『シゴフミ』

予想外。

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シゴフミ - Wikipedia
シゴフミとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2008年。オリジナルテレビアニメ作品。全十二話+未放送一話。監督は佐藤竜雄。アニメーション制作はJ.C.STAFF。死者から送られる手紙「シゴフミ(死後文)」を巡るヒューマンファンタジードラマ。本作の原作者である湯澤友楼は、アニメ版のプロデューサーと脚本家の名前を組み合わせた物。よって、先行発売されたライトノベル『シゴフミ ~Stories of Last Letter~』は、本作の原作ではなく派生作品という扱いになる。

・第一話&第二話


 ロケット作りに精を出す少年と彼の夢を応援する少女、二人はいつも廃ビルの屋上で会っていた。少年は少女のことが好きだった。いつかロケット打ち上げが成功した暁には、彼女に告白しようと思っていた。そんなある日、少女の親が何者かに殺されるという凄惨な事件が発生する。彼女を心配する少年の元へ、少女の親からシゴフミが届く。親を殺したのは、他でもない実の娘。その衝撃的な手紙の内容が真実かどうか確かめようとした少年は、突然、豹変した少女に殺される。少女が少年に見せていた態度は全て偽りだったのだ。後日、警察の手から逃れようとした少女の元へ、少年からシゴフミが届く。君を愛していた、ロケットを打ち上げる夢を継いで欲しい、と。彼の純粋な想いに心打たれた少女は、彼の代わりにロケットを打ち上げる。だが、些細な誤解により、警察の銃弾が彼女の胸に突き刺さる。
 ロケットを打ち上げるという子供じみた夢に純真な少年は燃えている。一方、少女は夢も希望もない残酷な現実の中に生きていた。自分がなくした物を持っている少年を少女は嫌っている。だが、彼の瞳の中に自分の清らかなイメージを見ていた。こういった男性のロマンチシズムと女性のリアリズムの対比は、ミステリードラマ等でよく目にするシチュエーションだ。自己の女性性と他者から見た女性性。それは清らかな乙女として表現される。だから、人間はどんなに最悪の状況下に置かれても、必ず心の底に善き魂を持っているはずだ。本作はシゴフミという設定を上手く使うことで、そういった人間の理想の姿を巧みに描いている。そのため、深夜アニメという枠を超えて、強く視聴者の胸に響く名エピソードとなっている。

・概説


 死者が生者に送る手紙「シゴフミ」。本作はそれを巡る一話完結型の人間ドラマである。シゴフミを届けるのは、配達人のフミカと相棒のしゃべる杖。冥界からの使者、つまり、死者である彼女達が案内係、もしくは狂言回し役となって物語を紡ぎ出す。ドラマのパターンとしては、『笑ゥせぇるすまん』や『地獄少女』といった連作オカルトファンタジーの形式に近い。人の美しさよりも醜さに重点を置いて、視聴者の予想を裏切るような皮肉に満ちたストーリーを構築する。人間とはエゴの生き物であると肯定しつつ、それに傾倒する者は必ずしっぺ返しを食うという教訓も与える。訴えたいのは、泥の中に咲く蓮のような人間の素晴らしさだ。
 このように設定自体は単純だが、その分、制作者の力量次第で重い話から軽い話まで如何様にでもストーリーを作ることができるだろう。それゆえ、作品のハードルはずば抜けて高くなる。相当の自信がなければ、こういった素材に手を出すことすら躊躇われるはずだ。だが、前述の第一話・第二話はそのハードルを確実に越えている。これはどれほどの名作になるだろうかと視聴者の期待が膨らむ。

・劣化


 しかし、第三話以降、急激に物語のクォリティが低下する。友人の自殺を描いた第三話、母親との確執を描いた第四話、いじめ問題を描いた第六話、青年の夢と苦悩を描いた第十話と、いずれも人間ドラマとしては並程度、上がりまくったハードルを越えられる物ではない。何より、シゴフミである必要性があまり感じられないという根本的な問題がある。生前に残した遺言状程度で何とかなる話だ。結局、シゴフミという設定が生きるのは、遺言を残せない状況、つまり、殺人事件の被害者のダイイングメッセージぐらいしかないということであろう。この時点で、企画倒れ臭がどこからともなく漂ってくる。
 なお、シゴフミを巡る一話完結型の連作ストーリーは、第一話・第二話を含めてその六つだけである。では、残りの六話で何を描いているかと言うと、何と配達人自身の物語である(内一話は同僚の配達人の物語)。第三話の時点で、登場人物の一人が配達人の正体が中学時代の同級生であることを見抜き、以後、配達人の過去を探すストーリーがメインになる。いやはや、事前にこの展開を予想できた人は一体どれだけいるだろうか。狂言回し役は、物語の外にいるからこそ意味を成すのである。もちろん、『キノの旅』にも『地獄少女』にも狂言回し自身を描いたエピソードはあったが、それらは外伝的な扱いで設定を補完するためにほんの一・二話ある程度だ。彼らが話のメインになることなどあり得ない。例えば、スピンオフ作品なら許されるかもしれないが、そうでなければ、ただ単に途中で路線変更したようにしか見えないだろう。第一話・第二話の出来がいいだけに尚更そう感じる。

・メインストーリー


 配達人の父親は著名な詩人。彼は娘が幼少の頃より、芸術と称して恒常的な虐待を行っていた。それが原因で、彼女は解離性同一性障害(二重人格)を発症する。そして、三年前、もう一人の人格の手により、銃で父親に怪我を負わせてしまう。その結果、罪悪感から彼女は昏睡状態になり、もう一つの人格だけが分離してシゴフミの配達人になる。
 本作のメインストーリーは、その二つの人格が統合されるべきか否かという物語である。意識を取り戻した元の人格は、自分の足で歩いていくために父親の虐待を告訴する。一方、もう一つの人格は、口では人格の統合を謳いながら、本心はこのままでいたいと思っている。最終的に両者は和解し、それぞれの道を歩むことになるのだが、正直、大して面白い話ではない。そもそも、長い眠りから目覚めたばかりで走れるわけがないし、中学を卒業していないのに高校に編入できるわけがないし、彼女が告訴という制度を知っているとは考え難いなどといった低レベルな設定ミスも存在する。また、肝心のシゴフミもあまり物語的に意味を持たない。はっきり言って、六話分も費やすような内容ではなく、余計な要素を省けば、精々、ラスト二話ぐらいで簡単にまとまる話だろう。一言で言うなら「水増し」だ。それゆえ、このメインストーリーの存在自体が『シゴフミ』という作品全体の質を下げていることになる。

・総論


 予想外としか言い様のない作品。竜頭蛇尾というレベルではない。一体、現場では何が起こったのか。あれ? そう言えば、以前、同じ脚本家が手がけたロボットアニメに、似たような尻すぼみをやらかした作品が複数あったような。要はそういうことである。

星:☆☆☆(3個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 19:44 |  ☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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