけでもなく、主人公に感情移入できないという意味において、つまらなさはここに極まる。そもそも、ガンダムでやる必要性は何もない。と言うより、奇をてらわずに最初から大国側にガンダムと主人公を配置すればいいだけの話だと思うのは自分だけだろうか?

・総論


 正直、ガンダムで勧善懲悪物をやろうとすること自体が不快なのだが、一応、制作スタッフなりの哲学と信念を持って作られているようなので、目を瞑ることにする。それでも、ロボットアニメとしてのつまらなさは看過できないレベルであり、よくもスポンサーが放送続行を許したものだ。三十年前からは想像もできない待遇の甘さである。

星:☆☆(2個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:50 |  ☆☆ |   |   |  page top ↑
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