『WORKING!!』

惜しい!!

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WORKING!! - Wikipedia
WORKING!!とは - ニコニコ大百科

・はじめに


 2010年。高津カリノ著の四コマ漫画『WORKING!!』のテレビアニメ化作品。全十三話。監督は平池芳正。アニメーション制作はA-1 Pictures。北海道某所のファミリーレストランを舞台に、アルバイト店員達の大騒ぎな日常を描いた恋愛コメディー。OPムービーは『あずまんが大王 THE ANIMATION』と同じ演出家が手がけているため、作風がよく似ている。

・概要


 天下のアニプレックス製作。キャラクターも可愛いし、雰囲気も明るく楽しい。人気声優をずらりと揃え、男女区別なく楽しめる。何より、メディアのセールスも好調で第二期も制作された。と、冷静に考えると申し分ない結果を残しているにも係わらず、なぜか微妙な立ち位置にいる不思議なアニメである。覇権アニメというわけでもなく(同期に『Angel Beats!』と『けいおん!!』がいる)、良くも悪くもネット上で話題を振り撒いたということもなく、良いアニメだとは誰もが認めつつ、これをマイベストに挙げる者は少ない。そんな記録には残るが、記憶には残り難い「永遠の三番手」な作品である。
 理由は簡単だ。なぜなら、本作は萌えアニメのように見えて、萌えアニメじゃないからである。女性漫画家による四コマ漫画原作の日常系アニメと聞けば、『けいおん!』や『ひだまりスケッチ』のような百合系作品を想像するが、本作は普通に男性が主人公で男女の比率もあまり変わりない。登場人物は高校生が中心だが、舞台はファミリーレストランというバイト先の「職場」。安全な場所でグデグデとゆるい日常を過ごすのではなく、ちゃんとした内容と中身のあるラブコメ。そして、何より性的な要素が皆無で、水着回すらない。つまり、緩やかな見た目と違って、限りなく一般アニメに近い構造の作品だということだ(余談だが、自分はずっと女性向けアニメだと勘違いしていた)。残念ながら、今のアニメ業界で話題作に「選ばれる」のは、萌えオタクに媚を売った商業主義アニメだけなので、本作のように中途半端に万人向けを狙った作品は、内容の如何に係わりなく不当に地味な扱いを受ける物だ。良い物が流行るのではなく、流行った物が良い物なのがアニメ業界。もちろん、結果を残したのだから、何も気にすることなく突き進めばいいのだが、なかなかそうもいかないのが哀しいところである。

・キャラクター


 本作は、基本的にギャグアニメであるため、個性豊かなキャラクターが数多く揃っている。しかも、そこら辺の三流アニメと本作との最大の違いは、テンプレ的な個性を適当に詰め込んだのではなく、ちゃんと各々の役割が繋がっていることである。
 主人公の小鳥遊宗太は家庭的な働き者で、ギャグアニメの主役にしては珍しいぐらいの常識人。だが、小さくて可愛い物が好きという特殊な性癖を持っており、そのため、メインヒロインの種島ぽぷらは、小学生にしか見えないロリ巨乳な一つ上の先輩である。そこに、食べてばかりで働かない元ヤンの店長、彼女のことが大好きな天然ボケの轟八千代、見た目は悪人だが実は善人&見た目は善人だが実は悪人の男性調理スタッフコンビ、中二病全開の爆弾家出娘の山田、そして、極度の男性恐怖症で男性が近付くと思わず殴ってしまう伊波まひる等が加わる。このように、それぞれの性格が密接にリンクしていることで、集団としての一体感が増し、キャラクターの何気ない会話を聞いているだけでリアルな臨場感を味わえる。
 さらに特筆すべきは、彼らがそれらの性格を持つに至った理由を回想シーンで明記していることである。具体的に言うと、主人公が小さい物好きになったのは、姉妹が皆、長身で扱い難い面々だから。伊波まひるが男性恐怖症になったのは、父親の教育が歪んでいたから。轟八千代が帯刀しているのは、小さい頃いじめられっ子だったから。キャラクターの性格が「設定」でしかない昨今のアニメで、こういった人格形成の背景をしっかりと描いているのは珍しい。
 ただ、これらの個性的なメンバーも、中の一人である伊波まひるのキャラが濃過ぎるせいで、完全に彼女に食われてしまっているのが難点か。男性を見ると見境なく殴ってしまうという特徴は、ビジュアル的にも社会的にも問題があり過ぎる。つまり、彼女の深刻過ぎる悩みに比べたら、背が低いなどといった悩みは取るに足らないということだ。そのため、彼女は本作の象徴のような位置付けになっており、彼女のキャラクターを受け入れられるかどうかで評価が大きく分かれてしまうという欠点を抱えている。

・恋愛


 繰り返しになるが、本作は女性キャラクター中心の日常系萌えアニメではなく、複数の男女が登場する一般ギャグアニメである。それゆえ、年頃の男女が同一空間上にいることで当然発生するであろう「恋愛要素」が、ストーリーに付け加えられている。
 その中心になるのが、上記の伊波まひるである。男性恐怖症の彼女は、特に主人公に対して拒絶的な反応を示していた。しかし、生来の世話焼きである主人公は、そんな彼女の病気を治そうと奮闘する。彼の優しさに次第に惹かれて行くまひる。その感情は、第九話の父親を巡る騒動をきっかけに恋心へと変わる。はたして、彼女は無事に男性恐怖症を克服して、彼に告白できるだろうか……というのが、本作のメインストーリーである。ラブコメのお約束に従って、主人公は彼女の気持ちに全く気付かないため、非常にヤキモキする展開になっている。もっとも、すぐに暴力を振るってくる女性の気持ちに気付けという方が無茶なので、この状況には説得力がある。最終的に、彼女の男性恐怖症は少し改善される兆しを見せ始めたものの、主人公に想いを打ち明けられないまま「続編へ続く」という形で終わりを迎える。
 ちなみに、このストーリーで最も割りを食っているのが、メインヒロインであるはずの種島ぽぷらである。主人公と良い仲にならない(ペット的に可愛がられているが)というだけで、出番が大幅に削られたばかりか、メインの座も完全に伊波まひるに奪われつつある。その可愛らしい容姿ゆえに、販促ビジュアル等では彼女が中央に来ることが多いため、本編中での不遇を思うと涙なしでは見られない。嗚呼、その屈託のない笑顔がすでに哀しい。

・改善案


 このように、本作は非常によくできた作品である。何の中身もない日常系アニメとは比べ物にならない高い完成度を誇っているのだが、その一方で、ここを改善すればもっと良くなったのにという不満点が大量にあるのも事実だ。特に、同監督は『スケッチブック ~full color's~』という四コマ漫画原作でありながらコンセプトの統一感に秀でた良作を生み出しているのである。そのため、それと比べると実に「惜しい」作品に仕上がっている。
 まず、一番の問題点は、作品の方向性が分かり難いということである。第一話の時点では、ここからどう話が展開するかが全く読めず、「ファミレスを舞台にしたドタバタ喜劇?」程度しか分からない。本作のメインストーリーが「伊波まひるの成長物語を中心にしたラブコメ」であると分かるのは、物語も佳境に入った第九話以降である。遅い、遅過ぎる。それなら、彼女をメインヒロインにして第一話から本筋に絡めて行くべきだろうし、彼女の心理をもっと詳細に描く必要もあるだろう。四コマ漫画原作ゆえにストーリーを構築し難いのは分かるが、だからと言って、それは何の言い訳にもならない。
 続いての問題点はテーマの不明確さだ。タイトルは『WORKING!!』である。すると、作品テーマは「働くこと」になるかと思いきや、それはあまり劇中では重視されない。バイト店員は皆、淡々と仕事をこなしており、職業上のつらさや喜びなどをほとんど垣間見せない。そもそも、ファミリーレストランでなければならない必要性もあまり感じられない。もう少し、ファミレスバイトの専門的な知識やエピソードなどを脚本の節々に加えて行ければ良かったのだが。
 最後にビジュアル面である。本作のロゴマークは「warning」の警告表示を真似た物が使われており、そのビビットな印象から人気を博している。それなら、そのイメージを本編中でも用いれば良かったのだ。つまり、白・黒・黄色の三色をベースに赤を差し色として使って色彩イメージを統一させれば、もっと芸術性が高まっただろう。他にも棒立ち作画や低レベルなBGM、合っていないキャスティングなども含めて、全体的なアニメーションの質という点においては大いに不満が残る。

・総論


 一言で言うと、もう少しな作品。非常に丁寧に作られており、男女分け隔てなく楽しめる良作だが、結局のところは「ファミレスを舞台にしたラブコメ」でしかないため、独創性という点では大きく劣る。真の名作アニメになるためには、何か一つ、突き抜けた物が欲しかった。

星:☆☆☆☆☆☆(6個)
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テーマ: アニメレビュー -  ジャンル: アニメ・コミック
by animentary  at 22:14 |  ☆☆☆☆☆☆ |   |   |  page top ↑
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