『撲殺天使ドクロちゃん』『撲殺天使ドクロちゃん2』

愛なら仕方ないな。

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撲殺天使ドクロちゃん - Wikipedia
撲殺天使ドクロちゃんとは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2005年、2007年。おかゆまさき著のライトノベル『撲殺天使ドクロちゃん』のOVA化作品。全八話+全四話。監督は水島努。アニメーション制作はハルフィルムメーカー。ある日突然、未来から押しかけてきた天使のヒロインに、主人公が殺されたり生き返されたりするエログロ系ラブコメ。本編を知らない人でも、「でも、それってボクの愛なの」という歌詞で御馴染みのOP曲は知っているだろう。また、彼女が指を指して笑うポーズは、代表的なプギャーAAとして知られている。

・エログロ


 日本では珍しい「エログロナンセンス」がテーマのアニメである。ハリウッドのB級ホラー映画などでよく見られるように、とにかく低俗であること、下品であることにこだわって制作されている。具体的に言うと、ヒロインのドクロちゃんが撲殺バット「エスカリボルグ」を振り回す度、主人公がゴミ屑のように容易く絶命する。その際、赤い血が噴水のように噴き出し、脳や内臓が周囲に飛び散り、画面中を覆い尽くす。加え、生理現象や性風俗に直結する下ネタも多用するため、内容的には極めてお下劣である。画的にも、元の顔が判別できないぐらい壊れたデフォルメ画を頻繁に用い、それはどんなに可愛い女の子であっても容赦はしない。また、人間を動物に変化させて、そのまま放置するといった意図的な非道徳ネタも多く、社会の良識に挑戦している。一方、エロ要素に関しては、セミヌードや性行為の隠喩程度だから現代の深夜アニメの基準で見ると甘い方であるが、グロと調和することで嫌な意味の生々しさがある。
 このように、地上波で放送したら一発で社会問題化するような作品だが、本作は購入者が限定されるOVAなので倫理的な問題は少ない。後は制作者のモラルの問題だけだ。個人的な感想を言うと、他に幾らでもやりようはあるだろうとは思うのだが……。ちなみに、一度、地方局でテレビ放送されたことがあるが、その時は全面的に映像に修正が入っていて訳が分からない状態だったそうだ。まず、これを放送しようと思った勇気が凄い。

・グロテスク


 それにしても、エロはともかく、はたしてグロが本当に現代のアニメファンに必要とされているのだろうかという素朴な疑問を覚える。ダメな人は本当にダメだろう。血を見るだけで生理的な嫌悪感を覚えるという人は多く、そういった人々には明らかにマイナスアピールとなるはずだ。実際、本作は内容的に血や内臓が飛び出る必要はあまりなく、ただ「手加減を知らないヒロインが嫉妬や羞恥心で暴力を振るう」というギャグの延長線上として、ビジュアル的に過激に描いているに過ぎない。だが、本作はそれなりに人気を博したシリーズなので、映画ファンの中にスプラッター映画好きが一定数いるように、アニメファンの中にもグロを好む層が一定の割合で存在するということだろうか。
 そもそも、グロ要素は本当に本作のセールスポイントなのだろうか。ただ単に、ドクロちゃんの可愛さ目当てで購入した人が大半なのではないだろうか。こういった場合、手始めに本作からグロ要素を削除した物を想像してみるといいだろう。確かに、消費者側から見ると買い易い。しかし、そうなると作品的にこれと言う秀でた点は少なく、毎年掃いて捨てるほど現われる有象無象の萌えアニメの一つに埋没してしまう。特に本作はOVAである。話題にならなければ商売にならない。それを防ぐためには、他に類を見ない独自性・マニアックさが必要なのである。リスクを背負って万人に売るのではなく、ターゲットを絞りに絞って確実に制作費をペイする。そのためのグロ要素である。つまり、むしろ「買い難くないといけない」のだ。なるほど、まさにこの構造こそが邪道魔法少女である。

・設定


 こんな無茶苦茶な作品ではあるが、意外と設定はよくできていると言うか、普通と言うか、少なくとも破綻はしていない。主人公は今でこそ普通の中学生だが、将来、ロリコンを発症して女性の成長を子供のままで止めてしまう薬を発明する。その薬は、副作用に不老不死の効果があったせいで天界の逆鱗に触れ、主人公の抹殺指令が下される。そんな主人公を守るため、そして、彼がロリコンにならないように教育するため、未来からやってきたのが撲殺天使ドクロちゃんである。つまり、ドクロちゃんは理不尽な天界の裏切り者であり、「人は育ち方次第で善くも悪くもなる」というヒューマニズム的な観点で動いているという無駄に深いテーマが裏に流れている。やっていることは愛とは程遠い撲殺であるが、OP曲で「でも、それってボクの愛なの」と歌っている通り、意外と「愛」に溢れた作品なのが面白い。
 さらに面白いのは、ドクロちゃんが見た目は子供っぽいのに胸だけは大きいといういわゆる「ロリ巨乳」のスタイルであることだ。例の有名なコピペを持ち出さずとも、ロリ巨乳はロリ属性ではなく、巨乳属性にカテゴライズされる。もし、本作が普通の恋愛ドラマならば、ドクロちゃんをアダルトな大人キャラにして設定との整合性を持たせようとするだろう。逆に、本作がSFならば、ドクロちゃんをロリキャラにしてドクロちゃんのせいで主人公がロリコンなったというタイムパラドクスな物語にするだろう。しかし、本作はそういった単純なストーリーではなく、その中間にすることで、悪く言えば曖昧な、良く言えば萌えアニメらしい何でもありなドタバタ感を作り出している。おそらく偶然だろうが、これは「萌え」というフォーマットを上手く活用した面白い設定である。

・邪道魔法少女


 本作は『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』『大魔法峠』に並ぶ「邪道魔法少女三部作」の二作目という位置付けになっている。ただし、他の二作品に比べ、本作は断トツで邪道魔法少女的な成分が少ない作品だ。そもそも、「魔法少女」とは言い難いアニメである。ヒロインが変身することもなければ、魔法もほとんど使わない。しいて言えば、撲殺した主人公を蘇生させる時の呪文「ピピルピルピルピピルピー」とそのポーズがやや魔法少女っぽいというだけだ。(※一応、OPムービーでは天界の制服? っぽいコスチュームに身を包んでいる)
 それよりも本作の属すべきジャンルは落ち物ハーレムラブコメである。ある日突然、主人公の元へ現われ、ひょんなことから同棲することになるヒロイン。超自然的な能力を使うヒロインによって、平凡な日常が一転して波乱に満ちた物へ変化する。嫉妬する幼馴染み。そういった『うる星やつら』から綿々と受け継がれる至極真っ当な落ち物アニメである(ただ、本作では主人公とヒロインの出会いのシーンは描かれない)。邪道どころかむしろ正統だ。アニメのノリ自体も、天使と悪魔の脳内会議や主人公のテンポの速いツッコミなど八十年代のギャグアニメ調なので、見ていて懐かしい気分になるだろう。もっとも、そんな良い意味での古臭さも、話数が進むにつれてライトノベル原作らしいエロパロ中心に移行するのが残念である。

・総論


 最初から視聴者ターゲットを極端に限定し、彼らが楽しめることだけを念頭に置いて制作されている。そのため、本作に対して外野がとやかく言うのは筋違いである。たとえ、興味のない人からすると見るに耐えないエログロでも、愛なら仕方ない。だって、愛なのだから。

星:☆☆(2個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
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